分数のできない大学生?

一頃、『分数ができない大学生』なる話題がセンセーショナルに報じられて『近頃の大学生は分数の計算もできない!ゆとり教育の弊害だ!』みたいなオオゲサな言われ方をされたこともありましたよね。

しかし大学生になって分数の計算ができない、というのはゆとり教育世代に限らず昔からあった話です


(そもそもこの本で本質的に批判されていたのは私立大学の経済学部などにおける入試のありかたであって分数のできない大学生のことではありません)

分数は小学校で習いますが、日本の場合、日常的に分数を用いることが少ないんですね。

割合を示すときに、1/2とか1/3とかは「何分の1」という表現は取りますが、せいぜい1/4ぐらいまで。


「5/6」だとか「3/8」という表現はまずしません。小数やパーセンテージに置き換えてしまうからです

ましてや、帯分数なんて使う人いないでしょう。

フェデリコ・フェリーニ監督の映画『8+1/2』なんて、日本人には馴染みが無いから(笑)。

日本の数を扱う習慣は10進数が基本で、1以下の数字は小数で示すのが普通ですが、欧米は結構分数を使います。

たとえば、1インチより小さい長さを示すときは、1/2インチ、さらに小さくするときはまた半分にして1/4刻みで表現します。ですから、3/8インチみたいな表現も普通にあるのです。

ヨーロッパのどこかの貨幣で、「6と1/4」みたいなのがありました。100を2でどんどん割り、50→25→12.5→6.25と刻んでいった結果です。

オランダでは2+1/2セントというコインが戦前に発行されていました。

このことは視力表記の違いにも現れます。英語では「視力1.0」に相当する人を「正常視力」の人と設定し、この視力を 20/20 (twenty-twenty) vision と呼びます。これは「視力1.0の人が20フィートの距離から認識出来るものを、同じ20フィートの距離で認識出来る」ということを意味しています。この原理で 20/40 vision は「視力1.0の人が40フィートの距離から認識出来るものを、20フィートの距離でしか認識できない」を意味し、日本で言う「視力0.5」に相当します。この逆に、20/10 vision は「視力2.0」になります。つまり、最初の20を後ろの数字で割ったものが日本の視力に相当するのです。たとえば、「あなたの視力は0.5ですね。」と言いたい場合は“You have 20/40 vision.”と言います。

先日、知り合いの英語文化圏の女の子(タイ人)と視力の話をしたときにワンハンドレッドといわれて、この人は視力が100もあるのか?と驚きましたが、要するに0・2ということなんですね。

いずれにしても日本では考えられません。

分数の足し算や引き算なんて、日常で使わないので、忘れてるんですね。

ゆとり教育が正しかったor間違っていたというのはここでは論じませんが、少なくとも「最近の大学生が分数の計算ができないから嘆かわしい」みたいな批判は見当違いだということは世間も弁えておくべきだと思います。

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