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必勝の舞台に身を置き CL3節 アトレティコvsクラブ・ブルージュ(A) 2022.10.4

さてCLだ。
クラブ・ブルージュはホームでレヴァークーゼンに1-0、アウェーでポルトに4-0で連勝。ポット4からの快進撃である。ポット4から決勝トーナメント行くのって、どれくらいいるんだろうねこれまでに。
ブルージュ自身もCLの決勝トーナメントは未経験で、ビックチャンスを迎えている。このアトレティコとの2連戦で1勝以上出来るとかなり現実的になってくる。

ここまでは4-4-2をベースに、細かいビルドアップの前進よりはリスク管理を優先する戦いで結果を出している。ロングボール一本でも2,3人のスモールユニットでふいにフィニッシュまでいける迫力と、怖いもの知らずの若さがあるチーム。守備は対人でバチバチ止めていくぜ。という感じ。マッスル&ファイト。

対するアトレティコはここまで、ホームでポルトに2-1勝ち、アウェーでレヴァークーゼンに0-2で負け。レヴァークーゼン戦はするっと負けてしまったが、サヴィッチ&ヒメネスが戻ってきたここは必勝の試合。週末のセビージャ戦でついに4バックを試したが、代表でもフル稼働しているヴィツェルをどこかで休ませたい気持ちもある。さてここは。

●スタメン
・アトレティコ

オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド
コケ / ヴィツェル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / モラタ

モリーナは無事スタメン。週末のセビージャ戦と同じ最終ライン4枚。
カラスコとグリーズマンがスタメンに入る。セビージャ戦からやや攻撃にシフトか

・クラブ・ブルージュ
ミニョレ
オドイ / メシェレ / シラ / メイヤー
オニェディカ / ニールセン / ファナケン
ソワー / ブキャナン / ジュグラ

1節2節は出番のなかったブキャナンがスタメン。あとの10人は過去2戦と同じメンバー。



ミカン色アトレティコの初陣。


●前半
正直予想していなかったが、ブルージュのボール保持で試合が進んだ。もう少しボールを手放すかと思ったブルージュだが、効果的にそして能動的に前進する。意外というか想定外だった。
対するアトレティコの非保持は週末のセビージャ戦に倣った形。当てが外れたのは、全くプレスでハメられなかった事。内容は後述する。

ブルージュは保持の配置をここまでの2試合とは変えてきた。どう見ても"今日はボール保持をするぞ"という試合の入り。
この理由が
・アトレティコ相手ならやれると思った
・ボールを握らせたくなかったから保持率を上げたかった
のどちらなのか気になるところ。
ようはアトレティコ相手なら自分達の保持で試合を出来ると判断したのか、アトレティコをリスペクトして保持時間を伸ばしたかったのか、である。

おれの見立てはどう見ても"アトレティコ相手ならやれると思ったから"になる。非保持も高いラインを維持して後方にロングボールを入れられるのはしょうがないという設定で圧力を掛けた。この試合はボールを持つ。相手を押し込む。点を取る。勝つ。そういうメッセージのあるサッカーであった。さて見ていく。

ここまでの2試合は2CBでの保持と大外を狙った構築をしていたブルージュだったがこの日の後方は3枚+アンカー。右SBのオドイが最終ラインに留まり、アトレティコのプレスを外す役割を果たした。どうもアトレティコが4-1-4-1で配置してくると決め打ちしているような配置だったが、そんなもんなんだろうか。

大外は右はブキャナン、左はSBのメイヤーが高い位置を確保。過去2試合ではなかったが、普段やってる形なのだろうか。
FWはジュグラが足下で呼び込み、ソワーは真ん中を離れてかなり広く動き回ってボールに関わった。彼の運動量は高く評価したい。良い選手だ。
主にジュグラの足下にボールが入るところを起点に、コンパクトなパス交換で最終ラインの背後を取りに行く攻撃は再現性も高く危険。アトレティコはDFの我慢が試される。ブキャナンがジュグラと2トップのように内側に入ってきてソワーをフリーマンとして動かす形も見られた。こういう、選手の特徴を配置に反映させてるのはすごくいいよね。

アトレティコの前プレはいつも通り飛び出す選手の順番付けをはっきりさせている。ここの問題点は後ほど指摘する。

この日はまずモラタ、次にIHのグリーズマン、その次はSHのカラスコ、の順で相手DFを捕まえに行くため、後方3枚に対して上記3人がプレス、という構図が出来る。問題はその先で、アンカーのオニェディカを捕まえる役割を主にヴィツェルが担当した。なんでやねん。

コケはカラスコがいなくなるので担当する横幅が極端に広く、さらにヴィツェルが前に行くので中盤を1人でほぼ全部対応。そしてこれが最大の問題だと思うのだが、ジョレンテは高い位置を取る左SBのメイヤーに付いて行った。
結果、前線は同数プレスと言えば同数プレスなんだがその他の箇所がどこも使われたい放題の様子があり、これでいいんですか感が強い。特にファナケンに自由にボールを引き出された。この選手は無骨でテクニカルには見えないがミスが少なくて上手い。

32分にジョレンテがアクシデントでコレアに交代したが、この非保持の優先順位は全く変わらなかったのでジョレンテ個人の都合ではなくチームで作っていた決まり事のよう。間違いだったと断言したい。ちなみにこのコレア投入の際にコケ、カラスコとサウルがシメオネと何やら話していたが中盤の捕まえ方の確認だったのではないかと思う。結局前半のうちは何も変えていないが。

で、先制点がブルージュに入る。ガラ空きの中盤をハイボールで超えられ、ボールを受けたジュグラがソワーとのワンツーを使って一気に侵入。折り返しをソワーが決めた。最後ゴール前をぽっかり空けてしまった。ヒメネスもヘイニウドも戻りきれなかった。普段3CBでやってる弊害だったりするのだろうか。関係ないか
過去2戦でも活躍していたジュグラだが、この日は特に足下にボールが入った場面で自信を持ってアトレティコゴールに迫った。サヴィッチが手を焼いていたので本当に取れないんだろう。日を追うごとにチームにフィットしてきている様子を感じる。期待もされているんだろう。先季優勝クラブに背番号9で迎えられたんだからそりゃそうだけど。ラリーガでプレーしていた選手がこの舞台で活躍しているのは嬉しくもあり、悔しい気持ちもある。


アトレティコの保持はこの日も4-1-4-1でヴィツェルをアンカーポジションに。両サイドのトライアングルで前進し相手を押し込む狙いが見られた。

ブルージュはブキャナンが中盤ラインの右に収まり、4-4-2でブロックを作る。コンパクトかつこの日は特に最終ラインを高く保ち、チーム全体でボールへの圧力を高めて積極的にボールを奪いに行った。これだけラインが高いのにジョレンテ&カラスコが背後を使う場面が前半合計で1,2回しかなかったのは見事な対応。特に、前線2トップの機動力が良かった。ジュグラ&ソワーのコンビは2人とも良く走っている。
後方は4-4ブロックなので、アトレティコの両SBは時間とスペースがある。余裕を持ってボールを受けられるが、ここでも遠い方のFWがヴィツェルを消す作業をサボらない。

ヴィツェルを消される
この対応でアトレティコは中盤の選手が余裕を持って前を向く時間が作れず、両翼の背後を狙う大きな展開を出す事が出来ない。生命線になったのは結局、唯一余裕を持って前を向けるSB。

特に前半はモリーナが前を向き、グリーズマン&ジョレンテと作るトライアングルで前進を試みる。
25分にはモラタの背後を一発で狙い、GKと1vs1の場面を作った。

そもそもここを狙いにしていたと思うのでこれはこれでいい。ただ工夫は少なかったなと。ヴィツェルを使ってやり直して左の大外カラスコ狙い、みたいな形は全く見られず。そもそもカラスコは内側にポジションしていたがタッチラインを踏むくらい幅を取った方が効果的だったようにも見えた。カラスコを外側からヘイニウドが追い越す、みたいなイメージがあったんだろうか。

●前半終了
先制を許して前半終了。
アトレティコは数本の裏一発しかチャンスを作れず、逆に長時間ボールを持たれて得点を許した。事前に想定していたものと全く逆の試合になってしまっている。

アトレティコはプレスの決まり事が全くハマっていなかった。前半途中にでも修正してよかったと思う。選手にもどう見ても迷いがあった。先季のバルサ戦で書いた事だが、プレスをハメるのに必要なのは前向きの矢印を強烈に出す確信だ。背中が気になって迷っているプレスなんて効くはずがない。そしてマドリーダービーでも同様の感想だったがやるならやるでロングボールも蹴らせないくらいの圧力でやった方がいい。この日は特に、前プレをする意思は見られたがその理由が見えてこなかった。なんのために圧力を掛けたかったのか不明。シメオネがこの形で良いと思っていたわけがないと思うのだが、どういう意図のある45分だったのか疑問が残った。
しかしプレス強度が欲しい試合に限ってサウルが出ていない印象があるな。という感想。これも中途半端。セビージャ戦を踏襲したいならセビージャ戦のキーになっていた選手は起用するべきだろう。セビージャ戦の勝利要因をどう分析していたのだろうか。

ブルージュは意図を持った保持と急所を突く縦パスで積極的な45分。守備専任かと思っていた右SBのオドイが球出しのポイントになったのは驚きで、配置でもここまでの2試合は右大外を左利きのオルセンが担当したが、順足のブキャナンを置き縦突破の脅威を準備した事からも明らかに押し込む狙いを持っていた。そしてホームで見事にポジティブな内容でプレーしている。ノリに乗っており勢いもある。個人的にブルージュは試合を重ねる毎に驚かされて裏切られている。実際にチームも徐々に勢いを増しているのかもしれないがそれにしても好調だ。


●後半
アトレティコは選手交代。ヒメネス→コンドグビア。配置を変える

ヴィツェルがCB真ん中に入り、5-3-2に戻す。非保持では大外のピンを抑えながら中央の陣取り合戦で優位を持ちたいという点でも、保持で後方3+1でプレスを外したい、という点でも一切の矛盾のない変更だろう。

3CB+1の保持
この変更でブルージュのプレスはハマりにくくなる。アトレティコはボール保持を大きく改善し、ゴールに迫る時間を作った。早速カラスコ、グリーズマンに決定機が来るなど可能性を感じる後半の入りになる。
特にモリーナ、グリーズマン、コレアのトライアングルは掴みどころがなくブルージュも対応に苦慮。アトレティコはプレッシャーを与える事が出来ていた。

しかし62分、またしてもジュグラに真ん中を割られて失点。またジュグラ。本当に厄介。
きっかけはカラスコのクリアミスを攫われたところからだったが、これを回収したのもソワーである。2トップの良い仕事と特徴が出たゴールで監督冥利に尽きる一発だろう。これでブルージュは3連勝が見えた。そしてジュグラ自身はこれでCL2戦連発。国内リーグでは10節終了時点で6ゴールを決めている。
アトレティコはここでモラタ→クーニャを交代。

ブルージュは非保持でニールセンの縦挙動の質が高く、後方3枚になったアトレティコにアンカーを使わせない。2トップと共に良い運動量をしている。ソワーも90分間スプリントを維持した。良い準備が出来ていた感。

アトレティコは75分にクーニャがPKゲット。決めていれば反撃開始、というところだったがこれをグリーズマンが外し、直後のプレーでグリーズマンがネットを揺らすが今度はオフサイド。最後は疲れが見えたブルージュだったが意地のクリーンシートで見事3連勝。この結果でアトレティコはグループ最下位となった。


●試合結果
負けた。きっちりした勝利を期待していたが。

セビージャ戦の90分とこの日の前半45分で試した4-1-4-1は、特に攻撃においてはなんのメリットも生めずに終わっている。そもそもセビージャ戦の90分はそのままCLに転用したいほどの手応えだったのかも疑問だ。まずビルドアップにおいて、セビージャ戦の90分もこの試合の前半45分も、2CBからアンカーのヴィツェルに効果的に前を向かせるボールを入れる機会はほぼ皆無だった。セビージャ戦であったのはサウルのレイオフくらいだったが、この日はサウルを起用せず。そしてヴィツェルにボールが入ったとて、それをスイッチに前進する準備がチームにあったかというと、多分なかった。そういう動きは見られなかった。

開幕前から、おれは"アンカーを変えればチームのボール保持が変わる"とは全く思っていないと指摘していたが、残念ながらその通りの仕組みになってしまった。アンカーが前向きになれない+アンカーが前向きになったところでその先に何があるのか不明の状態を考えると、ヴィツェルが頑なにCB間サリーしなかった理由もよくわからない。元々シメオネのチームはCB間サリーは基本的に禁止という認識だが、それは被カウンターの中央の強度が理由だと考えている。ヴィツェルはそもそもCB真ん中で起用してきた選手なのに強度が理由でCB間ポジションを取らない、なんて事はあるのだろうか。考えにくいのではないか。いいじゃん真ん中でボールもらえば。

非保持においても、この日のメンバー、配置は大いに矛盾があった。
まず、特に今季のアトレティコの前線プレスは飛び出す順番を明確に決めている。なんで決めてるんだろう。
例えばセビージャ戦ではモラタがボール保持者に寄せて、左右のIH(コケorサウル)が隣のCBに寄せる。ここで相手がボールを手放す事を想定して次のパスを狙う。
この日はモラタ→グリーズマン→カラスコの順に相手最終ラインに圧力を掛けに行き、ブルージュのアンカー、オニェディカには距離の近いヴィツェルが寄せて行った。

大きな問題点がある。

・グリーズマンが先に守備ブロックを離れるため、コケの縦方向の可動域を活かす守備が出来ない。
・カラスコが前プレを優先するため、ヘイニウドが大外(ブキャナン)の対応に集中する事になる。

の2点。まず、セビージャ戦の良かった点はコケが前向きに飛び出し、サウルが中央に留まる中盤のバランスが良かった点だ。ただ、コケを前に出すためにグリーズマンを後ろに留める考えはシメオネにはなかっただろう。それはそう。問題は"じゃあなんで4-1-4-1だよ"という点。セビージャ戦と同じ配置で挑む事を決めた後にグリーズマンが先発出来る事が決まったかのような違和感がある。じゃあサウルの代わりにスタメンね。という具合に。多分そうなんだろう。
そしてヘイニウド。現状左SBが出来る選手が他にいないので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが、ただのSBをやっている分にはヘイニウドの守備の長所はほぼ出ない。相手の右WGがエンバペなんだったらわかるけど。攻撃で足手まといになるだけである。ここも、"じゃあなんで4-1-4-1だよ"となる。

アトレティコは後半開始からの配置変更で一度はペースを呼び込んだ。この点はポジティブに評価したい。ただし、注釈を付ける。それは"別に前半のメンバーでもこの形に変える事は出来た"というところ。
後半の配置変更はヒメネス→コンドグビアの選手交代がトリガーになっているのではなく、カラスコがWBに移動した事がトリガーだ。別に前半のメンバーでも出来たし、ジョレンテはIHが出来るんだからいつでも出来た。というかヘイニウドがいる4バックならいつでも変えられるだろう。45分も無駄に過ごす必要はなかったはずだ。

そして、あえてたらればを言うが、最初から5-3-2で配置していればヘイニウドを休ませてエルモソを使う事が出来たかもしれないし、ヴィツェルを休ませてコンドグビアを使う事も出来たかもしれない。明らかに過負荷がかかっている2人をスタメン起用したのにシステム丸ごと間違えた試合の入りをして、45分間なんの効果もなく過ごし先制点まで与えた事はシンプルに非難されていいミスだろう。特にエルモソはあの退場を最後に干せば干すほど使いにくくなる気がするので、まだ戦力と考えているならさっさと使うべきだ。シメオネならここで使いそうだなと思っていたんだが。


何はともあれ負けた。ブルージュはベストの試合をして、アトレティコは何一つ良いところが出なかった試合。

惨敗したわけで、相手は無傷の3連勝なわけで、負け惜しみにも傲慢にも見えるかもしれないが客観的に見て選手個々のクオリティでアトレティコが負けているとは思わない。ただブルージュはスムーズで効果的なチームであるのに対してアトレティコはそうではなかったという事。幸いにもリベンジの機会は一週間後に訪れる。リベンジなんてしなくていいのが理想だったんだけど

アトレティコがこの試合を受けてどんなメンバーでどんな配置をするのか、かなり興味深い。簡単に勝てれば言う事はなかったが、振り返った時に転機だったと思えるならそれに越した事はない。幸いまだ間に合う。残すは3試合。必勝の戦いが始まる。


10/4
ヤン・ブレイデルスタディオン
クラブ・ブルージュ 2-0 アトレティコ
【クラブ・ブルージュ】'36 ソワー '62 ジュグラ


●ピックアップ選手
モリーナ
セビージャ戦の負傷が心配されたが無事スタメンフル出場。前半は唯一球出しの起点となり、後半を内側を選ぶランニングでチャンスメイク出来た。

コレア
ジョレンテのトラブルで前半途中から。ボールが良く足に付きアタッキングサードで特徴が出た。そろそろ出番が増えるか

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