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空気を纏うように

大学の図書館のまあるいクッションに腰掛けて、なにか素敵そうな本はないかなーと物色していたとき、偶然手に取った一冊の本。読み進めていった最後のページに、「テキスタイルは空気を纏うような曖昧な存在」とのような記述があった。

それを見て、私が模様やテキスタイルに強く惹かれる理由は、もしかしたらこれかもしれないと、はっとあたまの中が鮮明になるのを感じた。広告は伝えるものがある。イラストは説明がある。洋服にもメッセージ性のあるアーティスティックなものもあるけれど、最終的には、人やものが纏うことで成り立っている。ふわりと雰囲気を一緒に着ているようなイメージ。その柔軟さに魅力を感じていたのかも。

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北欧を代表するマリメッコは、ただおしゃれなだけではなかった。その根源には、戦後の重たくて暗い空気から脱却するために、大胆で明るい色と模様をデザインした経緯がある。その想いのとおり、今でも世界中の人のこころを明るくしている。

あるデザイナーの方は、テキスタイルの持つ永続的なストーリー性に惹かれるという。模様が続いていくという点でもそうだし、自分の作り出した絵柄が別の人の手に渡り、かばんや小物など、また新たなものに形を変えていくのは、たしかに特有のものかもしれない。

またある方は、図案作家という肩書きを持つ。布に限定せず、紙でも、どんなものにでも。図案を作り出すことにフォーカスをあてた職業を生業としていて、ファッションやインテリアのデザイナーじゃなくても模様に関わることはできるんだなと、当時この方を知って気持ちが軽くなった。

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そんな興味や想いや憧れが募って、いまは個人的に図案の作品も好んで作っている。私の絵は単体では弱いので、並べたり反芻することで、いい具合に強さが足される点でも相性が良いように感じていて、また、何よりも作るのが楽しい。

それから、実際に自分の言葉や行いで発したことがよかったのか。めぐりめぐって好きな気持ちが届いたのか、いくつか模様に関わるお仕事もいただいた。とてもありがたくてうれしい。

柔らかな空気もあれば、明るく輝くような空気もある。そのひとがより豊かになれるような作品を、提供できるようになりたい。





お読みいただきありがとうございました。おだやかな1日になりますように。