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”薄型テレビを壁掛け”は10年を経て定着したか?

2020年2月18日から21日まで幕張メッセで開催された「国際ホテル・レストランショー」は、毎年恒例で訪れる展示会のひとつ。今年は開催が危ぶまれたが、ギリギリ”待った”がかかることなく敢行された。開催自粛の流れに入る直前最後の大型展示会といっていい。

その中から今回はLIXILのエコカラットの展示についてnoteに記しておきたい。

合わせて、ここ10年ほどのホームシアターとインテリアの関係も振り返ってみたい。というのも、壁掛けテレビが登場した10年以上前から、「テレビバックにはエコカラット」が一大ブームとなり今に至るからだ。

ブームの先駆けといえる頃、オーディオビジュアルの専門誌を出版するステレオサウンド社は、インテリアデザイン協会とコンビを組んで、やはりコンベンショナルホールである東京ビッグサイトで「ホームシアターインテリア」展を行っていた。

当時の記事は、ネットを検索してもこのcnetの引用ぐらいしか見つからない。しかし当時在籍していたステレオサウンド社の編集部員としてこのイベントに主催社側として参加した小員は、オーディオ&ビジュアルメーカーとインテリア関連のメーカーによる異業種交流の意義を身にしみて感じたのを覚えている。それが後に「ホームシアター」誌改め「ホワイエ」というライフスタイル誌のアプローチに至った。

10年前=地デジ化ハイビジョン時代のホームシアター×インテリア

実は2007年の「ホームシアター&インテリア展」で、小員はLIXIL(当時はINAX)ブースの会場整理を担当した。残念ながらその資料は残っていなかったが、2008年の「ホームシアター&インテリア展」については僅かにソニーブースを取材した資料が残っていた。それをもとにちょっと振り返ってみよう。

このときのソニーブースのコンセプトは、「カジュアルシアター」。オーディオビジュアル機器自体の機能よりも、リビングではどんな見栄えで、どう使われるかを知るための現実的な展示だった。

具体的には、さまざまな家庭環境を再現するために、7つものシーンを用意。量販店のようにモノをいじるのではなく、自宅に入れたときの佇まいを見せることで、来場者自身の「暮らし」の問題として捉えて欲しいという意図が伺えた。

当時としてはちょっと背伸びとなる40〜50インチの薄型テレビを核に、レコーダーとフロントサラウンドのシンプルなシステムが多い。

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↑40インチ液晶テレビをINAXのモザイクタイルの壁に掛け、レコーダーとライトな5.1chサラウンドシステムを組み合わせていた

ひと工夫することで”薄型テレビの音を豊かに”という課題は、10年以上経ったいまでもAIスピーカーの登場を経ても解決しないままだと思う。機能主導でマニアックに進化しすぎたAVアンプが日本のリビングダイニングにトゥーマッチだったというのがいちばんの理由だろう。

むしろ大切だったのは、生活環境・住宅環境と調和が取れたシステム提案だった。スピーカーは家具や天井に収納し、SONOS AMPのようなシンプルなHDMIでつながるネットワークプレーヤー&アンプがシンプルに操作できればよかった。

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↑手前にある40インチテレビへの信号は2メートル向こうのソース機器からワイヤレスで伝送されていた

”環境提案こそ大切”という意識

さて、話を戻すと、2008年のソニーブースには、リビング以外に、書斎をイメージしたシンプルなステレオシステムや、PS3を核とした子ども部屋があった。メーカー説明員も、機能ではなく、機器を設置する場合の適切な視聴距離やテレビのインチサイズの選び方といった”環境”アドバイスを行なっていた。

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↑PS3を核とした子供部屋をイメージしたブース。46インチ液晶テレビとフロントサラウンドシステム、家具はドリームベッドが扱うフランスのligne roset(リーン・ロゼ)

「いきなりプロジェクターを使ったホームシアターシアターシステムを目の当たりにすると、自分とは無縁の世界だと思われてしまう。液晶テレビでも46インチ以上なら充分映画を楽しめるということをまず知っていただく機会にしたい」(ソニー・オーディオ事業本部商品企画・井上琢磨さん:当時)という問題意識はその後のソニーのテレビ開発を支え続けた。

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↑大きめのリビング・ダイニングを想定。50インチクラスのテレビを置きフロントサラウンドシステムを組み合わせていた

2008年といえば一般家庭の地デジ普及率は半分程度で、フラットテレビもこれからという頃。「テレビは必需品だが、いま以上のモノは特になくても困らない」という人に興味が湧く展示を目指したと言えるが、これはいまの4K/8K移行期にもそのまま当てはまるように思う。

そして、もっともソニーらしい、ライフスタイル×いい音の萌芽がこのときすでにみられた。画期的だった。

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↑グラスサウンドスピーカーの原型「サウンティーナ」は一番の注目株だった。「『そもそも何なのか』といった素朴なところから沢山ご質問をいただきました。スピーカーと分った途端、筒の部分に触れたり耳を近づけたりなさるお客様も多く刺激になりました」(オーディオ事業本部のエンジニア鈴木伸和さん:当時)

いつも重要なのは、「その」家族の”暮らし方”に何が必要なのかであって、何でもハイスペックを揃えればいいモノではない。それは今も同じなはずなのだが、4Kテレビが安くなったからと言って予算限界まで大きいサイズの黒額をリビングに・・・というスタイルが既成概念になっているのはどうだろう。

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↑”壁寄せ家具”はテレビと絶妙のマッチングを見せ、衝立状の一体型テレビと錯覚する来場者も多かった

壁掛けから壁貼りへと、テレビはさらに一層薄型化に向かうだろう。接続も5Gが見えている無線でOK。電源は接続しなければならないが、10年前とは雲泥の環境なのに、ライフスタイルと生活環境に調和させようという視点は一向に進化していないように思う。

(続く)


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