見出し画像

ぼくらがクラウドファンディングを使う理由―12プロジェクトの舞台裏|【試し読み】

つながりができるからお金が集まる。お金を集めるからつながりができる。そんな、単なる資金集めではないクラウドファンディングという手法の魅力に関心が広がっています。

『ぼくらがクラウドファンディングを使う理由』は、日本最大のファンドレイジングサイト「JapanGiving」代表理事の佐藤大吾さんを監修に迎え、スタートアップや震災復興、福祉、医療、スポーツ、アート、政治、研究、地域振興の12分野の成功者インタビューで、“コミュニティづくりと資金調達”というクラウドファンディング成功の両輪を解読した一冊。次なる挑戦者の背中を押すノウハウやエールが満載です。

この記事では、本書の「まえがき」を全文公開します。

Amazon|https://amzn.to/2q3M8HX


機が熟したら。タイミングさえ合えば。近い将来に。
いつか実現したいという夢をだれもが胸に抱いているだろう。
それは起業して、自分の創り出したサービスを社会に根づかせたいということかもしれないし、アフリカの子どもに安価な医療サービスを届けて、彼らの命を救いたいということかもしれない。

しかし、多くの人にとって、機は熟さないし、タイミングも合わなければ、近い将来は遠い将来に早変わりする。なぜだろうか? 理由の一つとして口々に言われるのは、そんなお金はないから、である。

確かに、金融機関からスタートアップの資金を獲得することは狭き門だし、審査の俎上に乗ることさえ難しい場合もある。
そんなにやりたいなら親・親族、友人・知人に頭を下げて頼れという声もあろうが、身の回りにパトロンになってくれるほどのお金持ちがいるかどうかは運次第、というところもある。

自分の夢を応援してくれそうな人を探し出し、その人に投資してくれないかとお願いしてみる、そんな風に夢のスタートラインに立つことすら、簡単でなかったのだ。……これまでは。

時は流れて、事情は変わりつつある。クラウドファンディングという名の資金調達方法が世の中に根づき始めたからだ。

クラウドファンディングとは、「群衆=大勢の人々」という意味のクラウド(Crowd)と、「基金」という意味のファンド(Fund)を合わせて造られた言葉だ。
つまり、金融機関や親・兄弟など特定の機関や個人に対してではなく、不特定多数の人々にあなたのやりたいことを宣言して、賛同・共感してくれた複数の人から小口の資金を集めて、目標金額まで調達する方法だ。
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSが世の中に浸透したことで、やりたいことの宣言文を不特定多数の人の目に触れさせることはずっと簡単になった。
それに伴い、クラウドファンディングも身近な資金調達方法として育ってきたのだ。

2016年現在、やりたいことの宣言は、クラウドファンディング・サイトという専用サイトを利用することでだれでもできるようになっている。
夢のスタートラインに立つために越えなければならないハードルは、登録にかかるちょっとした時間だけだ。

日本の新聞記事にクラウドファンディングという言葉が登場し始めたのは2011年頃で、もう5年も前のことだ。
この本を手に取ってくださった皆さんも、クラウドファンディングという言葉を、テレビや新聞記事、雑誌の特集などで何度も見かけたことがあるだろう。クラウドファンディング・サイトを訪れたことがあるという人も多いにちがいない。

しかし、クラウドファンディングでの資金調達に踏み切れないという人や団体はいまだに少なくない。
やりたいことのスタートラインに立つことはずいぶんと簡単になったかのように見えるのに、心理的なハードルは根強く残っている。それは、なぜだろうか?

クラウドファンディング・サイトで調達を宣言したところで、あとは自動的に資金が集まるなんてことはありえないと、簡単に思い至るからかもしれない。
やりたいことの宣言文がSNSで拡散されるとは言っても、芸能人やプロスポーツ選手でない人のつぶやきが、即座に何百、何千リツイートもされるなんてことは期待できない。
金融機関やパトロンにお願いしていたときと同じように、あなたの紡ぐメッセージを、多くの人の共感が得られるくらい説得的で、魅力的なものに仕立てる必要がある。
それは時として、一つの機関や個人から資金を調達することよりもずっと大変な作業かもしれないのだ。

しかし、予想される苦労に反して、この5年の間にクラウドファンディングで資金調達に挑戦する人の数は増え、クラウドファンディングの専用サイトも把握できないくらい登場し、調達金額の最高記録は何度も塗り替えられた。
今では、途上国支援や医療・社会福祉、地域振興から芸術・スポーツ、ものづくり、起業、政治、学術研究に至るさまざまな分野で活用されている。
それはきっと、クラウドファンディングのように、不特定多数の人の応援の声を受けて資金調達するからこそ獲得できるメリットがあるからだ。

本書の目的は、さまざまな分野でクラウドファンディングに挑戦し、成功させた12のプロジェクト・18名の企画者へのインタビューを通して、そのメリットの全貌を明らかにすることだ。

「クラウドファンディングは単なるお金集めではない」とは、今回のインタビューのなかで、頻繁に登場した言葉だ。
彼らは、「数ある資金調達方法のなかから、なぜ、クラウドファンディングを選んだのか?」から「苦労した点」「戸惑った点」、そして、「工夫した点」「目標達成の秘訣」「実際にやってみて感じるメリット・デメリット」まで余すところなく語ってくれている。
自ら挑戦して成功した人だからこそ掴める感覚を、本書を読むことで、読者の皆さんにも追体験してもらえるだろう。
そして、「もしもクラウドファンディングに挑戦したらどのような未来が待っているか」を正確にイメージできれば、やりたいことを実現するために、あなたもクラウドファンディングを使うべきかどうかをまっとうに判断できるはずだ。

クラウドファンディングの基礎知識

本章に入る前に、基礎知識として、日本国内の代表的なクラウドファンディング・サイトとその分類を紹介しておく。

まず、国内のクラウドファンディング・サイトには、JapanGivingREADYFORCAMPFIREMotionGalleryMakuakeShootingStarGREEN FUNDING by T-SITEFAAVOなどがある。

これらのサイトの内、JapanGivingは「寄付型クラウドファンディング・サイト」に属し、それ以外のサイトは「購入型クラウドファンディング・サイト」に属すると言われる。

二つの違いは何だろうか? 寄付型の特徴は、「やりたいこと」への支援が、税制上の寄付になることだ。
支援者は年度末に確定申告することで、所得控除や税額控除など寄付税制上の優遇を受けることができる。

購入型の特徴は、「やりたいこと」への支援が、“リターン”と呼ばれる支援へのお返しと支援金額を交換する商取引に該当することだ。
リターンは、たとえば、制作された映画の先行チケットであったり、開発されたアプリやスマートウォッチであったりする。
リターンは、支払い後数カ月程経って支援者のもとに届けられることがほとんどなので、購入型クラウドファンディング・サイトでの支援は、言わば、リターンとなる商品を予約注文していることに近い。

ほかにも、「投資型クラウドファンディング・サイト」という分類もあるが、本書では扱わない。本書で、「クラウドファンディング・サイト」と呼ぶときは寄付型か購入型のどちらかを指している。

本書の読み方

本書は、大きく3つのパートに分かれている。

1章では、佐藤大吾が、五つの質問に答える。佐藤は、日本で唯一、寄付型クラウドファンディング・サイトと購入型の両方を運営する人物だ。
「両サイトの設立動機」から「どんな人が向いているか」「成功の秘訣」まで、佐藤だからこそ答えられる質問を揃えた。
この章を読むことで、クラウドファンディングについてのおおよその肌感覚を掴んでもらえるはずだ。

2章では、山本純子と佐々木周作が、インタビューを通して、18名の企画者による12プロジェクトの舞台裏に迫る。
「なぜ、クラウドファンディングに挑戦したのか?」から「成功の秘訣」「実際にやってみたからこそわかるメリット・デメリット」まで、成功者に憑依するような感覚で追体験してもらえるだろう。

3章では、山本と佐々木がそれぞれの立場からクラウドファンディングを分析する。
日本のクラウドファンディングの創成期から多くの事例を観察してきた山本は、5年間の歩みという観点から2章の事例を総括している。
行動経済学という分野で、なぜ人は寄付をするのか、を研究している佐々木は、なぜ人はクラウドファンディングで支援するのか、を行動経済学の考え方に照らし合わせながら読み解いている。
これらは、クラウドファンディングについて自分なりの考えを整理するときに参考にしてもらえるだろう。

佐藤大吾・山本純子・佐々木周作

▼ 続きは本書で ▼

ぼくらがクラウドファンディングを使う理由

12プロジェクトの舞台裏

つながりができるからお金が集まる、お金を集めるからつながりができる。スタートアップや震災復興、福祉、医療、スポーツ、アート、政治、研究、地域振興と12分野の成功者インタビューで、“コミュニティづくりと資金調達”というクラウドファンディング成功の両輪を解読。次なる挑戦者の背中を押すノウハウやエール満載!

▼ Amazon


いただいたサポートは、当社の出版活動のために大切に使わせていただきます。