だらだらとゲームやYouTubeばかりしている そんなとき、親はどうすればいいの?
副島賢和(そえじま・まさかず)昭和大学大学院准教授、昭和大学附属病院内学級担当。学校心理士スーパーバイザー。公立小学校教諭として25年間勤務。2006年より8年間、昭和大学病院内さいかち学級担任。2014年より現職。ホスピタル・クラウンでもあり、2009年、ドラマ『赤鼻のセンセイ』のモチーフにもなった。
「ひま」を持て余してゲームをしている子も多い
ゲームをしたりユーチューブを見たり、漫画を読んだりしている子どもを見ると、大人はこんな声をかけたくなります。
「またゲームばっかりして」
「漫画読んでないで、やることやりなさい!」
でも、子どもたちは本当にゲームがしたくてしているのでしょうか。
その漫画が読みたくて読んでいるのでしょうか。
入院中の子どもたちは、ベッドの上でゲームをしていることがよくあります。そんな、入院中の子どもたちと私がどんなふうにかかわっているのかを少しお伝えできればと思います。
入院中の子どもたちにとって優先すべきことは、体の調子を整えることです。どこかが痛いとか苦しいとき、安静にしていなければならないときには、院内学級にはまだ通いません。
私はいつも病棟をフラフラと歩いて、こんな人間がいるんだよ、と何となく存在を子どもたちに伝えています。まだ院内学級に通っていない子も、時々、その子と同じ病室や、近くの病室の子どもたちから、「行ってきます」と声が聞こえてくるので、ベッドの中で、「あの子たちはどこに行っているのかなあ」と気になっているのではないかと思います。
痛みや苦しさがある程度収まって体調が落ち着いてくると、その子たちの「ひま」がはじまります。「ひまだなあと思い始める」と言うと分かりやすいでしょうか。
病院ではずっと治療をしているわけではありません。点滴をしているときも、点滴をスタンドにぶら下げてガラガラと引っ張れば移動できることが多いし、お医者さんに治療をしてもらうのは、1日のうちのほんの数分あるかないかです。
ちょうどそのころ、登場するのが院内学級の担任です。私のほうからその子にあいさつに行きます。「院内学級というところの先生です」という自己紹介をして、「心配なことがあったら、いつでもどうぞ。学校のことでもなんでもいいよ」と、その子や、親御さんに伝えに行きます。
まずは、その子の「ひまつぶし」の相手としてかかわりに行くのです。
不安を横に置いておきたいから、「ひま」をつぶしている
病室をのぞくと、「ひま」がはじまった子は、たいていゲームをしています。でも、本当にゲームがやりたくてゲームをしている子は少ない。いま、休校中でおうちにいたり、いつも通りには友だちと遊べない状況の子どもたちも、「ひま」をつぶすためにゲームをしたり漫画読んだりしているのではないかと思います。
では、子どもたちはどうして「ひま」がイヤなのでしょうか。入院中の子どもたちは、「ひま」な時間があると、ついいろいろなことを考えてしまうのです。
「学校でみんなは何してるんだろう」
「自分の病気ってなんだろう」
「いつ退院できるのかなあ」
「また痛くなったらどうしよう」
「お友達に忘れられちゃうかもしれない」
そんな不安を横に置いておきたいから、ゲームをしたり、漫画を読んだりします。
いまも、多くの子どもたちは、そんな状況にいるのかもしれません。考えたくないことがあると、時間をつぶせることを探します。ゲームやテレビ、スマホや漫画は、手軽に時間を潰せる道具です。
「お友達と思い切り遊びたいな」
「学校に行きたいな」
「コロナってかかったらどうなるんだろう」
「お仕事に行ってるお父さんやお母さんは大丈夫かな」
ゲームは、そんな不安を横に置いておける手軽な方法なのです。だから、「またゲームばっかりして」と声をかける前に、ちょっとその子の表情を見てみてほしいと思います。
もし、生き生きした顔でゲームをしていたら、しばらく見守ってあげてほしいと思います。この大変な時期に、不安を忘れて楽しめる時間は大切です。それに、そんなにゲームが好きなら、将来、ゲームを開発する人やeスポーツのプレイヤーになるかもしれませんよね。
でも、つまらなさそうにやっているときは、「ひま」をつぶそうとしているんだと理解してよいと思います。絵を描いたり、本を読んでいる子も同じです。絵を描いたり本を読んだりしている子には、あまり叱ることはないかもしれませんが、心の中は、ゲームをしているときと同じかもしれない。つまらなさそうにしていたら、「ひま」を潰しているだけかもしれないのです。
せっかくだから、いましかできないことをしよう!
その子がゲームをしているのは、ひまつぶしなのか、好きでやっているのかを知る方法があります。その子に、何か面白そうなことを渡してあげてください。
「ちょっとおしゃべりしない?」
「トランプか何かやらない?」
そして、こんなふうに付け加えるのです。
「あ、ゲームしているのなら、無理しなくていいよ」
ベッドでつまらなさそうにゲームをしている子にそんなふうに声をかけると、だいたいの子は「あ、いいんです。これは後でもできるから」と言います。セーブもせずにすぐ電源を切ってしまう子もいます。そういうときは、ゲームがやりたくてやっているわけではないのです。そんなに楽しくないけど、そこにほんの小さな楽しみを見つけようと頑張っていたのだと思います。
そのとき、私の勝負は「何を持っていけるか」です。その子のベッドの周りにあるものからその子が好きなことを想像します。野球の本があれば、「野球好きなの?」「どのチームが好き?」と声をかけ、おしゃべりをしながら、「ウノやトランプ持ってきたけど、一緒にやる?」とたずねます。トランプやウノをやりながらだと、いろいろなことを話してくれる子もいます。
最初、その子に置いてくるのは、一緒にいたほんの数分、嫌な気持ちにならなかったかどうか。ここは、勝負をかけにいくので、私も緊張してドキドキしているのです。
近づき過ぎていないかな、離れ過ぎてないかな、質問し過ぎたかな、学校のこと触れないほうがよかったかな、なんて、考えています。
これまで、お父さんやお母さんは仕事で、子どもたちは放課後も習いごとや塾で、いつも時間に追われて過ごしていたのではないかと思います。休日も、一緒に過ごす時間がなかなか持てなかった家庭もあるでしょう。なのに、突然、一日中ずっと一緒に過ごすことになりました。私は、この機会をチャンスだと考えてもらえるといいなと思っています。
僕はいつも、入院をした子どもたちに伝えることがあります。
「せっかく入院したんだからさ」と話しかけます。すると、「え、せっかくってどういうこと?」という顔をされるのですが、「せっかくだから、いましかできないことをしよう」「僕たちと一緒だからこそ、できることをしよう」と伝えると、納得してくれます。
せっかく家族がずっと一緒に過ごせるのだから、いましかできないことをしてみませんか。
子どもが「本当に好きなこと」は何か、知っていますか?
お気に入りの本はどれですか。お気に入りのおもちゃは何ですか。
何をしているとき、いきいきとうれしそうな表情をしていますか。
一緒に散歩にでかけたとき、一緒にトランプをしているとき、一緒にご飯を食べるとき、子どもはどんな話をしていますか。
人とかかわるときの一番の根っこは、「相手の好きなものを知る」ことです。「あなたの好きなものを知りたいな」という気持ちは、「あなたのことを大切に思っているよ」というメッセージなのです。
家族で一緒に過ごす時間のなかで、一つヒントになればいいなと思います。
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