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「言葉」が変わると考え方も変わるということ:考えるって、どういうこと?

 ヒトは、外界や体内からの入力、「言葉」と「イメージ」の「記憶」をもとに、「感情」で即応し、「言葉=論理」で判断して行動する。

●情報統合のための「イメージ」

 「五感(外界)」「内臓」「骨・筋肉」で受けた刺激を情報として「脳」に運び、「イメージ」として大脳皮質で統合・抽象化し、脳内で再構成して、最終的に抽象化して「言葉」として理解する。同時に発生する「イメージ」には、「感情」「意識」や「記憶」している「経験」から再構成されるもの、「イメージ」の相互作用により新たに構成される「イメージ」もある。「経験」は「イメージ」そのものや、それにともなって発生した「感情」「意識・非意識」「対処」などの組み合わせの「記憶」であり、必要に応じて「想起」される。

●即応装置としての「感情」

 「感情」は、「非言語」による「暗黙の意識(非意識)」であり、同時に発生する複数の「イメージ」とその「相互作用」を評価し、即時の対処をうながす。例えば、「傷」が発生すると、まず免疫系・内分泌系が反応し、次に「痛み」から形成された「イメージ」を評価し、非意識の「想起」から「恐れ」「嫌悪」などの「感情」を誘発し、傷口を押さえるなどでの止血の動作を即時に実行する。

 それと並行して逐次翻訳した「言葉」を使って「意識」して状況分的と対処にあたる。「感情」の危険信号を「言葉」として翻訳し、「これはカッターで切った怪我」であること「傷は浅い」ことを「認識(意識)」し、過去の「経験」を「想起(意識)」し、「論理的な思考(意識)」により「水でよく洗って、絆創膏をきつくはる」という行動を選択、実行する。

 「意識」は「非意識」と連結して「イメージ」を形成し、「記憶」し、必要応じて「想起(非意識)」して「感情」の誘発や、「論理的」な「思考(意識)」をサポートする。

 これらの一連の反応は「ホメオスタシス(恒常性)」:一定の状態を保とうとする働きであり、「傷」によってくずれたバランスをもどし均衡を保とうとする一連の反応だ。

●「言葉」による「論理的判断」

 「言葉」は、「イメージ」や「感情」や「経験の想起」などの相互作用を「認識(意識)」するための翻訳手段であり、「論理的」に思考(意識)するための道具だ。「イメージ」や「感情」を契機とする即時反応に比べて、翻訳や論理的思考の処理に時間がかかるが、より適切な反応を選択・実行することができる。

●「知識」と「暗黙知」の記憶

 「言葉」に翻訳された「経験」は「知識」として「記憶」され、「言葉」に翻訳されない「イメージ」は「暗黙知」として「記憶」され、必要に応じて「想起」し脳内の思考の連鎖に組み込んで活用する。

 そして、私たちは、「感情」と「思考」「暗黙知」と「知識」「非意識」と「意識」、「イメージ」と「言葉」のネットワークの連鎖のなかで考える。

参考書籍:
[1] アントニオ・ダマシオ(2019), "進化の意外な順序", 高橋洋訳, 白揚社
- Antonio Damasio(2018), "The Strange Order of Things: Life, Feeling, and the Making of Cultures", Pantheon


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