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TeXTL<テフタイル> ~物理学徒たちの戦場~

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プランクやアインシュタインなどのかつて20世紀の天才科学者たちが能力者バトルロイヤルを繰り広げるトンでも歴史SF物語‼︎
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叛逆の物理学徒たち

叛逆の物理学徒たち

「ハァ、はぁ

やり過ぎたかな…………

ケシ炭になっちまった。」

後に残ったのはあちこち焼け焦げてひん曲がった鉄塔と、

墜落してきた死体だけだった。

疲れ果てた岩砕は鉄塔から降りて、

死体を確認しようと歩み寄る。

「ん?

コっ……………………

こいつは…………ッ!」

だがそこにいたのは想定外の人物だった。

「あのときの!

パラシュート男!?

ッて…………事は、

つまり――

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アルベルト・アインシュタインの相対論

アルベルト・アインシュタインの相対論

「ハァ……

ハァ…………」

時を同じくして、アルベルトはどんどん加速していく岩砕に追い詰められていた。

「く……なんて奴だ、

この僕がここまでやられたのは初めてだよ…………」

アルベルトは危機感と同時に高揚までもを覚えはじめていた。

そして光の剣を構え直す。

「だがもう、再び蓄光は完了した!」

アルベルトは急加速し、一瞬の隙をついて岩砕の背後へと廻って光の剣を振るう。

「なッ!!

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量子論の父「マックス・プランク」

量子論の父「マックス・プランク」

さっきまで激しい戦闘の鳴り響いていたオリバーのいる変電所は

うって変わって静まりかえっていた。

「さらばだ、プランク。」

もうほぼ勝負はついたらしい、

ボロボロになって倒れたプランクに向けて手風琴<アコーディオン>を構えるオリバー。

「フ……………………………

ゥフフフ…………

……………………………

なんと荘厳な数式だわ、

欲しい………………

そして憧れたあの日の旋律…………

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「天才」 VS 「天災」

「天才」 VS 「天災」

その頃、空軍勢はというと

パラシュート男は黒コゲになりながらも近くの送電鉄塔に引っ掛かって生きていた。

だがグライダーの方はまだ羽ばたき飛行への挑戦をやめようとしない。

案の定、下手に鳥の真似なんかするから飛行は勝手にどんどん不安定になっていった。

「ひーん、キリモミ状態だーッ!

救助求む、誰かーっ!!

やっぱ余計な羽ばたきとかしなきゃよかった~」

今更になって後悔しているグライダー

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文系(無能力者)と理系(能力者)

文系(無能力者)と理系(能力者)

その頃、オリバーは岩砕と同様に追い詰められていた。

「おとなしく捕まって下さい、ご隠居。今、貴方程の人物を失うには惜しい。

いくら貴方が電磁気学マスターだからといって……

古いTeX《テフ》の暗算では限界があるでしょう?」

プランクがオリバーを諭そうとする。だがボロボロになっても一向に戦う姿勢を崩そうとしないオリバーにプランクはため息をついた。

「………………これでもかのヴィクトリア朝最

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音と光の交錯と発明家たちの狂騒

音と光の交錯と発明家たちの狂騒

さっきから何やらアルベルトが解説してくれてるようだが、

必死に走る岩砕の耳にはまるで入っていないようだった。

そしてアルベルトがとどめとばかりに、

至近距離で狙い撃ちしようと手を伸ばしたその時だった。

「今度は何だありゃ!?

鳥か? 飛行機か? いや…………

……爆弾だ‼︎」

なぜか上空から無数のダイナマイトが雨アラレと降って来た。

それらは空中で爆発したものの、

爆風を受けた送

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演算子たちの協奏曲

演算子たちの協奏曲

その頃、

互いに対峙したまま動かないオリバーとプランク。

二人の間には吹きすさぶ風の音しか聞こえない。

だがここでオリバーはその風の音をよく聴いてみると、

次第にある周期性に従って鳴っているのに気付いてしまった。

「…………まさか、

この風切り音はエオルス音っ?

さっきから電柱の周りの電線をもムチのように操り、

モールス信号みたいに送っていたという事か!?」

しかもオリバーは直ち

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近代科学者バトルロワイヤル

近代科学者バトルロワイヤル

「おっと、オリバーさん

いくらあの若者が期待の教え子だからって……

余所見してはいけません……………………

よッ!!……と……!」

間髪入れずにプランクはムチを御李婆に目がけて振るう。 

確実に相手の一瞬の意識の隙を突いたつもりだった。

だがなんと、御李婆はこちらの攻撃を見もせずにヒラリとかわした。

「っと?!」

逆にプランクの放ったムチは踏んで押さえつけられ、

御李婆の反撃から

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科学者たちの邂逅

科学者たちの邂逅



山を降りて長江を渡る橋のある町に

レールの向こうから轟音を立てて

ものすごい勢いでトロッコが突っ込んでくる。 

御李婆は岩砕を鎖でグルグル巻きにして

人力トロッコを電磁気力で動く

モーターカーに改造していた。

替わりに柱に括り付けられた岩砕が

大回転させられ続けている様子は

さながら地獄絵図だった。

があああああああああああああ・・・!!

案の定、無茶な運転を続けていたトロ

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プランクとアインシュタイン

プランクとアインシュタイン



「あらら

丸焦げじゃないの」

焼け跡に到着するなり、臆する事もなく言い捨てた青年は

トレンチコートにハンチング帽を被ったドイツ人のようだった。

その帽子には特許局のマークがついている。

「まぁ、キレーな

鉄筋は残ってんだから

たいしたもんだよね。

この土地の鉄は」

丸焦げとなった製鉄所の塔を見上げて

皮肉っぽく呟く。

「お言葉ですが、

この大火の中では生存者など絶望

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