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今どきの買い物

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

先日ネットで話題になった本の注文が某ネット書店から殺到した。巷で話題の1冊というやつである。で・・・、書店からも注文が来るのかと思ったら思ったほどではなかった。ネットで話題の本ってやつはネットでしか売れない、という実感だった。というより話題はネットで作られている。だからネット書店から注文が来るのだ。

以前にも同じ経験をしたことがある。ネット情報を中心に生活している人は、書店には足を運ばないのだなぁと。ちょっと信じられなかった。その本はすぐに品切れとなり重版したのだが、その後パッタリと注文が来なくなった。

何でもすぐ手に入るネット書店であろうが、品切れ重版中ではすぐには手に入らない。僕は、読者は重版が出来るまで待ってくれると思ったが・・・。そうではなかった。話題になる→ネットで注文する→3日くらいで手に入る、というのが購入行動のようである。

この3日ぐらいで手に入る、という部分が3週間後となると買うのを止める。欲しければ待つ、これがない。何と性急なことなのだろう、と僕は思ったのだが、今や物を買う行為というものは、今欲しいものが今ないと、一挙にいらないものに変化するということなのだろう。こういう購買衝動を持つ人は、欲しいものがあってもネットで買えなければ買わない。ネットで紹介されていない飲食店には怪しくて入れない。ネットで評判なら食べてみて、まずいと思っても自分の味覚を疑うんだろうな。何だか社会全体が怪しくなりつつあると、この話題の本のことで思ったのである。

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