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変らなかったものは?

 書店の経営が悪化しつつあった頃、「売れる書店はこうだ」を書いた。巨大書店が全国に乱立し始め、人員整理によるコスト削減が乱暴に行われ、POSレジが当然のようになりつつあった時代である。

 それから20年近くが経過した。

 その間に廃業した書店の数はどれくらいになるのだろう。売上げは激減した。生き残った書店は「売れる書店」だったはずである。また売れないがコスト削減で生き残った書店もあっただろう。社員数は大幅に減り、現場で働く多くの書店員がアルバイト・パートになった。

 中心市街地から書店が消え、多くは郊外やショッピングモールで商いをしている。それも500坪を越える大規模店である。車を使わなければ書店に行けない人が増えた。その事情は僕も同じである。この20年で文庫や新書など廉価な商品が増えた。書店が厳しければ出版社も厳しい。低コストで作れる商品を大量に書店に送り込んだ。1冊の本の重みは読者にとっては変らないものだが、出版社や書店は1冊の本の重さを感じなくなった。たくさん売らなければ利益が上がらないからだ。ハリーポッターや村上春樹騒ぎがその現象を物語っている。早朝から街頭で売らなければならない本の意味が僕には分からない。

 この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。

 なぜこんなにも本を売る環境だけが変ってしまったんだろう。

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