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【ガイブンキョウク】第107回 ユーリー・マムレーエフ『穴持たずども』読書会(24/8/22)


<課題本> ユーリー・マムレーエフ『穴持たずども』(松下隆志訳、白水社)

<開催日時> 2024年8月22日(木)19:30~21:00

<開催地> 本のあるところ ajiro(福岡市中央区天神3丁目6-8 天神ミツヤマビル1B) ※オンライン(Zoom)での参加も可能です

<ゲスト> 松下隆志さん(『穴持たずども』訳者)
1984年、大阪府生まれ。専門は現代ロシア文学・文化。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、岩手大学准教授。著書に『ロシア文学の怪物たち』、『ナショナルな欲望のゆくえ ソ連後のロシア文学を読み解く』(日本ロシア文学会賞受賞)、訳書にソローキン『吹雪』『親衛隊士の日』、『青い脂』(共訳)、ザミャーチン『われら』、マムレーエフ『穴持たずども』など。

<参加条件> 『穴持たずども』を読了してくること

<参加費>  1000円

<参加申込み(会場参加/オンライン参加)>

『穴持たずども』(ユーリー・マムレーエフ、白水社)

舞台は1960年代のモスクワ郊外。殺人を重ねながら魂や死、彼岸の世界を追求する主人公フョードル・ソンノフ。彼がねぐらとするレベジノエ村の共同住宅には、世界を不条理で満たさなければ気がすまない異常性癖をもつ妹クラーワと、フォミチェフ家の人々――父のコーリャ、日がなごみ溜めを漁る長女リーダ、快楽の産物として子どもが生じることが許せない婿パーシャ、自らの疥癬を食す長男ペーチャ、現実を「見てはいない」次女ミーラ――が住まっている。彼らに「蒙昧主義」を見いだし、自らの思想とのジンテーゼをはかる「形而上派」の面々がここに合流する。グノーシス的神秘思想の持ち主である「形而上的娼婦」アンナを中心に、彼らは「現実」を超越することを志向しながらそれぞれが独自の(超)独我論を展開していく。さらには敬虔なキリスト者であったものの死の間際に鶏になってしまう老人アンドレイ、セクトには属さず独自の道を歩む去勢者ミヘイらも加わり……。消費社会に覆われた西側でニューエイジが生じたのと時を同じくして、表向き窒息するような社会主義体制下のソ連ロシアのアンダーグラウンドで息づいたもうひとつの精神世界。ソ連地下文学の巨匠の怪作、ついに翻訳成る!

【ユーリー・マムレーエフ】 1931年、モスクワの精神科医の家庭に生まれる。55年に林業大学を卒業し、57―74年にかけて夜間学校で数学を教える。学生時代から執筆を始め、エゾテリスムに彩られたその形而上的な作品は地下出版で仲間内に広まった。58年には自身のアパートで伝説的なサロン「ユジンスキー・サークル」を組織し、多くのアンダーグラウンドの文化人たちが訪れた。74年に妻とアメリカへ亡命、コーネル大学でロシア文学を教え、83年にはフランスへ移り、東洋言語文化学院等で講義を行う。この間、ヨーロッパの数々の言語で翻訳が刊行され、「ゴーゴリ、ドストエフスキーの継承者」との評価も得るが、ロシアで作品が出版されるのはペレストロイカを迎えてからであった。91年にロシアに帰国し、執筆活動の傍ら94―99年にはモスクワ大学で東洋哲学を講じている。代表作『穴持たずども』(1966―68執筆)、『モスクワ・ギャンビット』(1981―85執筆)をはじめとする、「形而上的リアリズム」と呼ばれる数多くの文学作品とならんで、『存在の運命』(1997)、『永遠のロシア』(2002)といった哲学的著作も著している。アンドレイ・ベールイ賞等の文学賞のみならず、その文学的功績に対して国家友好勲章が授けられた。