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冬の朝、しんどすぎ。缶コーヒーが美味しい。仕事はだるい。

朝目を覚ました瞬間、布団からギリギリはみでた足元の感覚が脳みそに伝う。寝返りで布団がずれたんだろう。最悪。続いて、ジャンジャラ〜♪ジャンジャラジャ〜ン♪。スマホのアラーム。ああ、世界の終わりだ。

朝に背を向けて再び目をつむるが、昨日の私がそれを見越して阻止する。寝たままの姿勢ではギリギリ届かないところになんでスマホを置いたんだろう。昨日の私、狡猾すぎる。

「う”〜〜〜〜〜」と朝一番の声が肺から喉へ雑に漏れ出る。せーーーーーのっっと一気に布団を跳ね上げ、硬い床に着地する。ベッドという完全安全地帯からの脱出に必要なエネルギーは半端ではない。多分走り幅跳びの踏切くらいのエネルギー消費があると思う。とにかく冬は起きるだけで割と偉い。じゃないとやってられない。

ーーーー午前8時30分、いつも乗る電車の30分前に駅のホームのベンチに座る。自動販売機で温かい缶コーヒーを買い、バッグから文庫本を取り出す。バッグには大抵3冊くらいは本が入っている。10時から仕事だ。

今日はアガサ・クリスティーの「春にして気を離れ」という小説を読み始めた。本を読み進めていると冬の外気に晒された手が悲鳴をあげるので、ここで温かい缶コーヒーを手に持つ。すぐに飲んでしまうとカイロの役割を果たさないのでちょっとずつ飲んでいく。”あたたかい”の缶コーヒーは期待通りにあたたかいし、美味しい。当たり前体操すぎる。寒い朝、文庫本、電車の出発音、そしてあたたかい缶コーヒー。

一日の始まり方をあえてエモく仕上げているつもりなんだけど、実際のところわざわざ早く家を出て寒いところで手を震わせながら本と缶コーヒーを交互に持ち替えている。アホだ。

先月、職場のチーム内での成績がトップだった。先月の成績の2倍の成績を取り月間目標達成率が会社設立史上歴代でトップだったらしい。一度は成績が振るわずクビにされそうにもなったが、成績が伸びた途端手のひらを返してみんなニコニコ話しかけてくるし褒めてきた。お前もお前もお前もとても気持ち悪い。むしろクビになった方が楽だったか?とも思えた。

なんでこんなバイト続けてるんだろ。

成績が伸びたのでたくさん褒められたけれど、全員信用ならないのでわざとらしくヘラヘラ笑いながら「ありがとうございますウ〜」と頭を下げた。これくらいしとけば良い子にみられるし、結果を出せば誰も文句を言ってこない。ここはそういう職場だし、バイトなのでいつでも辞められる。いつでも逃げられるから続けている。

次の日、出勤すると表彰されたので何がもらえるんだろうと思ったら渡されたのは数百円のクーポン券だった。嘘だろ、薄めの文庫本も買えない。結構頑張ったのに。まあ、最初から期待してなかったのでいいんだけど。

冬の朝はしんどすぎだし、缶コーヒーは美味しいし、仕事はだるい。でも今日もしっかり生きた。金もちょっと稼いだ。趣味を楽しめた。多分、それだけで十分なんだろう。





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