内田篤人という選手

おれは内田篤人という選手が大好きだ。
人目を憚らず"日本人史上最高のサッカー選手だ"と言い続けている。
その理由を、いくつか挙げる。

まずは目に見える実績。名門清水東から、名門鹿島へ入団して高卒ルーキーで開幕スタメン。翌年には名良橋から背番号2を引き継いだ。デビューからの4シーズンでJ1で115試合に出場しJリーグを3連覇、5シーズン目の夏、22歳の若さでシャルケへ移籍。フンテラール、ファルファン、ドラクスラー、ラウール、ノイアー、ヘヴェデスら錚々たるメンバーの中レギュラーとして出場し、CLでも10試合連続スタメン。今なお日本人選手として唯一であるCL準決勝のスタメン出場を果たしている(マンチェスターUに敗戦)
代表でも各世代別代表に選出され、2008年には19歳でA代表デビュー。W杯にも2大会連続でメンバー入りした(2010年大会は出場なし)
質の高い縦パスとオーバーラップ。広い視野を持ってビルドアップに参加し、正確なポジショニングでリスクヘッジを行う、トータルスキルに長けたSBだった。
ブンデスリーガではロッベンと真っ向勝負で駆けっこをした。そして、世界トップクラスのアタッカーを自由にさせないスピード、フィジカルを備えていた。

そしてもう一つは、彼の放つ言葉にいつも魅力を感じていたからだった。
イケメンな見た目から、個人的にはクールでスマートな選手だとイメージしていた。ただ、彼の言葉にはいつも力があり、魅了された。最初に彼の言葉の魅力に触れたのは2014年ブラジルW杯終了後、日本代表の敗因を検証していたNumberの特別号だったと記憶する。
この雑誌を手に取った理由は、おれ自身が"自分たちのサッカー"という言葉に踊らされた日本のサッカー界に疑問を抱き、自分なりに解決したかったからだったと思う。所用で大阪に向かう新幹線の中で読んでいたのを覚えている。
記事の中で内田篤人は、明確に"自分たちのサッカー"という理想論を否定した。

勝ちたいのか、自分たちのサッカーがしたいのか、と問うていた。CLでの自身の経験値を踏まえて、"自分たちの望むサッカーができるチームなんて、数えられる程しかいない"という事を淡々と語り、"自分は試合に勝ちたい"という意志を明確に示していた。

個人的には衝撃を覚えたし、"勝つこと"と、"自分たちの得意なプレーを最大限行うこと"が両立し得ない場合もある、という、あまりにも当たり前な事実は、もしかすると日本人が知らない、大袈裟な言い方をしたら現場レベルでは当時内田篤人しか経験として持っていないサッカーの真実だったのではないか、と今は思う。そして、おれがサッカーの戦略や戦術、戦い方や試合の流れというものに、本当の意味で興味を持ったきっかけが、この時の内田篤人の言葉にあったと思っている。

2010年W杯、戦術的理由でスタメンから外れる際には自分の事を"戦術変更で代わるくらいの選手"と言った。
CL決勝に出場する方法について聞かれると、"ビッグクラブに移籍する事"と言い切った。そして、自分はシャルケが好きだ、とも
上記の2014年W杯後には、代表引退を仄かした。負けてもスター扱いされる場に違和感を感じる、と発言した。だけど怪我から復帰すると、"日本代表に戻らなくちゃ"と言った。そういう正直で素直で前向きで、暑苦しいところも大好きだった。
W杯の試合後に、"やはりW杯は違うか"と問われれば"普通。ボールが2つなるわけでもなければ、相手も11人だ"と言った。彼の言葉にはいつも味があり、"質問に答えられる人"だなと感じていた。そして物事の真意をついているなと、いつも感心していた。正直代表の試合はあまり見ない時期もあったが、試合後の内田篤人のインタビューはネットで探して見ていた。サッカー云々を抜きにしても、彼の言葉、存在に魅力を感じ、そして尊敬していた。

勤続疲労からきたと思われる膝の故障に苦しめられ、完治することのないまま移籍。その後鹿島に戻ってからも、トップフォームを取り戻すことは叶わなかった。
引退の発表を聞き、残念だし、まだ続けて欲しいと思いながらも、

「けがをしないように抑えてプレーする中で、他の選手が100%で練習する隣に立つのは失礼だなと感じた。鹿島の選手として、けじめをつけないといけないと思った」

という理由を見て、そうだよな、彼はそういう人間だよな、と思った。だから彼は、ああいう魅力的な人なんだと思う。

試合後のセレモニー、引退会見で発した言葉も全て魅力的で目が離せない、最後まで彼はおれの大好きな内田篤人選手だった。きっとこれからもそうであり続ける。

内田篤人選手に、心から感謝している。
物心つく頃から続けていたサッカーと、プレイヤーとして接することが少なくなった時期に、もう一度サッカーの面白さに触れるきっかけをくれた。サッカーを再発見させてくれました。歳は1つしか変わらないけれど、サッカー選手として、人間として、心の底から尊敬していました。これからも何らかの形で、サッカーファンを楽しませてくれる存在でいてほしいなと思っています。
その前途が、新しい人生のスタートが、明るいものである事を心の底から願っています。今までありがとう。お疲れ様でした。

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