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能町 みね子「快適からさらなる快適を求める二拠点生活」

能町 みね子(のうまち・みねこ)——文筆家・イラストレーター
1979年北海道生まれ。文筆業、イラストレーター。著書に『言葉尻とらえ隊』シリーズ、『私以外みんな不潔』、『結婚の奴』など。雑誌やウェブ連載の他、テレビやラジオにも多く出演。

 この原稿を依頼されるにあたり、提示されたテーマは「過去の選択と、今の私」でした。つまり現状に至るまでに起こった、人生における大きな選択、転機となる分岐点についてひとつお願いします、というわけです。
 中高年が自分の人生を決定づけた選択について語り出すとなると、だいたいその人が「何者か」になる前の話をすることになります。
 何者か分からない状態の自分が、何者かへの糸口を掴み始めた瞬間。
 不安定→安定へのドラスティックな変化。
 そういったものが、この手の話としてはもっともポピュラーであるように思います。私にもそんなふうに語れる選択はいくつか思いつきます。
 しかし、今回はそういうことではなく、ある程度安定を得てからの選択について語りたくなりました。物書きの仕事を始めて十年以上が経ち、時にはテレビやラジオなどのメディアから出演オファーを受け、プライベートでは一般的な結婚の形とはかけ離れているものの同居するパートナーを見つけ、客観的に見れば十分に生活が安定してからの、選択。四二歳での選択の話。

―『學鐙』2024年夏号 特集「私の原点、転換点」より―

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『學鐙』2024年夏号
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灯歌
岡野 大嗣(歌人)
特集
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小林 龍二(竹島水族館 館長)★
能町 みね子(文筆家・イラストレーター)★
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梅中 美緒(建築エスノグラファー)
全 卓樹(理論物理学者・随筆家)
髙宮 利行(慶應義塾大学名誉教授)
書評
渡辺 祐真(文筆家・書評家)
水上 文(文筆家 ・文芸批評家)
藤倉 恵一(文教大学付属図書館主任司書・図書分類法研究者)
渡辺 由佳里(エッセイスト・翻訳者・洋書レビューアー)
丸善出版刊行物書評
浜田 敬子(ジャーナリスト・ 元アエラ編集長・ 前Business Insider Japan統括編集長)

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