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本を読みながら、今年1年の自分の抱負を考える

あけましておめでとうございます。
年末に公開した2018年振り返りが思いのほか、いろいろな方に読んでいただけたようでうれしいな、と思ったのとnoteは書き手のそういう「書くこととそれが受けられることの承認欲求を満たす」ということにおける体験設計に非常にすぐれたプラットフォームだな、と実感しました。

なので、今年はもう少しいろいろと書いていければいいな、と思っています。

抱負抱負と言うけれど

僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる
- 高村光太郎「道程」

僕の好きな言葉の一つなのです。目標と計画を立てる、その目標が大きく、高ければ高いほど自分自身はストレッチして、より高みを目指すことができる、というのは確かにそのとおり、ただ一方で目標を立てずにその場その場を楽しむことに集中した結果として残ったものもまた立派な「結果」であるとも思います。
なので、今年は敢えて目標と計画をゆるくして、なにごとにも区別をつけずにやっていこうかな、と思います。

とりあえず、何も考えずに読書した年末年始

年末年始は、とにかく本を読みました。
1日から2日に一冊くらいのペースで、とにかく多読してみました。

1.  野の医者は笑う―心の治療とは何か?
2. この世界が消えたあとの科学文明の作り方
3. 断片的なものの社会学(再読)
4. UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ
5. FACTFULNESS
6. 具体と抽象
7. 貨幣の「新」世界史
8. アメリカ・インディアンの書物よりも賢い言葉 

野の医者は笑うー心の治療とは何か

ある臨床心理士が沖縄で、ヒーリングみたいなスピリチュアルな世界観に出会い、ヒーリングの成り立ちから臨床心理学との関係性について考えるという内容。面白かったのは、ヒーリングや治療を行う、治療者は「治療を通じて、患者を治療するだけでなく、治療者自身もいやされている」という視点や治療者となれるのは、自分自身も治療を必要とした過去があるからだ、という点で、「治療」のもつ、精神的、文化的、社会的背景を考えさせられました。

この世界が消えた後の科学文明の作り方

文字通り、科学文明が終焉し(大災厄や大崩壊などと呼称)たあとに、人類がどのようにして科学文明を再構築するか、という架空の設定によって記されたガイドブックのような本。この本の視点で面白いのは、文明や社会をリバースエンジニアリングするがごとく、成立したものを解体して、その成り立ちを紐解くことにあります。
現在の社会は、いろいろな経済的・社会的変遷をへてたまたま今の形に落ち着いていますが、解体してみると別の可能性も感じることができて面白かったです。

断片的なものの社会学(再読

以前にも読んだ本ですが、「野の医者は笑う」の流れから、ふと思い立って再読してみました。この本は、普段生活しているとなかなか出会えないであろう社会境遇の人へのインタビューや観察によって紡がれている本。
ここに書かれているのは、「なにも起こらない日常」であり、なにも起こらなない無数の日常がこの社会を作っていて、それがこの世の中の空気を作っていることを改めて実感させられます。
読みながら、社会に重くもたげる精神性に非常に興味を持ちました。

UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ

IA(インフォメーション・アーキテクト)として、20年以上のキャリアを重ねるPeter Morvilleによる著作。Peter Morvilleは10年以上前に出版された「アンビエント・ファインダビリティ」が自分の中のバイブル的な本の一つになっているのですが、テクノロジー・社会・人間を本質的な目で捉えて、その成り立ちと未来に目を向ける予言的な本として印象的でした。今作もその視点はそのままに、Peter Morvilleのキャリアを総括するような集大成的な内容だったと思います。本書のスコープは「計画」なのですが、これはプロジェクトマネジメントのような特定の領域だけでなく、汎用的にいろいろなものへの転用が可能な型として整理されています。
STAR FINDERと呼ばれるフレームの中の「FINDER」の部分。

F : Framing
I : Imagining
N: Narrowing
D : Deciding
E : Executing
R : Reflecting

というフレームで、計画の対象をフレーミングして、そこから実行、振り返りまで。
Peter Morvilleの視点は、「人生」そのものに向かっていて、最終的なデザインの対象は「人生という体験」になっているのだなぁ、というのが印象的でした。

FACTFULNESS

バイアスとも近い考え方と思いますが、世界は「こうである」という誤った認識を行ってしまう人間の本能を10個に分類、それぞれに対して誤った認識を防ぐ方法について書かれています。
タイトルにもありますが、本書で一貫して語られているのは、「事実=データ」に立脚した視点を、ということです。ただ、データ自体も誤った視点、誤ったカットで観ると事実とは違った解釈になってしまうので、捉えるべきデータと、それをどの視点でカットするのか、そのときに誤った思考に陥りがちな10個の本能に気をつけて、正しく世界を見られるレンズを持とう、ということがシンプルに書かれています。
この年末年始に読んだ中でも特に印象に残っている本です。

具体と抽象

FACTFULLNESSを読んでいて、ものごとを抽象的に考えることと具体的に考えること、ということに興味が出たので読んでみました。
とても読みやすい本で、1時間ちょっとあれば読めてしまうくらいの手軽さなのですが、この本では抽象的な思考と具体的な思考についての違いについて書かれています。
思考の抽象化ができている人と、具体的な視点でものを見ている人はそもそもの話のプロトコルが違っていて、まずはそこに気づかなければ会話が成り立たない、というのはまさにそのとおりだと思いました。
どちらが良い・悪いというわけではなく、状況によっても抽象的思考モードのときと具体的思考モードの時が切り替わるように、「どのモードで、考えコミュニケーションしているのか」という構図に気付けるかどうかがポイントだと思いました。

貨幣の「新」世界史

メルカリの山田進太郎さんがブログで良かった本の中にあげているのを見て、読んでみたらかなり面白い本でした。

貨幣、経済の歴史を経済学などからだけではなく、生物学・心理学・宗教学など、幅広い領域から考えている点が興味深かったです。
貨幣の歴史の中で、貨幣そのものの歴史よりも「債務」の歴史の方が古く、貨幣経済が成立する前から債務は存在しており、それは余剰農作物などを、人へ貸し付ける代わりに返済義務を負わせる、というところから始まったのでは、とする仮説が印象的でした。また、貨幣経済の発展の中で社会における、物質的経済(市場経済)と精神的経済(贈与経済)について、と豊かさにおける宗教上の教義に目を向け、物質的な豊かさと精神的な豊かさはどちらかが善悪ではなく、バランスされるものであり、とくに古代ヒンドゥー教においては物質的な豊かさを追求する体験を経て、精神的な豊かさへ向かうので、それは解脱への通過点である、とする考え方がまさに現代にも通ずる人間の本質行動とリンクする部分もあるな、と興味深く読みました。

アメリカ・インディアンの書物よりも賢い言葉

貨幣の「新」世界史を読んでいて、「アメリカインディアンの時間は過去と現在と未来が湖のように一箇所に集まっている」という一節を目にして、彼我を分けて考え、時間を客観視する西洋の考え方や、行く川の流れは絶えずして、、、という東洋的な考え方とも違うような気がして興味を持ちました。
血縁による分け隔てがなく、社会が一つの共同体として成立している。宇宙も自然も人間も動物もすべてが世界の一部であるという考え方のもとに、その全てから学びを得る、言い伝えやストーリーが存在している。人生訓は物語と口伝によって語り継がれ、物語が持つ意味が大きい。メディスン・マンやシャーマンといったヒーラーが治療を司り、治療という行為が神聖なものとされているが、実際彼らの行う施術は医学的にも治療効果の高いものであることがわかっている。
など、現代社会に対するヒントがたくさん得られ、学びが多かったです。

読んだ本に奇しくも共通しているもの

ただ、興味の向くままに仕事に関係のあるものも一見なさそうなものも関係なく、とにかく読んでみることを心がけてみましたが、面白い共通点が見つかったような気がします。
それは、社会・文化・経済と精神における関係、とくに「社会の構成員としての人間がどういう精神性を持つか」という内容に直接、または間接的に言及しているものを多く読んでいる点です。
その中でも貨幣の歴史の中で触れ切れなかった、「社会」と「経済」の成り立ちにもとても興味を持ったし、宗教という切り口からは、古代ヒンドゥー教、とくに「プルシャルタ」と言われる人生で追い求めるべき4つの目的の考え方は面白かったのでもっと、古代ヒンドゥー教について調べてみたくなったのと、個人的に昔から興味をもっている曼荼羅についてももっと深めてみたいと思いました。
また、野の医者は笑う、を読んで面白いと思った「治療」に対する文化的、社会的な関係性や歴史についても調べてみたくなりました。
治療はそもそも、「病は気から」、その逆もしかり(プラシーボ効果)で、病気かもしれない気がする、というのと反面、治った気がする、と思わせるのも治療者の役割だとすると、治療者が担ってきた社会的な役割とその歴史、また文化的は背景っていろいろ調べ甲斐がありそう、とも思いました。

というわけで

抱負は敢えて語らず、といいつつ文章を書きながら、これ自体が今年やりたいことなのかもな、と思いました。
自分の目標を、自分という社会的な存在とリンクさせるのではなくて、自分という一個人の精神世界を深めて広げる、知識収集の旅。これが2019年のやりたいことその1かもしれません。
次の10年に備えて、社会、文化、そしてその中で生きる自分の見識やいろいろな生き方、人生観に触れることで新しい自分をフレーミングすることが今年の僕の抱負です。

今年もよろしくお願いいたします。

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