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不器用な人間は長持ちするのだ!

もう20年近く前になるけど、最後の織り子といわれた坂口さんに赤穂緞通を作りたいけど、とても不器用な人間なんですと訴えた時「不器用なんはぜんぜんかまへん。ええモン作るんは不器用な人間や。必要なのは根気や」と言われたことをはっきり覚えています。坂口さんは他の仕事が無かったから織子になったと言われてましたが、80歳を超えて、たった一人になっても織り続けられてて、その姿に学ぶことは多かったです。入院されたときにお見舞いに行ったら、ベッドの上で正座して縦糸に糊を揉みこむ様子を実演してくださって、「こうやってしっかりとゆっくりと糊を入れていくんや」手が覚えているんですよね!糊の匂いまで漂ってくるようでした。
日本には職人と言われる人々がいます。体を張って腕を磨いて、いいものを作り続けている人たち。私もその中の一人になりたい、不器用で手芸とかしたことないけど、握り鋏も使ったことないけど、家庭科の課題のマフラーすら上手く作れなかったけど、根気だけは人一倍あるから大丈夫かもしれない。諦めなければいつかいいものを作れるかもしれない、と緞通の織り手になることを決心しました。

さて、そのお言葉に勇気をもらって緞通作りをはじめて15年。一人前になるのに10年はかかると言われたけど、ぜんぜん一人前になってへんやん!
でも大丈夫、不器用な人間はうまくできなくて当り前と思っているから、そんなことは想定内です。しこしこと続けていくだけです。ずっと頑張っているとある日突然そうっか!!という時がくるのです。
私の相棒は、手先はとっても器用だが性格が不器用な人で、講習生の間並んで機に座っていて、なんであんなに上手にできるんだろうって感嘆してましたが、3年ぐらい経った時かな、「なんで~??」って言うようになりました。うまくできないそうですが、どうしてかが分からないって。私には新鮮な考え方だったわ、どうして?なんて考えたことがなかったから。下手やからに決まってるやん!
幸い相棒は性格は不器用だったから、そこをしこしこと乗り越えていきましたが、なまじ器用な人はそこで辞めちゃうのかもしれない、知らんけど。

なんでこんなことをウダウダ書いているかというと、今行き詰っているからです。ハセ(縦糸に色糸を結び付けていく作業)がうまくできない。。
青白磁の色と質感を出すためにリネン糸を4分の1ほど混ぜた綿麻で作ろう、と思いついたまではよかったが、リネン糸が手ごわくてピンピンと自由奔放に跳ねてくれてうまくハセられない。。

相棒に泣きつきました、うまくハセられなくて2本指でつまんでいるって。
そしたら緞通と違うんだから、それでええやん!と慰めてもらいました。
慰めとか励ましとか大事ですね。少し気分が上昇。でも倍の時間がかかるんだよなぁ。しかも自分で自分の首を絞めて、仕上げの日を連絡してしまっている。。
仕方ないから頑張ります。

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