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連載企画ー夢ゼミ探究の旅ー【第五章】豊田庄吾さん

隠岐國学習センターnoteの連載企画―夢ゼミ探究の旅―。

今回この連載を始めるきっかけとなったのは、現在夢ゼミの責任者を担当している澤正輝さんの「夢ゼミともう一度出会い直したい」という思いから。連載が始まった詳しい経緯や担当者の思いなどはこちらのnoteをぜひお読みください。

第五回のゲストは、隠岐國学習センターのセンター長である豊田庄吾さん。

豊田庄吾さん
2009年秋、島根県海士町に移住し、島前高校魅力化プロジェクトに参画。 公立塾「隠岐國学習センター」を立ち上げ、現在、同センターのセンター長。夢ゼミの立ち上げに関わった一人で、澤同様、夢ゼミには人一倍思い入れがある。

それでは、学習センターで夢ゼミの責任者をしている澤さんと、センター長である豊田さんとの対談をお届けします。

「全員」を諦めない

澤:個々というよりは、全体を見渡してみて、今の夢ゼミは豊田さんからどう見えていますか?

豊田:実現できるかどうかはおいておいて、(夢ゼミに関わる)色々な人が共学共創していく、一緒に創っていくということができればいいんじゃないかなと思っています。今年のゴールデンウィークにリスタートしてから、生徒ひとり一人に寄り添う、個別化された学びを創っていこうと決めたけど、どれだけ全体の生徒がカバーできているのかは気になってはいる。生徒の声を聞いたりすると、総じていいんじゃないかなと思っているが。ただ、何をもっていい夢ゼミというのかという評価軸がないのは良くないと思う一方で、そもそも評価するものなのかとも思う。

澤:正直、豊田さんと夢ゼミとの距離感は簡単ではなかったなと思ってますが、そのあたりはどう考えてますか?

豊田:まずは、夢ゼミを担当している人を信じる、という部分と、夢ゼミというプログラムそのものを信じるという話があるよね。そうした、夢ゼミを継承していく側面と、もっと自分を設計段階だったり、ファシリテーターとしてとして使ってくれという、共創していきたい側面、の両面あるかな。

加えて、自分たちが学び続けることが本当に大事だと思っていて、去年とテーマが一緒だとしても、同じスライドで同じ内容の学びを作っていくことはイケてない思う。今までは、全体に対してファシリするときに、そこに参加している生徒の8割くらいに刺さる内容がつくれればいいかな、と思ってたところはあるんだよね。ただ、自分らしさを出して、残り2割をフォローすることをあきらめることは簡単だけど、今はやはり「全員に対して」にこだわりたい。だけどそれは自分だけの力では目指すことはできない。だからこそ、澤くん含め、今のスタッフとのベストミックスを今年はつくっていきたいと思っている。自分たちが少しでもいいものを作るという姿勢を見せたいなという思いはずっとあるかな。

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1年生の夢ゼミで前に立つ豊田さん。
レゴを使いながら「相互承認」というテーマで行われた。

人と関わりながら学んでいくこと

豊田:いい夢ゼミってなんだろう、という問いはずっとある。原点は、社会に出たときに社会人として自立して働いたり、人と関わりながら幸せに生きていける力をつけてほしいという思いがあった。夢ってどんどん変わっていくものだから、その夢を叶えることというよりは、その子が社会に出たときに自分の足でしっかりと立てるようにしたいという思いが根本にあるかな。

澤:あらためて、夢ゼミを通じてどんな体験ができるといいんだろうというのは問い直しています。ひと昔前と比べ、色んな機会が高校にも地域にも増え、更には世界中の機会にもアクセスできる状況になっている今、夢ゼミで準備すべき機会はなんだろう。

豊田:大人も子どもも学ぶ、そして人と関わりながら学ぶ、その2つが中心に置きたいキーワードかな。あえて今だからこそ、大人も子どもも一緒に学ぶということはあるかな。高校生の気づきだとか、素直さや行動力から大人が学んだりする、そういう場は作りたい。それと、人と関わりながら対話的に学んでいく。自分がやりたいことをアウトプットして人からのフィードバックを受けてやりたいことを磨いていくとか。

やはりできたら、地域に根差した生々しい課題に触れるとか、そういう実践の方がいいなと思ったりする。その上で、もっと今以上に失敗体験や、自分と向き合う苦しい経験もしてほしい。でもやっぱり人と関わる中で、学びの渦や変化が起きるとかがすごく重要なのかな。

澤:最近、伴走や探究についてあらためて整理しなおす中で、一番の本質は、どちらかがすでに知っていることを確認しあうことではなくて、やりとりを通してどちらも知らない何かを発見していくプロセスなんだろうなと思います。ともに変わっていく、それが日常的に起こる場をいかにつくっていくかという感じはしています。

豊田:そういう意味では問いだよね。問いを発した人も答えを知らない。

澤:今、トーキングスティックのスティックの代わりに問いを置き、それを起点に対話していく、というオンライン・トーキングサークルを実験的にやらせてもらっています。対話していくうちに、お互い、自分が知らないところにまでいける。それぞれの存在を肯定しつつ、ともに変わっていく、それが職業や年齢に関係なく起こっていく場こそ本質的だなと思っています。

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手前が豊田さん。学習センターのスタッフとの一枚。

次のステージにいくために、手放すべき常識

豊田:学びを探究すればするほど、今の社会と離れていく感覚がある。今の社会が変わり切れていないだけなんだけど、個に寄り添えば寄り添うほど、生徒が卒業した後やっていけるのか心配になってしまうところはあるかな。

澤:隠岐らしさ、というのを考えたときに「トリックスター」というのがあるかもと思い始めています。社会の常識とはちょっとずれてはいるけど、新しい生き方や在り方を提案している人を分析しながら、何がそうさせているのか、それをいかに学びに転換していけるのかという実験が始められている。その中でのひとつのキーワードは、”しなり続けているか”。波紋を投げかけられる人、と考えたときに、隠岐はトリックスターの島でもあるのかなと思います。

豊田:どのレイヤーで見るかにもよるよね。日本全体でみると、隠岐という島自体が日本にとってのトリックスターだと思いつつ、島の中に目を向けると、できるだけそれを発揮しない方がいいという同調圧力もまだまだある。その意味でいうと、メインストリームから外れてでも、今までの価値観とは違った幸せをつくっていく人たちが集っている島なのかもしれない。

澤:学習センターが難しい道を歩んでいるなと思うのは、ターゲットを絞らないというところじゃないかなと思っています。ひょっとしたら絞ったほうが成果は出やすいんですけど、そうではなく、総がかりで相手するという選択をし続けている。こだわり続けたいと思いつつ、それゆえの中途半端さを超えていきたいという思いは常にありますね。

豊田:ぱっと思い浮かぶのは僕らだけでやるということを手放すということ。学習センターの経営リソースは学習センターの中だけじゃない。学びのフィールドもそうだし、関わってくれる人もそうだし。そういう今までの常識や、この中でやらないといけないみたいな思い込みを後2つとか3つとか捨てたら結構できるんじゃないかなとは思っている。

澤:学習センターがいまもってしまっている常識を直感的に1つ、2つ捨てるとしたらなんだと思いますか?

豊田:大人が教える、評価する、という常識を手放すとかかな。ロジカルにはまだ説明できないけど。

澤:今でてきたものって、関係性が必ず”する関係”と”される関係”ですよね、ここを崩していく。

豊田:学習センターとしては、学校にお伺いを立てるみたいなところも手放したいよね。ラボ機能として突き抜けるとか。学びの常識だったら、学びはしんどいという考え方とかかな。本当の学びって、楽しいし、いつの間にか時間が経っているもの。

澤:学習センターというチームが「学習」について学んだり見直したりする時間をもっと増やしたいと思いました。チーム脳をアップデートしつづける意識と仕組みを整えたい。

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学習センターの土間にて。地域の”通り土間”として誰でも立ち寄ることができるスペースになっている。

高校3年間の中で、どこかでスイッチが入る場

澤:最後に、夢ゼミってどんな場であってほしいですか?

豊田:やっぱり3年間の中で、どこかで心にスイッチが入る場だといいな。その子の変容が起こる場であると嬉しい。いままでも、これからも、人が変わる瞬間、表情や目が変わり、心にスイッチが入る瞬間に関わっていきたい。

澤:そうすると、最高の夢ゼミの場というのは、色んな場所でスイッチがぱちん、ぱちんと入っていって、生徒も大人も関係なくお互いに影響しあって変わっていく、そんな場ということですね。夢ゼミの評価軸を、そこに置いてもいいかも。水をためるように、変容のつまみをちょっとずつ動かしていけたらいいですね。

豊田:相互作用というか、人に触れて互いにスイッチが入る場であってほしい。個別化を突き詰めていくと、1人で何でもできるじゃんってなるけど、それに対しては一石を投じたい。人と関わりながら、つながりながら学ぶ。それがやっぱり大切だと思うかな。その結果、変容が起こったりスイッチが入ったり新しい学びが生まれていくものだと思う


〇インタビュー後記〇
ー夢ゼミ探究の旅ー第五章、いかがだったでしょうか。自分たちが学び続ける姿勢、そして誰一人として置いていかない、そんな学習センターであり続けたいと思いました。次回のインタビューもお楽しみに。
                 隠岐國学習センターインターン 村上

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