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保活戦線異状アリ

ここからは保育(園)の話に入っていきます。僕の周りでも受験戦争ならぬ入園戦争に突入していく人が多いように思いましてまずは入園までのお話。-

「保活」のイロハはもう巷に溢れかえっているだろうし、自分も言うほど詳しいわけではない。しかし、実際に「保活」を経験して初めて知ったこと、驚いたこともたくさんあった。今回はそうしたことを雑感も交えながら還元していきたい。

「認可」と「無認可」

まず、保育園には「認可」「無認可」の2種類がある。「まずは認可保育園を探す」という人が多いと思われるが、誤解してはいけないのは「無認可」=「自治体が認可できないような保育園」ということではない

多くは「土地の面積が国の定める基準に満たない」といったことがあるよう(例えば一棟園ではなく、住居系ビルの1Fに入居している施設など)だが、「無認可」でもインフラや教育体制が整っているところはあるし、逆に「認可」保育園でも正直言って、「え、これで認可保育園?」というクオリティのところも存在する。

保活激戦区では予め「無認可」保育園を視野に入れる、というのも一つの選択肢だろう。

「待機児童数」のカラクリ

保活をする上で、「まず自分の居住する自治体の待機児童はなんぼのもんや」というのが気になるところだろう。待機児童数は各自治体から公表されており、今では待機児童マップや待機児童数ランキングなど、多様な視点で比較できるようだ。「保活に向け待機児童数の少ない自治体に転居する」という家庭もあるだろう。

ところが、単純に「待機児童数」の多寡で見てしまうと実態を見誤る恐れがある。実は自治体公表の「待機児童」とは別に、いわゆる「隠れ待機児童」なるものが存在する。「認可保育園を希望して入れなかったにもかかわらず待機児童にカウントされていない」というものだ。例えば、

・(認可保育園に落ちたので)無認可保育園にシフトした
・(保育園に落ちたので)育休を延長した
・特定の保育園を希望(兄弟と同じ園に入れなかったなど)
・(保育園に落ちたので入園を諦め)就職、復職を断念した

といったものが存在する。繰り返しになるが、これらは「待機児童」に該当しない

「待機児童ゼロ」を達成したといわれる某大都市も、実は相当数の「隠れ待機児童」が存在する。これらの「隠れ待機児童」は公表されているため、保活の際は「実質待機児童数」=「待機児童数」+「隠れ待機児童数」で実態を把握した方がいいかもしれない。政治家にも上辺だけでなく、本質を見て改革に注力してもらいたい。

「ポイント」制度

保育園の入園選考にも「ポイント」制度が存在する。「指数」などとも呼ばれる。人気の高い保育園には入園希望者が殺到するためポイントの多寡に応じて合否が決定される、というものだ。人気が高い園ほど倍率も跳ね上がるため、第2希望、第3希望…と「滑り止め」の希望も申請していくことになる。なんだかお受験みたい…

さてこのポイント、どう決まっていくのかは自治体により異なるので、各自治体に問い合わせるのがいいようだ。ただ、指数基準を公表している自治体ばかりではないので、その場合は断片的な情報収集や口コミでカバーしていくことになるだろう。とはいえ大まかな基準は似たり寄ったりのようで、例えば

両親ともフルタイム勤務【加点】
 ※いわゆる「基準指数」と言われ、数ある項目の中でもかなり重要なポイントのよう。
パートタイマーや時短勤務だと加点が小さくなる可能性あり。

・兄弟姉妹が既に希望する園に通っている【優先・加点】
・所得が低い(生活保護受給)【優先・加点】
・無認可保育園またはベビーシッターの利用実績あり【加点】
・ひとり親世帯(シングルマザーなど)【優先】
・祖父母など同居親族がいる(親元が近い)【減点】

といった項目が考慮されるようで、その結果、

基準点数(父+母)+調整点数(加点・減点)=合計点数

が算出され、点数がほぼ横並びの場合は、優先項目の多い世帯が選ばれる、という構図のようだ。

我が家は幸い、自宅から最も近い第1志望の保育園に当選した。全国的に見ればなかなかの激戦区であるこの街でなぜ通ったかはわからないが、「夫婦揃ってフルタイム勤務であること」「親元が遠いこと」が大きかったのではないか、と個人的には思う。

出生月で異なる保活

実は、保育園に入園させるという意味では子どもの出生時期により有利不利を招きやすい。結論から言えば、学年ベースで生まれが早いほど有利になりやすい(4月生まれ>3月生まれ)。その理由を探るには保育園のクラス制度を確認する必要がある。

一般的には「0歳児クラス」(=4月1日入園時点で0歳)、「1歳児クラス」(=4月1日入園時点で1歳)…というクラス分けとなり、保育園はクラスごとに新規受入枠を設け入園児を呼び込む。

倍率的には「0歳児クラス」が最も入れやすい。それは下級学年からの持ち上がりがなく、枠がそっくりそのまま空くためだ。これが「1歳児クラス」だったらどうか。まさに「0歳児クラス」からの持ち上がりで枠の大半が埋まるため、新規入園枠がグッと減り、倍率は跳ね上がる。

「だったら0歳児クラスに入れればいい」と言うかもしれないが、自治体や園の方針により、「生後6か月未満の子は受け入れない」というところも少なくないとか。そのため、例えば早生まれの子は「1歳児クラス」としての保活を余儀なくされるだろうし、9月生まれだったとしても産後間もない中での保活を強いられることになり、心身に負担がかかることが想定される。

また、「0歳児クラス」として入園希望をしたとしても、落ちてしまうと1年待った上、「1歳児クラス」以上での激戦に挑むことになる可能性が高い(認可保育園にこだわるならば)。親としては4月に復帰するはずだったのに、もう1年育休延長を余儀なくされてしまうかもしれない。「保育園落ちた日本死ね」という闇はこういうところに潜んでいるのだろう。

保育園に「選ばれる」まで

そういうわけで保育園は選べない。むしろ保育園に「選ばれる」といった感じだ(実際に選ぶのは自治体だが)。でも、近隣の候補になりうる保育園は可能な限り見に行くべきだと思う。保育申請書には第1志望から志望度順に保育園を書ける。それによって、よりリアルな志望度で申請ができる。ひいては後悔のない、満足できる保育園生活を送らせることにつながる。

ここまで見学を勧めるのは、保育園ごとにインフラや雰囲気など、本当に異なるからだ。例えば、大きな川の傍の低い土地に立っている=水害リスクは大丈夫か。交通量の多い国道沿いに建っている=交通安全面で大丈夫か。保育士さんは疲弊していないか(実際に人手不足で明らかに疲弊の色が窺える園もあった)。教育の質は高いか。親の質は低くないか。同じような地域でも結構異なる。

見学は平日が多いので、どうしても育休中の母親が身に行くことが多いだろうが、できれば父親も休みを取るなどして見に行った方がいい。全部とは言わないまでも複数は見に行くのが理想。でないと、それぞれのいい点、よくない点が見えづらく、比較検討ができない。

筆者は結局1か所だけ見に行った(今通わせている保育園ではない)のだが、正直そこは素晴らしいと思った。ここに入れれば最高だとさえ思った。しかし、意外にも妻の反応は冷静だった。通園の便、教育の質を考えると選択肢は他にもあると。

お受験じゃあるまいし、自助努力の及ばないところで保育園生活やキャリアが左右されてしまうことは本来あっていいものとは思わない。国や自治体には「実質待機児童」が減り、一人でも多くの人が円満に保育園に入れるような行政改革を望む。しかし一方で、現実そうなっていない以上は、正しく制度を知り、後悔のない保活となるようベストを尽くすことが重要ではないだろうか。

―次回は保育園生活の実態に迫っていきたいと思います。

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