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064.『まちで闘う方法論 自己成長なくして、地域再生なし』木下斉 著

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“ ―― 闘うとは別にまちの人と闘うということではなく、ある時は過去の常識と闘い、ある時は法律制度と闘い、ある時は既存組織の壁と闘い、ある時は事業と闘い、そして、常に心が折れそうになる自分と闘うことを指しています。 “

お金がない、無関心、旧態依然の組織…環境を嘆くだけでは始まらない。まずは自分から変わる必要がある。まちを経営するという観点で18年闘い続けてきた著者が、まちを変えるために必要な思考と、身に付けるべき7つの技術、そしてまちの活動に参加する段階から継続的な事業マネジャーになるまでの成長プロセスを解説する。


●はじめに

1998年、私は16歳の時に早稲田商店会による地域活性化活動に参加しました。
その時に「地域活性化」なるものに参加していると標榜する早稲田の学生は、私を入れても数人しかいませんでした。高校生なんて皆無。しかし現在は、実に驚くほど多くの10代、20代の若者たちが、全国各地の地域活性化に関わるようになっています。

本書は、地域で新たに挑戦する方々に向けて書いた本です。

私が地域活性化に取り組み始めた頃は、成功事例や地域政策に関する解説本はありました。しかし、地域活性化に取り組んでいる人が、どう活動を企画し、どう問題と向き合い、どう事業を作って飯をくっているのか、といったような情報は全くありませんでした。

そのため常に試行錯誤してきました。まち会社の経営に失敗したり、成功事例と持て囃されて浮かれたり、取り組みが補助金漬けになって衰退したり、と数多くの失敗を繰り返しました。
これまでを振り返り、18年前の自分に何を伝えるかを考えました。それは下記の3つです。

(1)どのような考え方を持って、地域で取り組めばよいか。
(2)どのような活動や事業を経験していけばよいか。
(3) どのような技術を習得すればよいか。

これに従い、本書は「思考」「実践」「技術」という3つのフレームワークに沿った構成になっています。成果を上げた事例だけでなく、失敗した事例も紹介しました。また、推薦図書も多く紹介しています。
全体に一貫しているのは、地域活性化とは「稼ぐこと」であり、地域活性化を牽引する人材というのは「地域を稼げるようにできる人材」であるということです。
一方で、そのような地域で「稼ぎ」を作り出す取り組みは、残念ながら未だ地域活性化のスタンダードからはかけ離れています。地域活性化を謳う取り組みのほとんどは税金を使い、地域に良さそうな非効率なことを繰り返し、誰も責任を持たない。結果、今も地域は衰退をしています。

江戸時代の後期、人口縮小で悩む北関東から東北などの600にも上る農村の経済と財政を再生した、二宮尊徳が残した言葉に「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」というものがあります。まさしく、現代の地域活性化にも必要なことです。我々は正しい道徳心を持ちつつ、併せて厳しい経済とも向き合って実践をしなくてはなりません。

しかし、地域で「稼ぐ」新たな事業を立ち上げる時には、時に地域の一部から反発を受けたり、仲間から裏切られることも出てきます。しかし、それでも自ら身銭を切って投資し、事業を通じて成果を上げなくてはならない、闘うべき時があります。

闘うとは別にまちの人と闘うということではなく、ある時は過去の常識と闘い、ある時は法律制度と闘い、ある時は既存組織の壁と闘い、ある時は事業と闘い、そして、常に心が折れそうになる自分と闘うことを指しています。

日々の闘いで折れず、自分を成長させながら、地域での取り組みを広げていく、着実な一歩一歩の積み上げしかありません。逆に言えば、そのように日々の積み上げによる自分の成長なくして、地域の再生などは不可能であると思っています。

だからこそ、適切な「まちで闘う方法論」が必要なのです。

一介の高校生がまちに飛び込み、地域での活動で奮闘し、そして事業に挑戦しながらも失敗し、それでも再び挑戦をする。そんな18年間のプロセスが、多少でも皆様のお役に立てば幸いです。


●書籍目次

はじめに

|第1章| 思考編

自分の中に常にもう一人の自分をおいて考える
「自分―仲間―その他」の3つのカテゴリの相互関係で考える

1.自分から始める時に必要な思考

- 1. 受け身にならない。常に対案を作る

提案する癖を身につける/思考の軸を作って意見を整理し、提案する/ひとまず提案してみる

- 2. みんなではなく、自分がどうしたいのか

「聞き上手」になりすぎていないか?/まちで稼ぐ学生たち

- 3. 準備病から脱却し、まずはやってみる

動き出すと、わかることが一気に増える/3年周期で新しい分野に挑戦する

- 4. 「悩むこと」と「考えること」は違う

問題が発生した時には、一歩引いて、クールに考える/考えているのか、悩んでいるのかを自認する/客観的な「正論」から意思決定する

2.グループで取り組む時に必要な思考

- 1. 「自分たちでやる」から、「人に任せる」へ

規模によってやり方を変えていく/自分のモノサシを捨てる/人の入れ替えを定期的に行う

- 2. 説得ではなく、結果で見せる

やってみなければ、誰もわからない/論より証拠。結果が一番の代弁者/案の段階で潰し合いをせず、結果で競う

- 3. 「ないもの」で諦めず「あるもの」で勝負する

「予算がない」は「知恵がない」/あるものでやれることを考える

3.革新的な事業に地域で取り組む時に必要な思考

- 1.いい人になることは二の次にする

批判されるのは良いこと/最初は理解されなくて当たり前/小さな成果を一刻も早く出す/「安定への甘え」と「メンバー間の隔たり」に注意

- 2. 再挑戦こそ本当の挑戦

挫折こそが大いなるチャンス/二度と地域に関わるものか!と思うのは普通のこと/反省を活かして再挑戦する

- 3. 稼ぐことと向き合う

地域で「稼ぐ仕組み」を生み出す/本当に必要なものは必ず事業になる/目の前にいる人にとって価値があるものをやろう


|第2章| 実践編

1.成長プロセスのイメージ

2.成長プロセスの基本ステップ

3.ステップ別解説

1 単発活動メンバー:自分のウリを持って取り組みに貢献しよう
2 単発活動マネージャー:面白い企画を立てて参加者を率いよう
3 継続活動メンバー:自己管理しながら要領よく動こう
4 継続活動マネージャー:変化にも対応できる継続力を養おう

計画を常に修正し続ける
継続することを目的にしない

5 単発事業メンバー:稼ぐための営業力を身につけよう

6 単発事業マネージャー:複数事業を展開し、新たな事業モデルを創り出そう

事業ポートフォリオを時間軸で考える
新しいビジネスモデルを生み出す

7 継続事業メンバー:事業の連鎖を生み、構造問題の解決を図ろう

構造問題を解決し、早く事業を立ち上げる
細かな分業はせず、共同作業が可能な環境を維持する
営業活動は常に継続する
プロジェクトの連鎖を生み出す

8 継続事業マネージャー:事業手法を体系化し、外とのネットワークを広げよう

自分のスタイルを確立する
外部とのネットワークを広げる
メンバーとの情報ギャップを埋める
権限移譲を行う
事業内容を整理し体系化する


|第3章| 技術編

1.基本的な技術を身につける


2.情報力 情報を集め、検証する

リアルで気づき、ネットで調べて、現場に反映
小さな疑問から、連鎖的に情報を収集していく

3.情報力 複眼的に分析する

問題の「全体像」をつかむ
事実に基づき、数字と向き合う

4.論理力 因果関係を整理する

「原因」は自ら発見しなければならない
因果関係の基本法則
構造問題を解決するロジカル・シンキング

5.論理力 複数の要素を構造化する

ツリーにして整理する
フローチャートで整理する

6.構想力 自分のビジョンを描く

個人の構想力が試される
曖昧な合意形成がもたらすもの
構想力に必要なのは「主観的な夢」
共感されるビジョンとは

7.構想力 絞った戦略を立てる

戦略─溝を埋めるシナリオ
積み上げ型戦略立案:小さな仮説→改善で目標に近づける
逆算型戦略立案:現在地から目標に近づくシナリオ

8.実現力 プロジェクトを効率的に管理する

「タスク」「分担」「期限」を決める
時には嫌われる役回りも必要

9.実現力 やる気を引き出し、良い結果を導く

モチベーションを高めることも技術
「報・連・相」は細切れ時間と自動化で対応する
ネット活用で円滑なプロジェクト・マネジメントを
チームの共有時間をしっかり取る

10.組織力 みんなで取り組むからこそ失敗する

みんなで「正確に」話すことは難しい
みんなで決めると間違える
集団浅慮に気をつけろ
マネジメントの責任はどこにあるか

11.営業力 対象を絞り逆算で開発する

地方にはピンホール・マーケティングが効く
絞り込むこと、組み合わせることが基本

12.数字力 経営に関わる数字を見分ける

損益計算の基本
地域で必要な会計の基礎知識
投資回収を意識した事業計画を組み立てる

おわりに


☟本書の詳細はこちら

『まちで闘う方法論 自己成長なくして、地域再生なし』木下斉 著

体 裁 四六・232頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1359-7
発行日 2016/05/15
装 丁 minna/長谷川哲士

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