見出し画像

8.キャリア ローリング・ストーンズ

学芸出版社営業部の名物社員・藤原が、書店での何気ないやり取りを手がかりに、自らのロック遍歴にまつわる雑感をつづります。

彼女が管理している棚はいつ行っても綺麗だし、新刊の欠本調査を依頼するとFAXで注文してくれたり、積極的に本を売ろうとしていることが分かる。

たまたま彼女のキャリアの話になった。
「私の入社当時はWindows95が大ヒットしていた時で、本がものすごく売れていました。今では考えられないくらい理工書の売り上げがあった頃です。」
「そんな話をすると年齢がバレるよ。」
「隠したってしかたがないですし・・・」
と彼女の書店キャリアは長い。
多くの書店で長いキャリアを持った女性が活躍している。彼女たちのキャリアが書店の現場を支えていると言っても過言ではない。男はキャリアを積むと管理職然としてしまって面白くない。

この店にはもう一人店を支えているアルバイトくんがいる。それはお客さんから本の在庫を尋ねられると、一発で棚から本を抜き出す達人だ。「やるねぇ。」と褒めると「そうですか?」とあっさり言われてしまった。書店員としてあたりまえのことだからか。

STICKY FINGERS/THE ROLLING STONES(1971)

1962年のデビューから50年以上のキャリアを持ち、現在でも活躍中の彼らには、そのキャリアを持ち続けるだけの染みついたノウハウがあるのだと思う。
1970年に発売した「スティッキー・フィンガーズ」は僕の青春を語る時、欠かすべからざるアルバムである。ロック史を飾る名盤と言える。
しかし彼らがそこに留まることなく時代の流れのなかで名曲を生み続けられたのは、経験という数値化も文字化も出来ないエモーションを長年保持する力があったからだと思う。

-------------

-------------

▼前回の記事

▼こちらの連載もあわせてどうぞ

書店に風は吹いているか

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。


いただいたサポートは、当社の出版活動のために大切に使わせていただきます。