今日もあんまり頑張れなかった。
朝目が覚めると、後頭部のあたりがズーンと重い。瞼を上げようとしても100kgくらいの重力がかかっていて開けられず、少し身体を起こすとカーテンの隙間から漏れる日の光で眼球が串刺しになった。ありえんほど眠い。
ここ3日間くらい本当に調子が悪い。今日コールセンターのバイトを早退した。パソコンの画面を見ていると頭が痛く息が苦しかったからだ。週3日か4日しか働いてないのに、それだけでとても疲れる。なんでこんなに疲れやすいんだろう。いつも頑張れてないけど、今日もあんまり頑張れなかった。
昔から季節の変わり目には弱い。季節の変わり目は年に4回あるけれど、4回のうちだいたい2回は体調が悪くなる。環境の変化に即座に適応できない体をしているのかもしれない。昨日バイトを早退してから3時間くらい寝たら頭痛があまりしなくなっていたのでなんだかよく分からない罪悪感に駆られて散歩にでかけた。
いつもランニングをしているコースとは真逆の道。私の家の近所には川があるのでそこをひたすら真っ直ぐに下っていった。川のほとりを歩きながらワイヤレスイヤフォンを耳につけた。
最近ハマっているヨルシカの曲をランダムに再生する。「嘘月」という曲が流れてきた。歌詞をふんふんと口ずさんでいるとなぜだか涙が出てきた。寒い。薄い上着一枚じゃ足りなかったな。
しばらくマスクをびしょびしょにしながら川のほとりを歩いていると、
「ぎゃー!!つめたーい!ぎゃはぎゃはぎゃは」
「うえーーい!ぎゃはぎゃはぎゃは」という声が聞こえてきた。
声の方向に視線をやると、男女二人がびしょびしょになりながら水をかけあっている。しかも割と出かける用の綺麗な服装で。下流で駅が近いのもありめちゃくちゃ目立っている。現在20時。あまりにも時間と場所を選ばず楽しんでいる2人。ばしゃばしゃ。ぎゃはぎゃは。黒の影が笑い声を上げながら右に左に動いている。
「ぎゃはぎゃは。どうすんの着替えないよ!」
「いいよ、びしょ濡れで帰ろうよ。」
近づいてくる2つの影を街灯が照らす。眩しいくらいの笑顔だった。
涙でマスクがびしょびしょだな、なんて思ってたら全身びしょびしょの人間が突然目の前に現れた。
「ロックだな。」と二人に聞こえないくらいの小さな声でつぶやいた。
少し元気が出た。
ありがとう、びしょびしょカップル。カップルかは知らないけど。ありがとう。
しばらく歩き続けていると、スマホのバイブレーションが鳴った。ツイッターにDMが届いていた。いつも仲良くしている人からだ。
「りょうすけさんが泣くと私も悲しい。毎日頑張らなくていいんだよ。」
視界がぼやけた。
顔を少しだけ上げて、夜空を見ながら帰った。
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