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【外苑前野球ジム】動作解析プランから紐解く投球動作~ステップ脚による回転運動への移行~

前回までの2回で軸脚による体重移動について解説致しました。

投球動作とは、

並進運動 + 回転運動 

によって成り立っています。

また、ボールをリリースする際は、回転運動の最中です。
そのため、投球動作において回転運動は非常に重要な役割を持ちます。

今回はこの回転運動とステップ脚の関係に着目してアセスメントしていきます。

お客様カルテ

対象:30代 軟式
お悩み:球速アップ

ウォーミングアップを行い、現段階の投球を見るために3球投じてもらいました。
その結果の一部が以下になります。

Before

ステップ脚着地時点
アセスメント前のラプソードデータ

ステップ脚は、並進運動のブレーキを行い、回転運動を効率よく遂行させる役割をもちます。

並進運動にブレーキをかけるために、ステップ脚は着地時に、足関節、膝関節が固定、もしくは伸展されることが望ましいとされています。¹⁾²⁾³⁾⁴⁾

逆に、ステップ脚が着地以後も、足関節が背屈、膝関節が屈曲運動が継続されてしまうと、並進運動にブレーキをかけることができず、回転運動がスムーズに行えなくなります。

これがいわゆる「膝崩れ」といわれる現象です。

では、どのようにこの「膝崩れ」を防ぐかというと、、、

地面を強く踏む

地面を強く踏み、大きな地面反力を得ることで、屈曲動作にブレーキがかかり並進運動にブレーキをかけることができます。

また、地面反力の大きさは、球速に影響を与える手関節の速度と正の相関関係にあると報告されています。⁵⁾

しかし、力が作用している方向(並進運動の向き)と逆向きに力を及ぼさないとブレーキはかかりません。

そのため、地面反力はただ大きな力を生み出すのではなく、投球方向とは逆向きに大きな力に発生させなくてはいけません。

この選手の場合は、踵で接地しその後つま先が接地する二段階のような接地になっていました。

そのため、ステップ脚を接地してから膝関節の位置が前に出てしまう傾向がありました。

ステップ脚膝関節のY軸成分

図の赤の時点がステップ脚着地時点、青の時点がボールリリース時点です。

ステップ脚が着地した時点で1.45mの位置にあったのが、リリース時には1.666mの位置になっており、約20㎝も前方に移動しています。

そのため、ステップ脚によりブレーキできず、並進運動が継続されていることが問題でした。

アセスメント内容

以上の問題点を解決するために、この選手に対しては以下のことを実施しました。

フロントランジ

フロントランジでは、直立肢位からステップ脚を前方に踏み出し、足裏全体による接地を行いました。
足裏全体による接地の感覚を習得した後、強く接地し踏んだ勢いで(大きな地面反力によって)踏み込み脚が立位姿勢の位置に戻るように行いました。

After

以下がアセスメント後の結果の一部になります。

アセスメント後のステップ脚膝関節のY軸成分

アセスメント後のステップ脚膝関節は、ステップ脚接地時に1.523mでボールリリース時で1.62mと約10㎝の前方変位をしていました。

アセスメントの前後で比較すると以下のように変化していました。

膝関節前方変位距離 : 約20㎝ → 約10

アセスメントの前後で約10㎝の変位を減少させることができました。

アセスメント後のラプソードデータ

このような身体活動の変化によって、球速は、

アセスメント前の最高球速: 118.7 ㎞/h
アセスメント後の最高球速: 131.4 ㎞/h

と 12.7 ㎞/h も上昇しました。

このように、筋肉量など身体機能に変化がなくても動作の改善で球速は改善されます!

皆さんもぜひステップ脚を強く踏んでみてください!

参考文献

1)高橋佳三, 阿江通良, 藤井範久, 島田一志, 川村卓, & 小池関也. (2005). 球速の異なる野球投手の動作のキネマティクス的比較. バイオメカニクス研究, 9(2), 36-52.
2)神事努, 望月知徳, & 湯浅景元. (2001). 野球のピッチング動作における踏み出し脚の運動がボール初速度に与える影響. 中京大学体育学論叢, 43(1), 23-29.
3)Kageyama, M., Sugiyama, T., Takai, Y., Kanehisa, H., & Maeda, A. (2014). Kinematic and kinetic profiles of trunk and lower limbs during baseball pitching in collegiate pitchers. Journal of sports science & medicine, 13(4), 742.
4)伊藤博一, & 渡會公治. (2014). 投法別にみた加速期における踏込脚の膝関節運動. スポーツパフォーマンス研究, 6, 253-262.
5)MacWilliams, B. A., Choi, T., Perezous, M. K., Chao, E. Y., & McFarland, E. G. (1998). Characteristic ground-reaction forces in baseball pitching. The American journal of sports medicine, 26(1), 66-71.

このような動作解析を受けてみたいという方はぜひ上記よりお申し込みください!お問い合わせもお気軽にご連絡ください。

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