#29|家具職人さんが来てくれた。(その2)
こうして旭川チームの皆さんが、要望通りの家具を寸分たがわず実現してくれました。当日はその家具のこともいろいろ聞かせてもらえました。
ウレタン塗装100%艶消しの威力
家具が搬入されてきて(#19)スタッフが驚いたのは何と言っても、その自然な木地からは想像できない「つるっつるの仕上げ」です。
ウレタン塗装100%艶消しなるものだそうで。まったくテカらず、なのにつるっつるです。インクがちょっとついても消しゴムでささっと消せる! というすごさ。
近藤さんいわく、塗料の技術改良が進んで今では120%、150%とかの艶消しもあるそう(ありえない名前になってますが)。このウレタン塗料による仕上げは、きちっとした塗装の設備がないと綺麗に仕上がらず、家具産地では、旭川と飛騨高山が得意としているらしいです。
隠さない仕上げの難しさ
そして面白かったのは、シンプルに見えるほど仕上げが難しい、という話。
シナ合板は通常、小口に突板シートを貼るなどして「隠せる」のですが、今回は全部丸出し。
芯材の小口を敢えて見せている
「敢えて継ぎ接ぎされた芯材断面を意匠的に扱う」という、松本さんのデザイン。たしかに色んな木目の表情が面白いんです。シナ合板の表面の明るさが程よく緩和されて本棚などの構造用合板の風合いと馴染んでます。
とはいえこれ、一見工程が減って楽なように思えますが、木は自然素材なので一つひとつの品質はばらばら、中には切った後に木目がぼろぼろっとこぼれてしまう「節」が出てくることも。そうした木の悪い表情が表に出ないよう、素材を切り出した後の組み立てにも注意を払う。さらに小口の塗装も、芯材の板目方向によって塗料の浸み込み方が微妙に変わってきて、均質に仕上げるため一つひとつ調整・確認が必要だったそうです。無垢材には無垢材ならではの難しさ、合板には合板ならではの難しさがあるんですね~。
編集が装丁のデザイナーさんとのやりとりで感じる、引き算の面白さ、難しさと通じる部分かも・・・(こじつけ)。
普段は見ない「使用後の家具の姿」
家具職人の仕事は普段、納品したら終わり、が一般的だそうで、「実際に使われている現場を目にすることはめったにない」と近藤さん。すでにあらゆるもので埋め尽くされた社内、その雑多さを新鮮そうに眺めておられました。
レポートでは「ちょっときつく見えていた」という(笑)赤いカーペットにも、実際には毛足が長くて絨毯のように風合いや表情があって、写真で見るよりも割と落ち着いた印象で良かった!とのこと(そうそう、そうなんです~)。
それから、本来は机の前についているクリップライト取り付け用の木製バーが、ほとんどの社員の「ディスプレイ棚」になっていることを面白がってくれました。(むしろライト取り付け用だったんですね)
ディスプレイ棚と化した照明クリップ用の木製バー
最後に、これから大切に使っていくために注意することはなんですか? と訊くと、「日焼けに注意!」だそうです。机の上にばらばらとものを置いていると、すぐに日に焼ける場所とそうでない場所で色が変わってしまうそう。固定の位置に置かずに適当に動かすと大丈夫だそうですよ(→スタッフの皆さん)。
旭川への勝手な親近感
と言うわけで、スタッフも存分に楽しませていただいたオープンオフィス。
レポート担当としては、何より嬉しかったのがお二人が日々の更新を旭川で見てくださっていて、わざわざ京都に足を運んでくれたことでした。
改修レポートが、現場の状況や納まった様子をしっかり届けられていて(これは圧倒的にみささぎ・松本さんのおかげですが)、さらにこうして完成を見届けていただくきっかけにもなり。試行錯誤で続けてきた発信も一方通行ではなかったと、とても励まされ。こうしてレポートを書くことで、ワカサさんのHPの工房写真を覗いて、「おおここが目の前の家具がつくられていた工房の道具!職人さん!」と様子を知れたり。どんどん家具が可愛く思える良いサイクルです。
オープンオフィス後も、「見学会で実際に自分たちの目で確認して、ようやく私たちの仕事が無事に終わったのだと、ほっとしています」とメールをくれた近藤さん。ありがとうございます。大事に使います。
普段は工場で黙々と家具づくりに没頭している職人の大柿さんからも、「実際はどう納まってるのか、どのような方に使っていただいているのか、使い心地は大丈夫なのか?など、日々思うことがあり、実際に現地に行って直接お話しできたことが、すごく嬉しかったです」とのコメントをもらい、やっぱりやってよかったな~~と大満足です。
普段は職人ばりに黙々と原稿眺める仕事なので、スタッフ皆、慣れないイベントに手こずりましたが、弊社社長や編集長井口はじめスタッフ一同、こうして関係者の皆さんに感謝の気持ちを直接お伝えできたことがほんとうに嬉しいです。旭川が、もはや見知らぬ土地ではなく恩人の土地になりました。
京都と旭川(と大阪)の思わぬつながりをつくれたこの機会が、皆さんそれぞれのこれからにつながるとさらに嬉しいです。近藤さん、大柿さん、秋友さん、そしてお会いはできていませんが旭川の若狭社長、鳥羽山さんにもこの場を借りて御礼を。本当にありがとうございました!
秋友さんのくれたお花がカーペットとベストマッチ
(岩切)
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