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英語4技能について考える(1)

こんにちは。

今日から3回ほど、英検から離れて「英語4技能」について考えてみます。

<日本における英語4技能の歴史>

あらためてご説明するまでもないかもしれませんが、「英語4技能」とは、①読む(reading)、②書く(writing)聴く(listening)④話す(speaking)の4つの英語スキルのことです。

大学入試改革の一環として、2020年度より「大学入学共通テスト」が導入されます。この共通テストで「英語4技能を測るため」に「外部英語検定試験」を利用しようとして直前で取りやめになり教育現場を「混乱の渦」に陥れた、というニュースで出てきた、あの4技能です。

(1)日本の英語教育1.0(戦前〜1990年代初め)

この4技能のうち、日本の英語教育においては、永らく①読む(reading)と②書く(writing)が中心で行われてきたというのは周知のとおりです。

たとえば、私たちアラフィフ世代は、大学受験の時に『英単語ターゲット1900』を使った最初の世代ですが、ターゲットの前のベストセラー英単語帳は、名門・都立日比谷高校の故森一郎先生『試験に出る英単語』(通称「出る単」)でした。(私は参考書オタクなので、でる単も使ってました)。で、その森先生が、同じシリーズの『試験に出る英語』だか『英文法』だかで、「日本の英語入試問題は、陸士(陸軍士官学校)の入試から本質的に何も変わらない。」と喝破されていたはずです。戦前から変わらない入試英語って…。

ただ、私たちの世代(今のセンター試験が始まった90年代初頭)あたりから、確実に英作文(writing) が短くなるとともに出題の絶対数が減り、その一方で英文読解(reading)がどんどん長文化していったことは記憶されるべきでしょう。

つまり、「日本の英語教育1.0」の特徴は、

①読む(reading)と②書く(writing)を中心に推移したが、最後は、writingの比重が減り、①readingの比重が増えていた。

ということです。

(2)日本の英語教育2.0(1990年代中頃〜2020年)

この時期(その内の前半を私が受験業界に捧げた時期)は、長文化した①reading(読解)に③listening(リスニング)が本格導入された時期でした。センター試験の1つの目玉が、一斉リスニング・テストでしたが、今では当たり前になったこのリスニング、その昔は、トラブル続きで毎年大騒ぎしていたものです。

そして、そうした大学受験の流れで経済産業省が主導で、「就職時の評価に必須」というイメージを日本人に植えつけ、受験者を増やしたのがTOEIC。まさに、①読解力+③聴解力を大学受験時に鍛えきた(ハズの)大学生、さらには社会人にも「国際化」「グローバル社会」の中で生き抜く力をますますつけてもらうため、TOEICをドンドン受けさせる、という風潮ができ上がったのです。

にもかかわらず、日本人の英語力は低下する一方。教育心理学者・榎本博明の近著によれば、

「1995年から2008年の14年間、毎年一貫して英語の学力が低下していることが判明したのである。学力の低下の程度は、偏差値にすると7.4であるという。たとえば、2008年の偏差値50は、1995年の偏差値42.6に相当することになる。」『教育現場は困ってる―薄っぺらな大人をつくる実学志向』(平凡社新書)23~23頁

というショッキングな事実が紹介されています。これは中高生のはなし。

では、大学生はどうか。英語学者の鳥飼玖美子によれば、

「国立私立を問わず、どの大学でも、昨今の入学者は英語力が低い、と囁かれているだけでなく、補習授業をする大学も増えている。(中略)これは、少子化、大学入学定員の増加、大学進学率の上昇などによって「大学全入時代」となったことや、AO入試や推薦入試など筆記試験のない入試枠が増えたことによる全般的な傾向だが、英語の場合は、相当に深刻な状況である。語彙がないから英文を読めない、文法を知らないので書いた英文には主語や動詞がないなどの症状が珍しくない。」『英語教育の危機』(ちくま新書)18~19頁

本当はもう少し定量的な(数字の上がる)引用をしたかったのですが、日本人の英語力低下を証明する数字はどこにでも、いくらでも転がっているので、これくらいでよいでしょう。

まとめると、「日本の英語教育2.0」は、

「グローバル社会の中で生き抜く力」を煽り文句に、①reading(読解)と③listening(リスニング)を一生懸命やらせたが、結果的には、日本人の英語力を引き下げ続けた時期

ということになります。

そして、これから始まる「日本の英語教育3.0」は、私が考えるに日本の公教育における英語教育システムを根本から破壊し、英語を使う必要のある少数の人々と、その他大勢の英語を使う必要のない(あるいは使う仕事に就きたくても就けない)人々とに、制度的に二層化させる意図を持った改革(改悪)である、と言えます。

続きは、次回に。

今日もここまで読んで頂き、ありがとうございました!

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