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窒素と燐酸とカリウムと稲

ゲーム、天穂(のサクナヒメ)に関わるインタビュー記事を読んで、その内容の深さについて感想を書くシリーズです。

前回はぼく自身が低アミロース米というものを初めて知り、おそらくその品種を生み出すまでの先人の労苦は、こんな素人の想像では補えないほどの歴史となっているのだろうと思っていました。

インタビューではそこまで深堀りされてはいなかった。

稲の品質の上げ方を知るとゲームが楽しくなる仕組

天穂を開発する上で一番読み込んだ資料であるとえーでるわいす側が述べただけでしたね。とはいえ、ゲーム上で稲を育てるセクションにおいては品質が毎回(稲が育ち切るまで一年間かかるため、その一周を1ターンとしての毎回)評価対象となり、かなり細かく分析された結果が表示されるため、このアルゴリズムを形成する上で役に立ったのだという開発側からのご感想には強く納得できます。

実際主人公である姫は完成した米の品質によって強さのパラメータが大きく変わる、つまり米の質がPCの質を左右するとも言えるわけでして、人間が栄養を摂取して健康を維持したり不調をなおしたりするそれとは些か種類が異なるゲーム性が楽しめるのです。

そこだけピックアップするとファンタジーっぽく思えますが、参照データは人間が実生活で稲を栽培するために利用するものであることにユーザは心地いい違和感を覚えられます。

例え就農していない人間にとっても、実際に利用できるデータもしくは考え方であるならひとつ真面目に取り組んでみたいと思えるのではないでしょうか。

そしてゲームに真面目に取り組むということは、(良くも悪くも、ゲームは短期的に快楽をユーザに提供することが多いため)即座に結果が目に見える形で反映されるということ。

つまりその「ゲームを楽しむため」に知識を蓄えるという行為における相乗効果はかなりのものだと思えます。

肥料の三角形

さらに

土の養分の三大要素:N(窒素)、P(リン)、K(カリウム)が、年間の稲作を通じてどう増減するか?とか、田んぼの水温と気温、地温の関係についても論文で調べました。

肥料の与え方は天穂でも屈指の戦略ゲーム的部分であり、

日本植物生理学会のHPを見ても、

葉肥、実肥、根肥、蔓ぼけという用語は農業で使用される用語で、3大肥料成分の役割、栄養成長と生殖成長(あるいは栄養貯蔵)が均衡を保つ結果を大まかに表現したものです。

とあります。読み進めると、

窒素は葉に関わる=基礎的な成長

窒素は栄養成長と呼ばれる状態を促進でき、生殖成長を抑制するそう。栄養成長は種や実を形成する生殖成長ではない成長のことらしく、つまり葉を育てられる成分だと初めて知ることができました。

光合成をおこなうための葉緑素、体そのものを形成する蛋白質も窒素。つまり植物が植物であるために必要であり、どうやって植物が大きく成長するか=光合成で、自分を成長させるための成分をどれほど自分の体内に発生させるかは葉にかかっている。そこで窒素は「葉肥(はごえ)」といわれるそうでした。

窒素不足になると、色素が黄色になってしまったり枝分かれが起きなくなったり、大きさに直結するとの……

それだけでなく、与えすぎると起きる現象が「肥満化」。上記の通り葉部分にだけ影響が及んでしまい花や実の形成に以上を来すということでした……天穂で再現される結果そのままで驚きます。

燐酸

遺伝情報を完遂させる為に必要とされるのが燐酸であるそうで、デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)を構成しているとの……

遺伝情報に基づき、生物の身体を形作る為の設計図となるこれらの形成をも促成させられる栄養ともなると、最早栄養と形容していいのかどうなのか難しいと思えてしまいます。

植物で該当する箇所、というよりは時期が花や実をつける時。実が大きくならないとかは農家に深刻な被害を齎(もたら)しそうですね。そのため燐酸は実肥(みごえ)と言われるとか。

あげすぎると土壌が病むらしいですが……生命の情報を与えられすぎると、その情報量の重さに自然を構成する物質は破壊されてしまうのでしょうか……

カリウム

燐酸もそうみたいではありますが燐酸は実はまだ解明されていない部分も多いらしく、こちらカリウムははっきりと根の成長に関わるそうで根肥(ねごえ)と呼ばれるそうです。

光合成や呼吸をおこなうからか葉は炭水化物のような養分を貯めているようで、それらを根に送れるようです。

足りなくなると窒素のように葉の先端が枯れたように黄色く変色、実の品質まで下がるとの……逆にカリウムが多くなりすぎるとマグネシウムの吸収が妨げられるという新しい情報が出てきてしまいました。

後記

各資料に依るとこの肥料三角形の相関は農業専門の概念であったようですが、近年ではNHKの趣味の園芸やさいの時間、2017年7月号でも取り上げられるほど重要な考え方となっているようです。

肥料の種類が草の各部分を示してはいますが、分化、結実、成長のどのようなシーンに於いてもどの肥料もあまり欠けてはいけないほどそれぞれ重要であるみたい。とりわけどの成分でも太陽に近い葉ばかり大きくなると、当然下の葉は大して育たなくなり、光合成のバランスがいい状態とはならなくなるとの……

草花を育てる上では恐ろしく大切なことながら、普通に生活していると例えきちんと義務教育を受けていても 未知であることばかりに触れたような感覚が残ります。

水田に携わる家庭の子息たちが天穂で遊ぶと将来的に役立ったりするのでしょうか……それは言い過ぎなのでしょうか。

既にかなりの情報量となっただけでなく2200字も越えてしまったためこの続きはまた次回にいたしましょう。お付き合い有難うございました。

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