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7月に読み終えた本

7月はそこそこといった感じだが、理由はわかっていて、以下のことをやっていた。

1. 夏アニメ
2. SEKIRO

アニメのほうは四半期に一度やってくるのでまあいいとして(今期のお気に入りは『ダンベル何キロ持てる?』です)、SEKIROはそこそこやっている。

SEKIROはほんとに難しくてじゃんじゃん死んでるのだが、「ちゃんと」難しいので敵の傾向を掴んで対策を練習すれば勝てるようになっている、と思う。こういうゲームをやると、いつもいいかげんにゲームやってるなあという気持ちになり、そして人生も…という感じで反省モードになる。けっこうやってるのに全然序盤だが、良いゲームです。ちなみにアイキャッチ画像は本棚を斬りつける狼です。

何の話か? 本の話です。

アミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』(ちくま学芸文庫)

「アイデンティティ」について、主に宗教、国家、言語、民族などを元に考えるエッセイ。
グローバリゼーションとかポリティカル・コレクトネスとかについても俎上に上げられてなるほどなと思うが、原著は1998年に出版されたものなので、20年経っても同じようなことが問題となっているのだなと感じる。先見性とかではなく、変わっていないのだなという感想になる。宗教についても、この3年後には9.11が起きるわけで、こういうことがずっと問題になってきたわけだ。政治の停滞と過激派や先鋭化の話はいまの日本でも同じだ。
ところで、あまりこういう本をふだんは読まないのだが、今回は新聞の書評を読んでたら気になったので買った。いまだに(?)新聞の書評をネットで見ておもしろそうだと思う時があるし、本屋に書評コーナーがあると覗いてしまう。くまざわ書店はだいたいどの店舗行っても書評コーナーがある。


村上春樹、柴田元幸『本当の翻訳の話をしよう』(スイッチ・パブリッシング)

この二人の「翻訳」の話、たぶんひさしぶりに読んだと思うけど、すごい英米文学オタクの話や…!という気分になって読んだ。
小説家と学者(翻訳家)の対談だから当たり前なんだけど、こんなに固有名がポンポン出てくると全然わからんという感じなのだがおもしろい。
あと専門的に書かれているわけじゃないのに、ちょっとしたアメリカ文学史の勉強になるのも良い。


栗原康『死してなお踊れ――一遍上人伝』(河出文庫)

すごい本。伝記だが、こんな伝記があるのかと驚く。著者の『はたらかないで、たらふく食べたい』を読んだことがあるが、文体もどことなく違うと感じた(ひらがなが多いのは相変わらず)。解説で武田砂鉄が一遍が「憑依」しているようだと書いているが、そういうことなのかもしれない。
なんとなく仏教は死後、極楽浄土に行くことを重視しているような通念があるが、一方で一遍は「死んだように生きる」ことを説く。煩悩とかしがらみとか有用性は死んだときのように捨てつつも、なお生きる(踊る)。ざっくりいうと「精一杯生きろ」ということなのだが、そういうことを文章としてまさに実践しているような書きぶりが本当にすごい。
北条政子をババア呼ばわりしたり、随所に毒蝮三太夫イズムも感じることができるので、おすすめである。


片山杜秀『鬼子の歌――偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)

片山杜秀の本を久しぶりに読んだ。日本のクラシック音楽の曲と作曲家を取り上げた本だが、日本の近現代史や文化が絡めて論じられて、厚いのだがおもしろく読める(とはいえ重いので主に家で数ヶ月かけて読んだ)。
極東の国が近代化=西洋化していく過程での矛盾や葛藤、そこから「発見」される「日本」という日本近代の全般で起こったものが、日本のクラシック音楽や作曲家にも起きる。その歴史のダイナミズムを博覧強記で書き上げ、まとめていて、すごいと思う。文体もなかなか不思議な感じで、ですます調なのが若干怪しげで良かった。
音楽や理論のことは基本わからないので、飛ばし飛ばし読んだ。曲でも聴ければという感じだが、Spotifyでもあまり見つからなかった。こういう時は図書館で借りるのがいいかもしれない。
そういえばけっこう仏教に関係する音・音楽(梵鐘とか声明)の話が出てきたのだが、『死してなお踊れ』を同時に読んでるタイミングも合って、仏教音楽なるほど〜みたいな気持ちになった(雑)。


劉慈欣『三体』(早川書房)

話題になっててTLやらなんやらでよく見かけるので買って読んだ(noteだと早川書房のアカウントがマガジンにまとめているのでおすすめ)。
話題にたがわずおもしろい。スケールもでかくて、SF考証とか全然わからんがなにか強いものが脳にバシバシ当たってくる感じで楽しい。
中国批判的な読み方もできるけど、まあそれはそれで、しかし文革などの(現在より過去の、実際の)歴史からSFに開いていくというのはおもしろくて、個人的にそういうのは好きである。平行世界というか、歴史のifを考えるということかもしれない。
(もしかしたら、中国に対するオリエンタリズム的な見方が自分の中にあっておもしろく感じるというのもあるのかもしれない。とはいえ虚心坦懐に読むのもまた難しい。こういうときは中国史を知るのが良さそう)
三部作の最初なので、これからも楽しみ。映像化(ドラマ・アニメ)も予定されてるとかでこれも気になる。