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飲み屋のサービス

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

飲み屋では足繁く通う客、つまり常連さんとめったに来ない客にはサービスの差がある。
理屈としては誰もが理解できるサービスの差。しかし客とは都合のいいもので、常連客と自分は同じサービスを受けられると思っているし、同じ料金で飲んでいるのだから同一サービスは当然だと思っている。

しかしこれが違うんだな、コレが。飲み屋の例をよくよく考えて欲しい。
女将はすべての客に対してにこにこしているが、常連と話をしている時の笑顔と、めったに来ない客と話をしている時の笑顔のニュアンスが違うことを感じるはずだ。飲み屋における女将の態度はそうあるべきものなのだ。

常連の立場から言うと、めったに来ない奴へのサービスといつも来ている自分へのサービスが同等などとはあり得ないし、特別であることに意味があるからこそ店に足を運ぶのである。要するに、金を沢山使うか、使わないかでサービスの差が出るのは当たり前なのだ。

○月○日に注文した本がまだ入らないと書店さんから電話がかかってくる。注文して約1週間。この書店の場合、1週間はきついかもと思いつつ、「ああ、チョット時間がかかってますね。もう少しお待ちいただいて、それでも尚、入荷しない場合は再度お電話いただけますか?」と答えている。

この場合再度電話が掛かってくることはめったにない。無事到着したのだとホッとする。取次店の書店へのサービスにも先ほどの飲み屋の話のような差がある。客注品の入荷時間だって均一ではないのだ。

僕は朝、コンビニのカウンターに立つだけでいつも買っているタバコをレジの子が持ってくる。会話は「ありがとう」だけ。他の奴らと違うサービスを獲得するまでには長い時間を要したが。

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