勝って修正勝って反省 13節 アトレティコvsマジョルカ(A) 2024.11.10
パリでの勝利で良い気分。しかしチームは今度はマジョルカ島へ。パリよりは近いのでしょうか。
この試合は現状ラリーガで一番失点の少ない2チームの対戦。アトレティコが最小の7失点。マジョルカは9失点。マジョルカはここまで5勝3分4敗で8位と好調。
水曜にパリでCLを戦ったアトレティコは中3日。マジョルカは12節を金曜にやっているので中8日になる。ちなみにマジョルカは先季の国王杯準優勝でスーペルコパに出場するので、国王杯一回戦がシード。コンディション抜群である。ここを終えれば代表ウィークなのでアトレティコとしては無事に駆け抜けたいところ。
前回対戦。
アウェーで1-0の勝利。シーズン終盤の5-4-1期。
●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / ヒメネス / ラングレ / ヘイニウド
ジュリアーノ / バリオス / コケ / リケルメ
グリーズマン / アルバレス
ラングレとバリオスは復帰から3試合連続のスタメン。ジュリアーノは4試合連続となる。左はリケルメ。国王杯のヴィック戦を除くと10節レガネス戦以来の先発となった。グリーズマン&アルバレスの組み合わせも3試合連続。
・マジョルカ
グレイフ
マフェオ / ヴァリエント / ライージョ / モヒカ
サム・コスタ / モルラネス / ダルデル / ロベルト・ナバーロ
ラリン / ムリキ
前節欠場したヴァリエントとモヒカがスタメン。
退場して出場停止だったサム・コスタが復帰。
ラリンとムリキを同時起用。
余談だがGKグレイフは20-21シーズンまでCLで対戦するスロヴァン・ブラチスラヴァでめちゃくちゃレギュラーだった。
●前半
最初に認識しておきたいのはマジョルカの4-4-2守備が相当良かった事。今季失点が少ないと↑にも書いたが、"失点少ないな"とは思っても"守備がいいな"の印象はあまりなかったので認識を改めた。非常に良かった。そこがこの試合のスタート地点。
アトレティコの保持配置はマジョルカをリスペクトしつつ様子見の色合いが強い。両SBはなるべく最終ラインの保持に加わった。発想として「どうせボール奪ったら2トップ目掛けて蹴ってくるんでしょ」というのは当然アトレティコ側の頭にあり、そうなるとネガトラの考え方は中央に人がいるかどうかよりも2トップにポストプレーをキメられた先の抑え方という事になる。ちなみにこの日のマジョルカのスタメンは事前予想がだいぶ難しかったと思うのだがこの準備はどれほど確定していたのだろうか。
サイド突破は基本的に両SHに右はバリオス、左はグリーズマンが近づいてもう一人加勢するとしたらSBではなくコケが参加した。SBの出番は敵陣深くまで押し込んでからに限定。特にバリオスはアルバレスと並ぶくらいのスタートポジションからポケット目掛けて突っ走っていた。マジョルカはCHコンビ(モルラネスとサム・コスタ)が低い位置で守備する事で外側へ追い出す事に成功。
ではアトレティコは大外の質で打開できると良いですね、という所でジュリアーノとリケルメには単独のドリブル突破ができなかった。それをさせないためのマフェオでありモヒカなのだから仕方ないがリケルメはマフェオ相手にもう少し優位に立てないものか。むしろサポート無しの1vs1を選べるなら得意分野ではないのか。それができないならサイドで何ができるのか。
このマジョルカ目線で"SBが相手SHを抑えられる"環境は前半の展開を決めた。その恩恵を受けたロベルト・ナバーロとダルデルの2人は守備時にアトレティコのSB(モリーナ&ヘイニウド)へプレッシャーをかける事ができる上にポジトラで中央付近で浮く事でコケがいない場所にポジションすれば前向きにボールを受ける事ができた。そんな感じの中央突破から10分にナバーロがラングレにイエローカードを出させている。ラングレは前半の早い時間に一発ぶちかますのが癖になっているが毎回カードを貰ってるので控えた方が良い。これでラリーガ4試合で4枚。自分よりでかい相手とのロングボール対応が基本になりそうな試合でこの時間にカードを貰うのはかなり不利になる。
マジョルカはボール保持局面でもロベルト・ナバーロとダルデルが浮いて動く。アトレティコは左SHリケルメがマフェオの対応で最終ラインに落ちる。ナバーロがそれに反応してハーフスペースをふらつく。
おそらくアトレティコはマジョルカの長身2トップに対して3枚(ヒメネス、ラングレ、ヘイニウド)が対応するのが約束になっている。そのためライン間のナバーロをヘイニウドが見張る事もできない状況になっていた。さらにマジョルカはモルラネスの右落ちがビルドアップの基本形で、流石にアトレティコは左ハーフスペースをどうにかしないと失点に繋がりそうな雰囲気になり、バリオスが左に移動、グリーズマンと位置を変えて守備対応を行った。
レガネス戦のやられ方が頭をチラつく配置だったので即座に対応した事は満足度が高い。バリオスの守備タスクは重くなったがそれでもリケルメと協力して数回敵陣侵入を狙っていた。
ついでにマジョルカはダルデルも自分のポジションを捨てて右まで流れてくるのでこのエリアの守備はだいぶ忙しかった。ダルデルはジュリアーノの対応エリアに一度立って注意を引いてから別の位置へ逃げていくのが非常に上手く、誰がどこまでついていくのかを常に問うてくるややこしいポジショニングを取った。パリSG戦を見てよく準備されていた部分。
マフェオがフリーで横パスを受けてアーリークロス。リケルメが早めに最終ラインに入るのは約束事なのか不明だが、もっとマフェオの立ち位置に影響された方が上手く守れた気はする。パリSG戦のジュリアーノのように。
ヘイニウドがハーフスペースに対応できずダルデルからフリーで配球されてオブラクの出番が来た。先季のインテル戦の警戒範囲に似てるね。
マジョルカは無理のないカウンター対応で問題なく守って前半を無失点。アトレティコは変化が必要な45分であった。
●前半終了
ビルドアップが上手くいかない、侵入ルートがない、という悩みからは卒業が近い印象だがその先で上手く守られた前半。繰り返すがマジョルカの設定が良かった。アラサテの準備力ですね。早めに5バックになる守備対応など疑問はいくつかあったが誤差の範囲でしょう。アトレティコは改善ポイントを定めて後半に向かいたい。
マジョルカは上手くいっている実感はありつつ、アトレティコの選手交代を待っているとジリ貧になりそうなのでもう少しボールを持ちたい展開となった。
●後半
スタートポジションをバリオス右、グリーズマン左に戻して後半。開始から一番の変化点は前半暇そうにしていたアルバレスがかなり中盤に降りてきて構築に参加した事。ベンチのオーダーというより敵陣に押し込んでSBが攻撃に参加してくれないと自分にシュートチャンスが来ないというアルバレスの都合な気がする。これで実際にアトレティコは敵陣でプレーする時間が大幅に増えた。アルバレスはこういうアンテナが高いのかもしれない。
これで押し込んで攻撃、ボールロストして全力帰陣、というしんどい時間帯に突入したがアトレティコvsマジョルカである以上はこの方が健全な気がする。ハラハラしていたのは前半にカードを貰っていたラングレでしょう。ムリキもでかくて強いがラリンのポストプレーが上手すぎてどうにも止められずヒメネス含めて苦戦していた。57分には押してもびくともしないラリンをラングレが抱え込んで退場しそうになり、速攻でヴィツェルが準備。
その交代の直前、CKからムリキの力のないヘディングをキャッチしたオブラクが全速力で駆け上がっているジュリアーノを見つけて思わずパントキック。これが歴代一番良いキックになりジュリアーノは殿のマフェオを振り切ってアルバレスへラストパス。なんだかとんでもないゴールが生まれた。
何故か先制したアトレティコはここで4枚交代。2トップを入れ替えてジュリアーノもここで仕事を終えた。
心配だった左ハーフスペースをデ・パウルが埋める形で対応。
これで5-3-2に形を変えたが、先制する前からこの4人が準備していてどうやって点を取りに行く形に変化しようとしていたのか気になる所。両サイドからスルロットに放り込むくらいしか思い浮かばないメンツだが、それでマジョルカから点が取れる気はしない。
交代直後に前がかりになったマジョルカをひっくり返すロングカウンターが決まったがリケルメがシュートを真正面に飛ばした。アトレティコらしすぎる。シメオネが超キレてた。
そこからは約30分に及ぶ長い締め括り。85分には微妙なハイボールでアブドンに抜け出されたがパリSG戦に続きオブラクのパラドンでチームを救った。最後はギャラガーを投入して決死のクローズに成功した。苦労したがアトレティコが勝ち点3を掴んでいる。
●試合結果
どっちが苦労したかと言われればパリSG戦よりマジョルカ戦の方が苦戦したがなんとか掴んだ3ポイント。枠内シュート2本と押さえ込まれたが本当にジュリアーノ様様である。
効果的に攻撃できなかった、あまり上手に守れなかった、それでもこの日はどうしても"それでも勝てた"を大事にしたい気分だ。
だってまたジュリアーノがチームを救った。「もうどうしようもない、4人替えよう」という状況で。
不恰好なクローズだったがPA内への侵入は防いだ。ミスで抜け出されればオブラクが仕事をした。こういう勝利の方が価値が高いと思うのである。
良かった点は前半にバリオスが左へ動いてハーフスペースの打開を止めようとした所。もうレガネス戦のような事は起きないなと安心した。こういうのが前進でしょう。2点も3点も取る事よりずっと大切だ。
マジョルカは正しく守り、2トップの優位性を活かして攻撃に転じた。ダルデルは相変わらず上手い。マジョルカ移籍後はやや苦しんでいる印象だが技術は錆び付かない。残留はほぼ安全圏だが得点パターンを突き詰めていきたい。
11/10
エスタディ・デ・ソン・モイシュ
マジョルカ 0-1 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’61 アルバレス
●ピックアップ選手
ジュリアーノ
また得点に絡んだ。長い距離のランニングでとんでもないスピードを出せる。あそこで迷いなくアルバレスにボールを渡せるのが良い所だよなあ。
アルバレス
後半の展開を変えるボール関与が非常に良かった。ようやく使い方がまとまってきた印象の試合。先制点は良く走っていた。
リケルメ
単独で優位性を作れずカウンター機会もふいにした。迷いが感じられ完全に沼にハマった。
オブラク
オブラクに正確なパントキックを期待した事はあまりないが見事に一発で得点に繋げた。最後まで集中して仕事を果たした。
●myQA
13-1 約束事と思われる物メモ
ヘイニウドがいる日は後ろ5枚になりがちだが、これは5枚になる事が目的なのか、はたまた。という事でメモ。
この日はマジョルカの長身2トップにCB(ヒメネス&ラングレ)だけで対応するのはやめましょうという約束だったように見えた。そのためにはヘイニウドの外側でマフェオの対応をするリケルメが必要だった。という文脈。この仕事をやるならリーノよりリケルメだとシメオネが思っている説もある。
この日は右サイド(マジョルカの左サイド)の大外を取るのがSBのモヒカだった事で左右差に苦労した感もある。モリーナが大外に連れていかれすぎるのでジュリアーノがある程度の高さまでモヒカをウォッチして受け渡すという。この辺の構成で全体的な配置が低くなっていった。
この日はネガトラの管理も4バック全員が残っていたような立ち方だったがこれでラリンがサイドに流れてボールを引き出すような形を警戒できたのは良かった点。ただ、もう一枚攻撃に割きたかったのでここも微調整の余地あり。とはいえポジティブなテーマだ。