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子どもたちとのオンライン授業、講師として喜びを感じる時

 私がオンライン授業を始めたのは、今から10年以上前のことです。ニュージーランドに渡ることが決まった私に、それまで家庭教師の指導していたご家庭から、何とか最後まで指導してもらえないかとお声がけしていただいたのがきっかけでした。  

  当時はまだオンライン家庭教師は全く無名だった時代。オンライン授業をするためのシステムも不十分で、私自身うまくできるか不安のほうが大きかったのを、まるで昨日のことのように思い出します。うまく映らないノート。よく途切れる音声。何度も指導を諦めかけましたが、それでも「オンラインでもこんなにしっかり教えてくれるのか」という身に余るお言葉に支えられながら指導を続け、無事合格の知らせを聞いた時は、嬉しくて思わず泣いてしまいました。  

 あれからのテクノロジーの進化は目覚ましく、今のオンライン教育システムの充実ぶりは、当時とは比較できないほどになりました。そしていま私は授業の90%以上を、オンラインで実施しています。その間の成果を通し、受験指導に関して言うなら、オンライン授業は対面授業と比べても何の遜色もないものだと確信しています。特に個別指導であれば、対面授業以上の合格実績を出せると言っても言い過ぎでは有りません。その秘密は次回にゆっくりとお話するとして、今回は私がオンライン授業を通して感じている、講師としての喜びについてお話ししたいと思います。  

 オンライン授業で私が一番楽しいと感じるのは、オンライン授業には子どもたちを「楽しませる」様々な仕組みがあることです。塾の教室で教えていた頃は、テキストと黒板だけが活用できるツール。せいぜい時々実物を持ってくることもある程度。これでは子供は楽しいはずがなく、何とか話術や授業の内容で子供を楽しませるよう知恵を絞るのが精一杯。しかしそれには当然限界がありました。  

 でもオンライン授業なら、インターネットという魔法のツールがあります。理科や社会の授業では、一緒に動画で実験を見たり、工業地帯見学を疑似体験したりできます。動画を見ながら色々話しているときの、子どもたちの楽しそうな笑顔は最高のプレゼント。その上、視覚と聴覚の双方に働きかける動画は、デジタルネイティブの子どもたちにとって、最も効率的に記憶に残せる手段でもあります。もちろん画面上にすぐ情報を共有できるので、忘れ物の心配もありません。  

 受験は長く辛い道のり。その旅路を少しでも楽しいものに変え、効率を上げて子供の負担も減らせるオンライン授業は、中学受験指導の形を変える「革命」であるとさえ私は思っています。何故なら無味乾燥な暗記学習から子どもたちを抜け出させ、疑似体験を通して興味関心を持ちながら学んでいける学習法だと思うからです。  

 またオンライン学習では生徒の顔を、とても間近で見ることが出来ます。そのおかげで子どもたちの状態把握もしやすく、サポートも対面よりしやすいとさえ感じます。顔色が悪ければすぐに声をかけられますし、解答に苦戦しているときもすぐに顔を見て分かります。なんだか対面のときよりも、もっと身近に子供を感じられるようにさえ思うのです。  

 そして何よりも、対面であれば決して教えることが出来なかったであろう、遠方の生徒を出会えるのも本当に嬉しいこと。海外から日本全国はもちろん、世界中に住む生徒に指導ができる。こんなワクワクした体験は、オンラインなくしてはありえないことです。おかげで本当に色々な生徒に巡り会えて、楽しく指導をさせてもらえています。子どもたちに海外生活を伝え、世界のことを伝えられることも魅力の一つです。  

 まだまだ日本ではオンラインは主流ではなく、あくまで対面の代替手段かもしれません。しかし世界では教育のオンラインはすごいスピードで進んでおり、それは日本にも必ず訪れます。オンライン化が進む未来を生きる子どもたちにとっても、早くからオンライン授業になれることは、アドバンテージだと思います。  とりとめもなく私の思いばかり話してしまいましたが、いかがでしたでしょうか。少しは私がオンライン授業を楽しんでいることが、伝わりましたか。次回はオンライン授業を通して私が目の当たりにしてきた、子どもたちの成長についてお話します。お楽しみに。

筆者:山口たく 

1972年生まれ。元、御三家中や最難関国公私立高校受験を指導する塾講師。ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント。ニュージーランド在住。『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。二人の女の子を子育て中。著書に『学校教育がガラッと変わるから親が知るべき今からはじめる子どもの学び』、最新刊に『中学受験オンライン学習法』(ともに風鳴舎刊)がある。

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