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「育む」という投資のリターンって何だろう?と改めて真夜中に思った話

つい先日、有志開催の「投資を語る会」というZoomイベントがありました。

こんなご時世ですから「緊急開催」と銘打って、ここ数日間で一気に開催が決まり思い思いにZoomで参加するスタイルで開催。これは技術革新の恩恵をモロに受けているなぁ…なんて軽く感慨に耽ってみたり。
この会が進行している同時刻に、裏側でちょっとした出来事がありました。フラッシュバックした思い出と、投資にちなんだ未来の価値について考えた話。

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【真夜中の友達申請】

様々に激変する世界をどうSurviveし、Thriveするか?ということで急遽開かれたZoomによる「投資を語る会」。時間は22時をすぎた頃から始まりました。遅い時間ですが、やはり興味深いですよね。沢山の方々が参加をしていました。

僕も仕事を終えてお風呂に入り、準備万端でZoomを開きました。馴染みの方々も数名Zoom越しに顔が見えます。元気そうで何より。さて、これからどんなこと考え、行動して行くべきか?世界との繋がりやら教育の未来やら、江戸回帰戦略やら…いろんな話が飛び交います。やっぱり議論するの面白いなぁ…。

なんて思っていたその時。多分23時近くなった頃でした。Apple Watchからお知らせ通知が届きます。お。何だろう…iPhoneを開くとFacebookに友達申請が来ていました。どれどれ、どなた?通知を開きます。

(えーと…ん? ・・・んん!!!???

その友達申請の相手はちょうど10年前、あの東日本大震災があった時まで、期間にしてわずか1年半ほどだけ一緒に学んだマイちゃん(仮称)からだったのです。突然の懐かしい名前に、頭の中が半分10年前に飛んでいきました。


【マイちゃんとの出会いとソガ氏の異動】

マイちゃんは三姉妹の一番末っ子。大人しくて人見知りするちびっ子でしたが、確か小学校3年生の途中くらいから一緒に学び始めた記憶があります。お姉ちゃん達と比べてもとても静かで、最初はかなり心配していました。お母様に無理やり「勉強してきなさい!」とか言われて連れてこられてないかしら…。

でも、慣れてしまうと人見知りっぽい雰囲気はどこ吹く風。いつもニコニコご満悦で、とにかく楽しそうに授業を受けてくれました。もともと頑張り屋さんみたいで、授業も宿題もとにかく精一杯やる子でした。「すごいねぇ!」と褒めると照れながらも満面の笑顔を見せてくれて、僕も思わずやる気になってしまう(笑)そんな子だったのです。

お姉ちゃん二人も中学受験をしているので、マイちゃんも当然のごとく中学受験を自ら希望していました。悪くともお姉ちゃんと同じ学校、できればそれより上を目指したい!意欲も日増しに強くなるのです。クラスのメンバーとも、僕とも相性がすごく良かったみたいで成績もメキメキ上昇。将来の受験が楽しみでした。

が、僕は彼女の受験希望がほぼ固まった小3の冬に、人事異動を申し渡されていました。当時は埼玉県にいたのですが、そこから100㎞ちょっと離れた神奈川に。その年の3月は東日本大震災があってバタバタでしたから、異動が取り消しか延期か…なんて話もあったのですが、とにかく僕はギリギリまで異動でお別れ、というのをクラスのみんなに言えずにいました。名残惜しいことこの上ないくらい、とっても良いクラスに育ちつつあったのです。

結局、震災直後ではありましたが新たなミッションのためにも異動は決行。いよいよ皆んなに、マイちゃんに言わねばならぬ日が現実にやってくることも意味するわけです。僕は4月の春休み明け直後に、クラスの皆んなに教室からいなくなる旨を伝えました。


【届いた1行のメールと最後の生徒面談】

クラスの皆んなは静かでした。ハト豆状態?マイちゃんもぽかんと口を開けてフリーズしていました。

ソガ氏「ま、先生も残念だけど皆の勉強はこれからも続くじゃん?さ、やるよ!」

僕は元々は結構感情が顔に出てしまうタイプ。そしてちびっ子時代から感情豊かでした。それを悟られないよう、大人になってからは結構クールを装っていたり(笑)。その日も僕は寂しさを悟られぬよういつも通り授業を始め、いつも通り授業を終えました。

そして翌日。教室に行くとスタッフの一人が僕のところやってきて話し始めます。若干重たい空気…。

スタッフ「ソガ先生、昨日皆んなに異動の件伝えたんですよね?メールきてますよ。マイちゃんから。」

サービスの一環として簡単な質問やお問い合わせが、ちびっ子達からももらえるようなシステムが当時ありました。当時はまだ導入間も無く、ちびっ子がこのシステムを使うことは殆どありませんでした。が、そこにマイちゃんからのメールが来ている。僕はメールを開いてみました。そこに1行だけ書き込みがあったのです。

「ソガ先生がいなくなる。どうしよう。わたし・・・」

昨日皆んなの前で伝えた時はそれ程ショックを受けているようには見えなかったのですが、家に帰ってから段々実感湧いて不安になっているのか?ちょっと穏やかではない空気を感じ、お家に電話をしてお母様に相談をしました。来週、マイちゃんと面談をしたいので授業後に少しお時間いただいて良いですか?と。お母様は「是非!」と快諾してくださいました。聞きましたよ、酷いなぁ…なんてチクリと言われつつ…。
(勿論お母様なりのユーモアと優しさですよ!)

次の週の授業後、マイちゃんを面談室に呼びました。意外と普通な感じでマイちゃんは椅子に座りました。少し沈黙の後、僕が話しかけます。

ソガ氏「マイちゃん。メール見たよ。ありがとね。あれさ・・・」

と、話し出したその瞬間、マイちゃんは一気に号泣。マイちゃんなりに我慢というか、平静を装っていたのでしょう。僕の言葉で一気に何かが弾けてしまったように、泣き崩れてしまったのです。この面談が終わって、その10日後には僕はこの教室を去るわけです。いま、マイちゃんに何を伝えてあげることが一番良いのだろう?わずか数十秒の中で猛烈に考えました。多分人生で5本の指に入るくらい、短時間で脳みそをフル回転させました。


【彼女との約束】

一通り泣いて、少し落ち着いたマイちゃんにゆっくりと話しかけます。

ソガ氏「・・・本当にごめんね。正直、先生も残念。またこれから少なくとも3年間、マイちゃんの受験が終わるまでは一緒にいようと思っていたから。でもそれが叶わなくなっちゃったのは本当に無念でしかないよ。」

マイちゃん「・・・」

ソガ氏「でもね?多分先生、どこにいても結局皆んなのこと気になったら大丈夫かどうか調べちゃうと思うのね?だって先生偉いから(笑)、すぐ調べられちゃう!」

マイちゃん「・・・(苦笑)」

ソガ氏「そん時さ、久しぶりに様子を調べてみたらもう勉強もやる気なくなって、なんだかよくわかんなくなってるマイちゃんだったら、その方がもっと残念だし淋しい。ていうか怒るかも(笑)」

マイちゃん「え・・・汗」

ソガ氏「そしたらマイちゃんを叱るためだけに、神奈川から電話するかもよ?それでも良いの?」

マイちゃん「そういうのはイヤ・・・」

ソガ氏「でしょ?そもそも勉強は先生のためにするもんじゃない。仮にそうだったら、先生はちょっと嬉しいけどなんか違うとも思う。それこそ、いつ調べても頑張ってる!さすが!って思えるような努力を、マイちゃん自身のためにしてあげてよ」

マイちゃん「・・・」

ソガ氏「で、ちゃん3年間受験頑張って、いつかちゃんと合格の報告をちょうだい。電話でもなんでも良いから。もっと自分ために頑張りなさいな?」

マイちゃん「・・・(黙って頷く)」

そしてその3年後、直接…ではないですが、当時僕と一緒に仕事をしていたスタッフの元に、無事に中学受験を終えて某名門校に合格したことを報告しに来てくれた…という報告が僕の元にきました。お母様が「ソガ先生がいなくなってとーっても苦労したけどなんとか合格しましたよ!と、くれぐれもよろしくお伝え下さい!(笑)」と仰っていましたよ…と。

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【価格にはうまく表せない「育む」という投資の価値】

戻って投資の話。
何となく、投資は「価格を軸」が20世紀的であり資本主義的なのだけれども、昨今の情勢からなのか、令和になったことによるエネルギーや思考の転換があるからなのか、「価値を軸」に考える人が増えつつあるのかな…と思います。

勿論、今までも優れた投資家の方々は価値も価格も見通していたのだと思いますが、より一層「価値って何だろう?」と考える人が増えている気がするのです。

僕は教育業界にずっと身を置いて、「育む」とか「共育」にずっと関わって、それこそ何千人というちびっ子や保護者の方々と向き合ってきましたが、それでもなお「育むことの価値や正解」の完成は未だ見えません。でも、今回みたいに長い時間を経てなお繋がれる機会に出会ったりすると、心からこの仕事をしていて良かったな…と、その価値を実感するのです。回収めちゃ遅いとか突っ込まれそうですが。

マイちゃんは、考えてみたらわずか1年半しか一緒には学んでいません。でも、どこかで彼女の記憶に残っていたのかな…なんて思うと、あの1年半にはそれなりの意味があったのかな?と少し自分を褒めたくなります(笑)

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異動に際して、マイちゃんとそのクラスメイトと、保護者の皆様ですごく素敵なミニアルバムを作ってくださいました。最後にプレゼントとしていただいたのです。今回の友達申請で思い出し、久しぶりにアルバムを開きました。この記事中チョコチョコ登場する写真はそのアルバムの一部分。ひょっとしたら、このアルバムも「育む」という投資のリターンなのかもしれません✨

そして、今まで出会ったちびっ子達、殆ど全ての子達について、僕は

「あぁ、本当に優秀。この子達が大人になったら圧倒的に強いわ・・・」

と思うわけです。お世辞抜きに。投資はそもそも今よりも大きな価値を生みそうなものに賭ける、ということなのであれば、将来有望なちびっ子達が大人達を抜き去っていく支援をすることも投資と呼べそうです。そのリターンが直接自分の元に返ってくるかは微妙ですが・・・たまにリターンの片鱗に触れられればそれで良し。長い目で、広く見渡せばあちこちにリターンがきているかもしれません!

あと…上手く言えないのですが、金融的なリターンではないけれども、数字には上手く表現できないけれども、こうやって時空を超えて繋がれること。そして、さっぱりどうなるかわからない未来や将来を一緒に考えて!と突然声をかけてくれること。
こういう対話の機会をもらえることは、結構お得なリターンであり、僕だけの役得な気がしてしまうのです。お金に上手く変えられない、ひょっとするとお金に換える必要のないリターンなのかもしれない、稀少性の高い価値。

それにしてもマイちゃん、この春大学生になるのか…。時の流れは早いですなぁ。

ん?

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おおぉぉ・・・!懐かしいこの手紙が出てきた!
が、この手紙のお話は秘密(笑)
今、皆んなに会ったらどんな未来の話をしよっかなー!

西暦2200年の世界に向けて残したい価値ってありますか?それはどんなもの?

教育に未来を価値を感じて、記事で心が動いた方からのサポートは嬉しいです。いただいた信頼の形は、教育セミナーで使いたい本とかレゴとか…etcに使います!