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誰より身近なニューヒーロー 12節 アトレティコvsラス・パルマス(H) 2024.11.3

国王杯一回戦を終えて、ラス・パルマスとのホームゲーム。ここらで気持ち良く勝ってCLパリ戦へ弾みをつけたいところ。

ラス・パルマスは今季絶不調で初勝利は全チームで最遅の10節。しかし10節と11節を連勝して18位に。同じく絶不調のバレンシアと怪我人祭りのジローナ相手だったのでまだ気は抜けない。前回対戦

アトレティコの前プレがどハマりしてインテル撃破の布石になった試合。今回もここでポジティブな変化が見たい。
ラス・パルマス自体は先季のレギュラークラスが4,5人抜けておりなかなか同じようなビルドアップスタイルを作れずに苦しんでいる。監督も変わったし。
ただ無得点は2試合しかない。アトレティコと同じ。特にトップがファビオ・シウバに固定されてからは得点力に問題はない。課題は先制点を与えない事。




●スタメン

・アトレティコ
オブラク
モリーナ / ヒメネス / ラングレ / ハビ・ガラン
コケ / バリオス / リーノ
グリーズマン / アルバレス / ジュリアーノ

ラングレが4試合ぶりの復帰。同じくバリオスも4試合ぶり復帰となる。ジュリアーノがフル出場した国王杯に続いてスタメン。ラリーガでは7節セルタ戦以来今季2度目。

・ラス・パルマス
シレッセン
ヴィティ / アレックス・スアレス / マッケンナ / アレックス・ムニョス
カンパーニャ / エスーゴ / キリアン・ロドリゲス
サンドロ・ラミレス / ファビオ・シウバ / アルベルト・モレイロ

ヤヌザイが負傷離脱して右WGはサンドロ・ラミレス。監督交代後は中盤はこの3枚。



●前半

アトレティコが主にボールを持てた前半だがその要因は守備にあったので守備の話からいこう。

ラス・パルマスはビルドアップにGK+6人が参加。アトレティコは同数の6人でプッシュしていった。サウル・ココもいなければセルジ・カルドナもいない。ペローネもいない。何よりバジェスがいない。アトレティコのプレス設定が強気というよりも同数でぶつかっても対人で外される箇所がなく、繋ぎのミスが多いGKシレッセンにボールを戻させればボールを奪える確信を持った設定だった。特にマッケンナのところはかなり狙いを定めており8分にもバリオスの決定機に。

また、ラス・パルマス側最大の問題点は前線の4人(キリアン・ロドリゲス、サンドロ・ラミレス、アルベルト・モレイロ、ファビオ・シウバ)をアトレティコの最終ライン4人で抑えられます、という確信を持たれている事にある。レヴァンドフスキやヤマル、ヴィニシウスにエンバペがいたらこうはならない。結局、突破されても別に怖くないためにアトレティコの人数バランスはこのようになった。
ラス・パルマスは蹴ってくるならハビ・ガランのところだろうなと思っていたが、普通にサンドロ・ラミレスが競り負けていたのが割と一番絶望的だった気がする。

アトレティコ相手にこのバランスで突破するのは実質不可能だったように思うが、10月に就任したディエゴ・マルティネスからするととにかく直近で勝利を掴んで選手達の自信、さらにはクラブやファンからの自身の信頼を掴む必要があり、強敵にぶち当たって負けるまではとりあえず継続路線という事だったと予想する。そう考えると、アトレティコからすると最高のタイミングで対戦できたのかもしれない。

ちなみに21分に一度あったファビオ・シウバの抜け出しは上記の設定により"こういう事も起こる"というもの。むしろ抜け出しどころか試合を通じてシュート自体をこの一本に抑えたので上出来だった。褒めます。
この場面もパスの選択肢はなくヒメネスのスライディングも間に合っていたのであの角度からだとイニャキ・ウィリアムズでもない限り決定機にはならない。

守備の話をさらに2つ。
・ラングレのコミュニケーション
14:35に最終ラインの背後を狙ったボールをオブラクが躊躇して前に出られなかったがラングレがコミュニケーション。続く16:35の場面ではオブラクがしっかり対応した。こういうの大事です。

・ジュリアーノのポケット守備
レガネス戦、ベティス戦。形は違ったが失点の原因はポケット侵入になった。

21:40の場面。2試合連続ゴール中のアレックス・ムニョスが大外を使ってポケット侵入。ジュリアーノは考えるより先に身体が動くタイプで、なんだかよくわからんがゴール方向に戻っておいた方が良さそうな感覚を信じて走り出せるタイプ。見事にここ数戦の嫌な流れを断ち切った。


ようやく攻撃の話。ラス・パルマスにビルドアップをやらせず、ロングボールを回収し続けて敵陣でプレーした。基本は後方3枚にモリーナが参加。右サイドはジュリアーノとバリオス、左サイドはハビ・ガランとリーノが関わってグリーズマンとアルバレスはあまり左右を気にせず縦関係になった。2人のFWで背後と手前を狙う、というのはまさにバルサが実践している事だが参考にして整理したのかどうかはわからん。

ラス・パルマスはキリアン・ロドリゲスがCFと並列になる4-4-2を選んだが、アトレティコは後方3枚+コケで十分に狙った配球を使える。それとこの日はバリオスがいるのでパスを循環させる作業に手間はかからない。リーノもいるし。
一番整理されているなと感じたのもバリオスのタスクで、この日はモリーナが守備の仕事を請け負ってくれるのでバリオスがコケの隣に陣取る必要がなかった。そのためジュリアーノを追い越して大外を駆け上がるなど好き放題プレー。実際カウンターを喰らうにしてもバリオスよりジュリアーノが頑張って帰陣した方が役に立ちそうなのでこのシステムのバリオスの守備タスクはかなり軽くなっていた。モリーナが最終ラインに入る効果はそんなところかと。あとは彼自身、自分より前に2,3人の選手がいる時の方が良い仕事をする。プレス回避はご存知の通りワールドチャンピオン級なので大外に立たせるより使い勝手が良い可能性もある。守備のポカが出ない間は。

突破の選択肢は主に大外。グリーズマン周辺を2CH(エスーゴとカンパーニャ)がだいぶ警戒していたので大外で相手SBと1vs1になる機会はそれなりに作れた。キレ味抜群だったのは左のハビ・ガランで、流石に相手がヴィティだと縦突破一択でも簡単に抜けていってクロスまでいった。あまりにも綺麗に抜いてくるものだから18分には一度ゴール前でジュリアーノが全く反応できなかった。リーノは一つ内側でどうやってボールを受けようか思案していたが、相手もリーノがどこで何をしてくるのかよくわかっていなかった感がある。悩みながらのプレーになったが彼のパフォーマンスが悪かったという事は全くない。

右ではジュリアーノの仕掛けを中心に。まだラストサードの選択肢に乏しく足が止まってしまう事が多いが連続性と気合で解決しようという意欲は非常に良い。それとそもそもがストライカーなので左からのクロスの入り方が上手い。フィニッシャーとして活用できる能力はまさに5-3-2のWBではなく4-4-2のSHでこそ生きるもの。
ゴール方向へのアクションも多く、モリーナにロングボールの方向を身振りで要求した直後の37分、コケの列落ちでラス・パルマスのプレスの基準が定まらない中、モリーナが前向き。グリーズマンが手前でボールを受けようとするムーブに呼応してCBとSBの間をゴール方向へ一直線。この抜け方はまさにFW。

モリーナからのボールも完璧でゴール前の環境を一瞥すると迷いなく右足でゴールへ流し込んだ。あまりにも感動的な先制ゴール。ジュリアーノはこれがアトレティコでのラリーガ初ゴール。そして"シメオネ"のラリーガゴールは2003年12月14日のアウェーセルタ戦以来、約21年ぶりとなった。


●前半終了

PK疑惑があったりしながらジリジリと時間が過ぎたが先制点を取って前半を終えた。ボール保持も54.7%と優勢。ラストサードで誰が何をするかだけがテーマで、押し込んで両サイドを広く使う形を確定させた試合内容は久しぶりに安心して見ていられるものだった。ネガトラも一度ファビオ・シウバにシュートまでいかれた場面以外は完璧。ラス・パルマスのベンチメンバーを考えてもハイメ・マタに一撃もらうくらいしかリスクは感じなかった。多少別のパターンを試した後半へ進む。


●後半

2枚交代。デ・パウルとギャラガーを入れた。この2人はパリ戦で死ぬまで走る準備をするのかと思ったが使ってきた。交代するのはバリオスとリーノ。まだ復帰したばかりのバリオスのプレータイムを45分に制限すると同時にパリ戦でも使う目処を立てた。リーノはまだまだ悩みながら。ここでの交代はシステム変更に依る。

大外のジュリアーノとハビ・ガランを確定させて5バックに。前半もラス・パルマスの左SBのアレックス・ムニョスがかなり高い位置に出てきていたので配置というよりは心構えの変化と、あとは前プレする必要があまりなくなったので構えると自動的にこの配置になりますね、という感じ。それなら守備はデ・パウルとギャラガーの出番です、という。ちなみにギャラガーが右、デ・パウルが左だった理由は色々考えてしまうがここではノーコメントとしておく。個人的な憶測なので。

アトレティコは4-4-2から5-3-2に変わった事で中央付近の物量が増え、ファビオ・シウバ周辺でボールを収めるのはより難しくなっていった。つまりシメオネはここを警戒したという事でしょう。また、ビルドアップではハビ・ガランが最寄の相手右SHと距離感に余裕ができてドリブルでのプレス回避を連発。これも彼の良さで、こういう配置で戦おうとすると現状替えが効かなくなってしまった。
一方、デ・パウルは左落ちしてボールを引き取ろうと移動してきたのでハビ・ガランにとっては割と邪魔だった。

これがチームのオーダーなのかデ・パウル個人の選択かにも依るが、まあ勝手にやっているでしょう。デ・パウルはモリーナへのスルーパスや斜めにゴール方向へのボールを刺すなど左にいる時ならではの特徴は出したが、それが今のチームでどれだけ必要で価値のあるものなのかを示せたとは言えない。

ギャラガーは主に中央でボールロストした時に鬼の首を取りに行く再奪回プレスで活躍。ちなみにおれは未だに見慣れないので勢いが凄すぎて毎回驚いています。本当に凄い。ボール保持では相手を背負った状態だとフリーズしてしまう事が多く、特に終盤のヘイニウドの相手の気持ちを何も考えていないパスは全然収まらなかった。


65分にグリーズマンとアルバレスを下げてコレアとスルロット。まだ1-0のままだったがすんなりこの2人を下げたのは思い切っていたようにも見えたし、それだけ失点しないだろうという余裕があった。
同時にラス・パルマスも2人交代。ハビ・ムニョスは同ポジションでの交代となったが、マクバーニーをサンドロ・ラミレスと交代で入れてCFを2人にした。ちなみにハビ・ムニョスよりカンパーニャが優先される理由が全くわからない。いらないならください。

アトレティコは一層敵陣でのボール保持を長くする事を目的とし、そうなると左サイドはリーノがいなくなったのでハビ・ガランは一人で上下動を繰り返す必要が出てきた。リケルメに替えて守備に不安が出るのも嫌だし、ヘイニウドに替えて攻撃を放棄して相手にボールを持たれる事になっても嫌、となるとさらに替えが効かなくなっていった。ほぼ構想外の立場から一ヶ月弱、一気に不可欠な選手になったガランが見事の一言。
右サイドでは前半は突破のアイディアが足りなかったジュリアーノだが、70分を過ぎるとシンプルにスタミナの差で相手を置き去りにできるようになる。ある意味アトレティコらしい。

待望の追加点は83分。ビルドアップ段階でデ・パウルが彼らしい横移動で相手中盤ラインの手前でどフリーに。大外に逃げずにこういう立ち位置を取るべきです。

スルロットの、こちらも彼らしい裏抜けと強烈なフィニッシュ。置きにいかずに振り抜いた決意のシュートだった。これで試合は決まった。

アトレティコはヴィツェルとヘイニウドを入れてクローズ。
余談だが、ラス・パルマスのGKシレッセンの脳震盪の交代の影響で、ラス・パルマスだけでなくアトレティコも6人交代できたとの事。知らなかった。ところでラス・パルマスはアクシデントでGKを替えないといけなくなった上に、アトレティコはフレッシュなDFを追加できるというのはルール的にどうなんでしょう?フィールドプレイヤーはラス・パルマスが5枚、リードしているアトレティコが6枚替えられた。何故そういうルールになったんだろうか。


●試合結果

久々に危なげのない快勝。なんと後半のボール保持率は前半より高くなって60.0%になった。ラリーガでは4試合連続で失点していたが7節セルタ戦以来のクリーンシート。
前向きの守備は改善されたと言っていいのか、相手がラス・パルマスだからハマっただけと捉えるべきか。前回対戦でも同様の内容だったので過信は禁物。ただし、それに最適なメンバーを選んで期待通りの試合ができたのは手放しに喜びたい内容だった。ここにル・ノルマンとジョレンテが戻ってきて高い強度を維持できるようになれば期待値は高まってくる。

この日はなんといってもジュリアーノ・シメオネに尽きる。10節レガネス戦でチームを勝利に貢献し、国王杯ではフル出場でPK奪取。続いて臨んだこの日は先制ゴールを決めてみせた。わかりやすく序列を駆け上がり、閉塞感を打ち破る起爆剤として期待したくなる活躍を見せる。ポジションを奪う時というのはこういうもの。継続できるか。


11/3
リヤドエア・メトロポリターノ
アトレティコ 2-0 ラス・パルマス
得点者
【アトレティコ】’37 ジュリアーノ ’83 スルロット


●ピックアップ選手

ジュリアーノ
先制ゴールでヒーローに。それ以外にも全力プレーでハートを掴んだ。ゴール前の精度と突破の選択肢を増やしたい。

バリオス
配球と大外ワーク。守備タスクから解放されてやりたい放題だった。シュートは酷かった。

スルロット
得点が欲しい立場でしっかり決めた。仕切り直し。


●myQA

12-1 序列変化
右サイドでジュリアーノ、左サイドではハビ・ガランが序列を駆け上がっている。要因を軽く備忘録として残す。ハビ・ガランから。

・ハビ・ガラン
4-4-2の左SB、そこから5バックへ移行する過程でライバルがいない。勝手にいなくなったと言ってもいい。ヘイニウドでは攻撃能力が低すぎる、リケルメは説得力がない。リーノは4バックではSBにできず、むしろガランとのセットでSHに置く方が効果が発揮される立場。ガランの欠点は大外レーンを一人で独占できない点。そこをリーノとの同時起用という形で補えば効果的である。CLクラスで通用するかどうかはまた別の話。これからわかる。
という事でライバルは不在、5バックだとライバルになるリーノとは同時起用が最適という事で敵を味方に取り込んだような感じになった。ボールと人に強く、ビルドアップではドリブルを活用して違いを作っている。クロスがスルロットに合うようになればいよいよ手が付けられなくなる。

・ジュリアーノ
4-4-2のSHで考えた時、右がジョレンテ、左がリーノが一番手である事を前提とすると、リケルメとジュリアーノが両方のサブという事になる。今のところ右も左もジュリアーノが良いでしょう。
ジュリアーノの特徴は頑張る事。あとは元々FWなので、クロスに飛び込める事。ここで得点に繋げる事ができるといよいよレギュラークラスになる。
リケルメにももちろん良いところはたくさんある。例えば縦突破とキックの質なんて比べるまでもなくリケルメの方が上質である。現状ジュリアーノが優れているのは連続性と、得意なプレーができない時に何が出来るのかである。ジュリアーノは何度も何度も同じようなプレーを擦り続ける事ができる。成功するまで繰り返す。そして自分の特徴が出せるプレーができない時にも走る、競り合う、勝負を仕掛ける。そこでのチームへの貢献が、圧倒的にジュリアーノが優れている。そしてそういう泥臭さを、アトレティコは求めている。

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