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ガチノビ参考書ルート

はじめに

参考書ルートは

 ・各人が自分の学力や素質に合わせて自分で選ぶものである

 ・学習をスムーズにもしくは“比較的”効率的に行うためのものである

 ・学習ルートに正解や不正解は存在しない

ことに注意したい。学力は参考書ルートの良し悪しで決まるものではないので,こだわりすぎても意味はない。あくまで1つの目安として用いること。

分類

おおまかに

・範囲学習
・基礎問題集
・標準問題集
・網羅系問題集+α
・本質理解系問題集
・応用問題集
・ハイレベル問題集
・検討したが,ルートに入れなかった問題集

に分類して紹介する。

【範囲学習】

初学者が独学する上で使える参考書を紹介します。ただ,塾・学校の授業で習った場合には必要ありません。スタディサプリの利用も選択肢の1つと考えます。

1. 入門問題精講

自然な発想かつ丁寧に重要概念を解説している参考書。
見た目や字体で分かりやすそうな雰囲気を出している問題集とは違い,文字数を使って発想に至る理由や具体例を出しながら分かりやすく解説している。範囲学習の参考書として強くオススメする。また,すでに次のステップに入っているが,一度基礎に立ち返りたい場合も強くオススメする。

 【基礎問題集】

 範囲学習が終わった方がまず取り組むべきレベルの問題集を紹介する。数学に苦手意識がない~やや得意な方は,基礎問題集ではなく網羅系問題集に入ってしまってもよい。旧帝大や早慶などの難関大受験をする上では基礎問題集だけでは足りないことが多いので,標準問題集へと接続することをオススメする。

1. 基礎問題精講

 問題精講シリーズの1つ。入門問題精講の次に取り組むとよい。名前通り基礎レベルの問題を掲載している。小問分けによって生徒が躓きにくくなるように問題が作られていることが多く,数学に苦手意識のある生徒も学習しやすい。

2. 文系の数学 重要事項完全習得編

 150題(+演習問題120題)と基礎問題精講よりさらに簡潔に作られている問題集(基礎問題精講は1A2B合わせて300題程度)。網羅系問題集などで消化不良を起こした人,起こしそうな人にオススメ。解説講義で周辺知識を得ることができる点,必勝のポイントとして要点がまとめられている点が特徴。問題数が少ない分,1題1題重要なポイントを意識しながら進めていきたい。

【標準問題集】

 基礎問題集の次に取り組むとよいレベル,つまり標準レベルの問題集について解説する。標準問題集はここに掲載したものの中でも難易度の上下がある。やや難しいものは比較的数学が得意な生徒,東大京大など難関大志望者が用いるとよい。やや易しいものは比較的数学に苦手意識のある生徒,難問をあまり出題しない大学志望者が使用するとよい。

 やや難しいもの

   標準問題精講,1対1対応の数学,「実力強化」問題集

 やや易しいもの

   文系の数学 実戦力向上編,部分点をねらえ

1. 標準問題精講

1A2B合わせて290題程度の標準レベルの問題が揃っている。基礎問題精講と比べてかなり歯ごたえがあると感じるだろう。この問題集まで終わったら次はまず過去問に移りたい。「入門問題精講→基礎問題精講→標準問題精講→過去問」と精講シリーズで固めてしまうのもいいだろう。


2. 文系の数学 実戦力向上編

90題(+演習問題110題)と問題数が絞られている標準問題集。解説が丁寧+問題数が少ないので,重要事項完全習得編と同様に消化不良を起こしにくい。国立文系志望などあまり難問を出題しない大学志望者,数学に割くことのできる時間の少ない受験生にオススメ。


3. 部分点をねらえ

100題と問題数が絞られている標準問題集。採点者視点での採点のポイントが書いてある点や解説が非常に丁寧であることが特徴。数学に苦手意識がある生徒でもかなり取り組みやすいのではないだろうか。

4. 1対1対応の演習

 標準レベルの問題を扱っている。標準問題精講や青チャートと問題のレベルは大差ない。ただ解説が丁寧であったり“逆手流”や“1文字固定法”という考え方の核となる概念を見出しに載せていたりと,数学の考え方を深めることにフォーカスしやすい作りになっている。また章末にミニ講座がある場合は必ず読んだ方がよい。ミニ講座では入試において重要な考え方がまとめられている。1対1対応を使っているのでミニ講座を読まないのはあまりにもったいない。
 数学の考え方に自信がない,深掘りできていないと感じる方は同レベル帯の青チャートや標準問題精講などから1対1対応に移っても問題ない。

5. 「実力強化」問題集

 合う合わないが大きく分かれる標準~やや応用レベルの問題集。全問題→要点まとめ→解答の順に作られている。問題が箇条書きで羅列しているような見た目であり,重く感じる方も多いだろう。解説も簡潔であるので,数学に苦手意識のある生徒には手が出ないと思われる。ただそれでも問題の選定が非常によい+問題が羅列されていることで似て非なる解法を用いる問題を比較しやすいため,標準からやや応用レベルの問題を体系的に学ぶことができる。数学がある程度以上得意+すでに標準レベルの問題を解ける方が,解法を体系化するのにオススメである。(もしくは,学校の先生や家庭教師など身近に質問できる人がいる方もオススメ。)

【網羅系問題集+α】

 青チャート,Focus Gold,NEW ACTION LEGENDの3つを網羅系問題集と呼ぶことにする。基礎~やや応用までの幅広い問題が載ってある“演習問題の辞書”的な問題集である。1冊でかなりの範囲をカバーできてしまう一方で,あまりの情報量の多さに消化不良を起こす生徒もいる。自分に合わないと思ったら,基礎問題集+標準問題集のようにスモールステップに分けて学習することをおすすめする。

1. NEW ACTION LEGEND

 最も新しい網羅系問題集。問題の選定,解説の丁寧さともに3つの網羅系問題集の中で一番よいと考える(ただし,すでに使っている網羅系問題集があればそれで構わない。問題集を途中から変えるほどの差はない)。解説が丁寧であるので,よく推奨されることのある「青チャート→1対1対応の数学」ルートの代わりにNEW ACTION LEGENDだけでも代替できるのではないかと考える。

2. 青チャート

 最も有名な網羅系問題集。基礎的な問題から応用的な問題まで幅広く扱っている。問題数が多いので,ある程度テキパキ進める必要がある。問題をこなすことだけに集中すると,大事な概念の習得がおろそかになってしまい本末転倒になりかねないので注意。オーバーワークになり消化不良を起こしていると感じたら基礎問題集に移行することをオススメする。一方で,力のある生徒は集中して取り組むことでよくある解法や考え方をまとめて習得できるので効率がよい。青チャートの代わりに,やや易しいレベルを扱っている黄色チャートを進めても全く構わない。

3. Focus Gold

 青チャートと比較して,中のレイアウトはやや簡素な印象。問題レベルは青チャートとほぼ同等。奥田猛先生という一時期enaという学習塾でひと校舎から20人程度東京大学理科3類を出していた先生の書いた(と思われる)部分が,コラムや実践編などにある。ただし,例題だけでかなりの分量になるのでそこまで手が回る人は少ないかもしれない。(ちなみに,シーナは奥田猛先生の季節講習を受けていた時期がある。)

【本質理解系問題集】

 ある程度レベルがあがってくると,問題が解けること以上に数学としての理解度,深く理解できているかが重要であることに気付く。そのようなとき,手に取っていただきたいのが,総合的研究やPlus Eliteである。問題集として利用してもいいし,他に解き進めている問題集があれば“読み物”として利用しても構わないと考える。現実的には,ある程度学習が進んだ段階でこのタイプの参考書を読みたくなることが多いので,“読み物”として使われることが多いように思う。

1. 総合的研究

 長岡亮介先生の書いた名著の1つ。先生各章の頭にあるまとめページが非常に勉強になる。必ずよく読むこと。独学では数学的に曖昧な部分を残しながら学習することが多いが,その曖昧な部分が明確になっていくことを感じるだろう。痒いところに手が届くと言ってもいいかもしれない。総合的研究は同時に網羅系問題集としても使えるものである。ただし,数3の総合的研究はかなり内容が難しいので,すでにある程度以上学力が高くなければ避けた方が無難である。

2. Plus Elite

 駿台の清先生の書いた参考書。受験数学の参考書としては最も丁寧に,曖昧な部分を排除できるように書かれているように思う。その分,問題集は辞書的な分厚さであり,辞書的な使い方が正しいのかもしれない。学習する中で曖昧にしていた内容が明確に書かれている+教科書では出会ったことのないような考え方をベースに考えを進めるときがあるため,ある程度以上学力がついた生徒にとっては,目から鱗が落ちたような思いをするだろう。時間的猶予のある難関大受験生にオススメ。

【応用問題集】

 多くの大学では応用問題集にいくよりも先に過去問を1度は解いた方がよい。ある程度以上,試験まで時間が取れることを前提とする。過去問を1度も解いたことがないのに11月から応用問題集をスタートするのはオススメできない。試験が近い場合は自分の志望する大学の過去問対策や共通テスト対策が優先される。

 東大京大理系,東大文系,上位医学部など最難関大受験生

  良問のプラチカ,やさしい理系数学をオススメする

 京大文系,阪大,名大,九大,東北大,北大,早慶など

 ・医学部志望,または数学で差をつけたい場合
   良問のプラチカ,やさしい理系数学

 ・文系,または数学に苦手意識がある場合
   理系数学入試の核心(標準編),文系数学入試の核心

また,(年度によって波はあるが)これらの大学の中でも北海道大や東北大(2022年はやや難しかったが)は比較的問題が簡単である。名古屋大,阪大,九州大(特に名古屋大)はやや難しい問題が出題されうる。自分の志望する大学の“問題の難易度”や難易度の傾向を踏まえて対策してほしい。

1. 良問のプラチカ(理系or文系)

 東大京大理系,東大文系などの難関大受験生にまずオススメしたい問題集。難関大受験生が過去問の前に解くレベルとして程よい難易度の問題が用意されている。数学である程度高得点を取りたい東大文系受験生は特にオススメ。

2. やさしい理系数学

 東大京大理系などの難関大受験生にオススメしたい問題集。良問のプラチカと同じ~やや難しい問題が並ぶ。各章の冒頭にある例題で非常に重要な事項が学べるので確実に学習しておきたい。東大京大理系,東工大志望に特にオススメ。

3. 理系数学入試の核心(標準編)

  文系数学入試の核心

 中堅からやや難関大学の標準的なレベルの応用問題が載っている問題集。解答の最初に“考え方”,解答に横並びに解法の“PROCESS”が載っていて,読みやすい作りになっている。網羅系問題集や標準問題集が終わった方で,試験まである程度時間がとれる受験生にオススメ。時間がなければ,まずは過去問をみること。

【ハイレベル問題集】

 東大京大東工大など難問が出題される可能性のある大学向け。東大京大東工大受験生でも時間がなければ取り組む必要はない。その場合は,過去問研究を優先したい。ハイレベル問題集は,試験まで時間がある受験生,もしくは過去問対策をしたが行き詰っている受験生にオススメする。それぞれの問題集の用途が大きく異なるため注意が必要である。

1. 真・解法への道

 問題の選定,解説の充実さともに最高レベルの問題集。全単元の重要かつハイレベルな問題演習が可能。解説は予備校の授業のように痒いところに手が届く丁寧な解説がなされている。

2. 入試数学の掌握

 問題解決に至るアプローチに重点を置いている問題集。難問を解く際に脳内で行う思考過程を文字に起こしている点が特徴。難問の発想法や思考過程を丁寧に解説している参考書の中で最もオススメできる。東大京大理系東工大受験生の中で数学を武器にしたい生徒にオススメ。

3. ハイレベル理系数学

 東大京大理系などの難関大受験生にオススメしたい問題集。やさしい理系数学よりさらに難易度の高い問題が並ぶ。各章の冒頭にある例題で非常に重要な事項が学べるので確実に学習しておきたい。例題もやさしい理系数学よりさらにグレードアップしている。東大京大理系,東工大志望で高得点を取りたい受験生に特にオススメ。

4. 上級問題精講

 東大京大一橋などの難関大レベルの問題集。実際に多くの問題が東大京大一橋の過去問である。丁寧に解説がなされているが,結局東大京大の過去問を解くことになるので,直接自分の志望する大学の過去問対策に全振りした方が効率がよいとも考えられる。

【ルートに入れなかった問題集】

 参考書ルートに入れるか一度は検討したが入れないことにした問題集を紹介する。ただし,これらの問題集の何かが悪いわけではなく,ルートを作る上で入れる場所がない,やや優先順位は低い,または対象がかなり限られてしまうと判断しただけである。逆に言えば,良さがあるからこそルートに入れるか検討したのであり,そもそも検討すらしなかった問題集もある。

1. 駿台 実戦演習シリーズ

 難易度の高い問題が数多く載っており,個人的には好きな問題集である。ただし,分量の多さと難易度の高さから消化不良を起こす可能性が非常に高い。また,過去問演習を差し置いて取り組むほど優先順位が高くないと判断したので,ルートには入れなかった。

2. ハイレベル数学1A2B(3)の完全攻略(ハイ完)

 他塾のルートに入っていることもある割と有名な問題集。問題数が非常に少ない代わりに考え方に重点が置かれて書かれているところが特徴。参考書単体としてはとても良い本だと考えるが,具体的にどの受験者層がどの時期にやるか考えたとき適切な時期がわからずルートには入れなかった。応用問題集をプラチカとハイ完の2冊やるなど時間がある場合はいいかもしれない。

3. 理系数学入試の核心 難関大編

 よい難問を取り扱っている問題集だが,問題数が60題と少ないため,体系的に得られるものが少ないように感じる。そのため,使うとしたら6題150分のテスト形式で実力試しに使うならありか。

4. 新数学スタンダード演習

応用問題集として概ね程よい難易度の問題が並んでいる。ただ,問題数が多すぎる点および問題間の難易度のバラつきが大きい点から良問プラチカややさしい理系数学を優先した。時間に余裕があり,大学への数学シリーズが好きな難関大受験生はオススメ。

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