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慣れないコース料理を食べに行った話


子どもが生まれる前の結婚記念日にコース料理を食べに行った事がある。

私も夫もほぼ未経験。コース料理バージン。
お店は山の奥の奥の奥で私の運転で行ったらたぶんたどり着けないし、帰って来れないような所。
隠れ家的なこじんまりとしたお店じゃなくて完全なる隠れ家。

完全予約制で時間は6時からと決まっていた。

「7時からが良い」と予約の時に言ったら「全員6時開始なんです」と言われてしまったから6時。

お店に着くと山の上だから自然いっぱいで夕日が綺麗で虫が沢山いた。
虫苦手だから早くお店に入る。
入るとご夫婦で出迎えてくれて「こちらに履き替えて下さい」とスリッパを出された。
靴を脱いだり履いたりしてる時にお店の人に見られてるの苦手。モタモタしたらスリッパでぶっ叩かれる!と思ってしまうから。
でもニコニコ優しい笑顔で待っててくれた。

奥まで行くと他のお客さんも何人かいた。

6時になると「ようこそいらっしゃいました」とご主人の挨拶と共に奥さんが料理を運んできた。

あ、こういう感じ!
だから一斉に6時開始なんだ。と納得した。
私はなんかの動物の血みたいな色の飲み物を飲んだ。私も夫もお酒は飲まなかった。夫は帰り運転があるし、私は血を飲まない時いけないし。
夫が酒飲んで私が運転でもいいけどそうすると一生山から出れなくなりそう。

出てきた料理はラザニアとかパスタとかだった気がする。
でもコース料理に慣れていない大食いの夫は出てくる度に一口で食べてしまう。
私も人間の中では食べるのが早い方だからゆっくり食べるのが苦手。

一つにお皿にキッシュやサラダや色んなのがのってるやつもあった。
他の料理がなんなのかわからない。
キッシュは聞き取れたしサラダは見たらわかるけどラディッシュ以上のお洒落な野菜はわからない。

「これは何?」と夫に聞くが巨人(味バカ)にわかるはずもなく「ズッキーニみたいなやつじゃない?」と言われる。

「それはズッキーニみたいなやつじゃなくてズッキーニだと思う。その隣!!」

「わかんない」

もうわかんないしか返ってこない。なんとなく葉っぱだな〜と思いながら食べる。わかんない料理をわかってない二人でモグモグ食べる。

「これ美味しいね!」や「これ肉だと思ったら魚だわ!」とか言いたいけど周りが静かで上手く喋れない。
私は普段人よりでかい声で話すし、居酒屋で「すいませーん」と店員さんに一発で届けられる大声の持ち主だが小声で喋るのができない。
私の小声は相手に声が届かないくらい極小になり何度も夫に「え?」「なに?」「おかわり?違う?」と全然聞き取って貰えなかった。

そうなるともうジェスチャーしかない。
手話が出来たら良いけど出来ないから、クレヨンしんちゃんの本屋の店員さんみたいに私と夫はジェスチャーで「コレ!オイシイネ!ナニカ ワカンナイケド」と会話をした。

「パン オカワリ デキルッケ?」
「ナニ? オシマイ ニスル?」
「ミズ ハ モラエルヨネ?」
「エ? ナニ?」と全然内容の無い事をジェスチャーでやるのは結構難しかった。
どうでもいいことを気軽に言えないのは辛い。

ジェスチャーするくらい小声で話さないといけない雰囲気にも笑えてくる。
別にそんなに小声じゃなくてもいいのに小声か大声の2択しか無いから小声にするしかない。

笑っちゃいけない。大人しくコース料理をフォークとナイフで食べるんだ!と思って薄く切られた人参をフォークで刺すとキーン!!という皿が割れそうな音がした。
私が人参だと思っていたやつは人参ではなく人参ソースだった。
ソースにフォークを刺そうとキーンしちゃった!
それがもうおかしくて笑いを堪えるのに必死だった。目の前で見ていた夫も笑いを堪えてる。可哀想なことをしてしまった。

無事に全部食べ終えるとお店のご夫婦が「どこから来たんです?」と話しかけてくれた。

「近くなんです〜」なんて夫が話すと「もしかして夫くん?」とまさかの身バレした。田舎だから。
「こんなに大きくになって〜」と巨人になった事を褒めてくれた。
帰りは来た道と同じと言われたけど全然違う景色に見えて怖かった。
 
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#笑ってはいけない #田舎 #田舎暮らし #記念日 #結婚記念日

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