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理学療法士・ピラティスインストラクターが考えるシンスプリントの予防

サッカーや陸上競技の選手に多くみられる『シンスプリント』という疾患があります。

予防方法の一つとして重要なことはふくらはぎを強化する事です。

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1.はじめに

シンスプリントは『硬い路面でのランニングや底屈筋の過負荷によって誘発される下腿の違和感や疼痛』と定義されています。

症状の初期はスポーツ後の下腿内側の違和感ですが、症状が進むにつれて疼痛のためスポーツ活動が困難となってきます。

シンスプリントの分類にWalsh分類というものがあります。
・ステージⅠ 運動後にのみ痛み
・ステージⅡ 運動中に痛みがあるが、パフォーマンスに影響なし
・ステージⅢ 運動中に痛みがあり、パフォーマンスが低下する
・ステージⅣ 安静時にも慢性的な持続する痛みがある
というものです。

ステージⅡまでならば痛みに合わせてスポーツ活動は可能ですが、ステージⅢ以上になるとランニングやジャンプ動作を制限する必要が出てきます。

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近年健康志向が高まりランニングをする人口も増加傾向であるため、重症化し疲労骨折に繋がる前に予防することをおススメします。

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2.なぜ痛みが出るのか?

シンスプリントのリスクファクターとして様々な論文を読んでみると、性別(女性>男性)、肥満度数の増加、過去のシンスプリントの病歴などがあげられますが、最も多かった因子が『舟状骨の落下(扁平足)』です。

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舟状骨が落下し扁平足の状態でランニングを続けるとふくらはぎ周囲の筋に過負荷が続き付着部の炎症へとつながります。

まず予防として論文で推奨していたのが『インソール』です。履物や『インソール』を自分に合ったものに変更するだけでも予防として十分に期待ができます。

『舟状骨の落下(扁平足)』については過去にまとめていますので、そちらも参考にしてください。

特に舟状骨が10㎜を超えるほど落下をしている群と、そうでない群と比較した場合シンスプリントを発症するリスクが2倍に上がるという報告があります。

これほど発症のリスクに影響を及ぼす舟状骨の落下ですが、そのほかの報告ではシンスプリント群と、非シンスプリント群での舟状骨の落下の平均差は0.85㎜だったと報告しています。

これだけの差を実際の臨床や現場で見分けるのは難しい場合があるかもしれません。

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私が臨床で判断している方法を例に挙げると、見かけ上の舟状骨の落下があるかを目視で確認するほかに、立位で土踏まずの位置に指を入れてみて、指先で足底腱膜を触れる事が出来るかで判断します。
足底腱膜に触れる事が出来なければ舟状骨が落下していると判断します。

その他には舟状骨の落下に関与が大きい『後脛骨筋の機能不全』が起きていないかの確認です。


3.舟状骨と後脛骨筋

この『後脛骨筋』とはどのような筋かというと、
起始:下腿骨間膜の後面
停止:舟状骨、楔状骨、中足骨底
に走行する筋で内くるぶしを通り舟状骨に付着する筋です。

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足関節は外くるぶしを通る筋と、この内くるぶしを通る『後脛骨筋』の作用でちょうど馬のタズナのような働きをして足関節の安定性とバランスをとります。

この『後脛骨筋』が機能不全を起こすと舟状骨が引き上げられず、落下し不安定な状態となるわけです。

では、実際どのように判断しているかというと『カーフレイズ:つま先立ち』です。

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正常の場合ですとかかとを上げた際、舟状骨は後脛骨筋に引き上げられ踵が外側に向かって倒れるように観察できますが、機能不全を起こしていると踵が内側につぶれるような形となります。

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※この症例は20代女性で、高校の時に部活は陸上競技を行っていました。実際にシンスプリントを発症した既往があり、その時はステージⅣだったそうです。

臨床での指標の一つとして試してみてください。
両足で行ってみて分かりにくい場合は、片足で行ってもらい負荷を上げるとより分かりやすいと思います。


4.予防の実践

ふくらはぎの筋力を強化することがシンスプリントの予防にどのようにつながるのか?
現状はっきりとした結果が出ている訳ではありませんが、ふくらはぎの筋力が強いとスプリント時の足部~脛骨にかかる負担を吸収し損傷のリスクを下げるのではと仮説が出ています。

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その証拠にオーストラリアのラトローブ大学でのルークマデリー、シャノンムンテアヌ、ダニエルボナンノによる2007年の研究で検証では、連続した片足の『カーフレイズ:つま先立ち』回数を健康な人とシンスプリントを発症した人との回数の差は30%もあったと報告しています。

明確な説明にはなっていないようですが、少なからずふくらはぎの筋力はシンスプリントを予防してくれる事がわかります。
特に、ふくらはぎの遠心性の作用が重要であると考えられます。

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方法としては図のような台の上に爪先だけ乗せて立ち行います。
ここで重要となるのが先ほど説明した通り、踵を上げる時より降ろす時のほうが重要となります。

ゆっくりと降ろしながら行うことを意識してください。ただし、すでに痛みが出ている人は『カーフレイズ:つま先立ち』を行うのではなく、まずは練習量(走行量)や履いている靴のインソールを見直すようにしてください。

また、ランニングのフォームの見直しも重要になってきます。

また、このシンスプリントは症状が進むにつれ疲労骨折へとつながる疾患でもあるため痛みを感じる時は早めに専門の人に見てもらうことをおススメします。

最後にこの記事を読んで少しでも参考になりましたら、スキやフォローよろしくお願いします♪


5.まとめ

・シンスプリントは症状が悪化すると疲労骨折につながる疾患である。

・予防の一つとしてふくらはぎの強化、インソールの見直しなどが有効です。

・後脛骨筋の機能の見直しも重要です。


理学療法士・ピラティスインストラクター 辻川真悟


参考・引用文献


・Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis
Open Access J Sports Med. 2013; 4: 229–241.Published online 2013 Nov 13.

・Karrie L Hamstra-Wright1, Kellie C Huxel Bliven2, Curt Bay1
Correspondence to Dr Karrie L Hamstra-Wright, Department of Kinesiology and Nutrition, University of Illinois at Chicago, 901 W. Roosevelt Rd, PEB 337, MC 194, Chicago, IL 60608, USA; khamst1@uic.edu

・参考文献はほかにもいくつかありましたが、データが消えたため見つけ次第のせていきます。。。

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