名古屋学生芸人の肖像 (片翼のチキン 佐々木スカル)

・名古屋学生芸人の肖像
(片翼のチキン 佐々木スカル)

 皆さんは、学生芸人であり若手芸人でもある”佐々木スカル”をご存知だろうか?
最近で言えば、オズワルド伊藤さんの”NOROSHI”という題のブログでその名前が紹介されていたが、実際にどんな人物なのか知っている人は多くない。
なぜなら、彼は名古屋を拠点に学生芸人というよりは若手芸人として活動しているからだ。

 今回は、”佐々木スカル”を通して見えてきた名古屋での学生お笑いの現状から、環境が違えばどのように活動の幅が変わってくるのかを紹介したい。
東京の学生お笑いの環境が如何なるものか見つめ直しす機会になったら嬉しい。

 まず、”佐々木スカル”の大まかな説明から入る。 
彼は普段は”片翼のチキン”という小学校からの幼馴染でコンビ組んでおり、月平均のライブ出演数は11本ほど。単純に計算すれば、約3日に1回はライブに毎月出ていることになる。

 出演舞台数から見てわかる通り彼らは東京のフリーのお笑い芸人に近いぐらいの数でライブに出ており、それらでは名古屋でプロとして活動する芸人さんと一緒に舞台に立っている。
言い換えると、東京では学生芸人の括りに入る”片翼のチキン”は、名古屋では若手芸人として活動している。
 その背景には根本的に学生お笑いの文化がない事や、もちろん東京に比べて名古屋で活動する芸人の規模の少なさもあるが、プロアマ関係なく名古屋全体で盛り上げていきたいという意識の高さがある。
ライブの出演機会に恵まれている上にプロとの交流がしやすいこの環境は、プロ志望である彼らにとってはとてもやりやすいそうだ。

 実際に名古屋で学生芸人を集めて継続的にライブを行うのは難しく、
佐々木スカル自身も『名古屋の学生芸人は発展途上にあり、もちろん収益を得ることを目的としてはいないがまだお金を取れるレベルではない。』
と学生芸人として盛り上げたい気持ちはあるが実現は難しいと言う。
その裏には、『無料で来てもらったお客さんを笑わせたいというより、自分がしたことに笑った人がお金払いたいと思えるようにしたい。』という、学生芸人の文化が発展していくには演者の質を上げていく事の重要性を感じた。

 名古屋で学生芸人をしている演者さんは片翼のチキン以外にも約6組ほどいて、”NOROSHI”に代表されるような”学生芸人”のイメージに対して憧れがあるという。
その理由として、『プロになる上でもちろん将来に不安もあり、学生の時だけお笑いをやろうと思うと名古屋では学生の内だけでは最大限に楽しめない』ことを彼は名古屋で活動する中で感じたそう。
加えて、『学生芸人の時に単独ライブできたり自分の好きなお笑いできて、それ終わったきちんと就職もできて良いな』と。
 そんな環境下で佐々木自身は、『東京と名古屋の架け橋になりたい。名古屋の学生芸人で東京ともっと交流したい子がいるから。』と語り、名古屋と東京を繋ぐこと、また学生芸人とプロをつなぐ役割を担えたらと考えている。

 ここまで読んで頂けたら分かる通り、彼は名古屋での活動に価値を見出していた。
もちろん名古屋でお笑いをするのが良い悪いとかではなく、単純に関西や東京での活動の方が売れることにつながる事務所・ライブ機会の多さはあるだろう。
しかし、”佐々木スカル”は名古屋で売れたいという強い意志がある。
 だからこそ『M-1の決勝に立ちたい』と。
『そこが目標だから自分のなりたい芸人像的に名古屋でも苦ではない』
『名古屋出身の芸人はいても、名古屋発の芸人はあまりいない。』
それ故に、彼は名古屋にこだわるのだろう。

 『名古屋だからこそ、チャンスがある。』

 最後に、インタビュー中に”佐々木スカル”が発したパワーワードを紹介したい。
これまでに示した彼の真面目さを思い出しながら見てほしい。

「俺は名古屋に合ってる」「俺がいない東京で一位を決めとけ」
「名古屋の頂上で待ってる」「表紙、俺??」
「名古屋の学生芸人に関しては俺に聞いてくれ」
「名古屋お笑い界の、えーと、金シャチになりたい」
「かかってこいや」

いや、お前が来い。
取材が進む度に、彼の格言のような言葉の切れ味は落ちていた。
本当は、ちゃんと今自分がいる環境で何ができるか、その上でどうしていきたいかを考えていた真面目な人間なのに。
どうしても、何かボケようと言葉を絞りだすところに彼の人間味の良さが出ていた。
私は”片翼のチキン”の活躍を願い、これからも応援したい。

 現在は、コロナ下で運営継続危機にあるお世話になってる会場の維持の為、有料配信での収入はその会場に寄付する活動や
単独ライブを無観客配信で開催したりツイキャスを毎日しているそう。

この状況下でも彼は歩みを止めず、一つ一つ努力を重ねている。
『名古屋から全国区へ』
彼の見据える先は、現実的だ。

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