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web制作スキルマンダラートの8つの領域の解説とその勉強法 〜vol.2 ディレクション編〜

松本市の制作会社でwebディレクター・マーケターをしている本山です。

先日Twitterで投稿した『web制作スキルマンダラート』。公開から20日ほど経ちましたが、いまだにRTやいいねをくださる方がおり非常に嬉しい限りです。

さて、本日は前回の『web制作スキルマンダラートの8つの領域の解説とその勉強法 〜vol.1 ビジネス編〜』に続き、vol.2 ディレクション編 をお送りしたいと思います。

web制作におけるディレクションは業務の幅が広く、多くの知識・スキルを要する職種です。「コーダーとデザイナーが行う仕事以外の全てをカバー」「大工の世界における棟梁的な役割」「航海をする際に目的地まで船員・乗客・積荷を安全に送り届ける船長」などといろいろな喩えをされるディレクションの仕事ですが、一義的に定義することは難しいと考えています。ただその中でも自分なりにディレクションを定義をすることには意義があり、その信念・思いを持って仕事をするのとそうでないのでは成果に大きな違いが出てくるとも思います。(今回は「ディレクションはなんたるか?」を深掘りすることはしませんが、このテーマについてもいずれはnoteにまとめます。)

一方で先人たちが残してきたweb制作におけるディレクションのテクニックやスキル、考え方を学ぶことはディレクションという領域が曖昧かつ仕事内容が複雑で捉えどころのない仕事をする上で有意義であることに違いありません。

そこで今回のweb制作スキルマンダラートのディレクション編では、ディレクションにおけるスキルや知識の体系化を行い、整理しました。その中で自分に足りないものをいかに学ぶかをお伝えできればと思っています。

※私本山が今まで経験したことや書籍、情報に基づいた記事になります。他の有益な情報源があれば教えてもらえると嬉しいです。

1. PMBOK

PMBOKとは「Project Management Body of Knowledge」と言い、プロジェクトマネジメントの知識を体系的にまとめたノウハウです。1987年にアメリカの非営利団体PMIがガイドブックをまとめて以来、今ではプロジェクトマネジメントの世界標準と言われています。

はじめに断っておくと、web制作においては全てのプロジェクトにおいてPMBOKが必要ではないです。特に小さいサイト制作であれば、細かく管理することで、管理コストが増大してしまうため不要な場面もあります。大規模なプロジェクトでも、制作会社独自のノウハウやドキュメントがあることがほとんどでしょう。ただPMBOKを知っていることでどのようにプロジェクトの遂行するのか、考えられるリスクは何なのかなどプロジェクトに関する基本的な知識がつきます。

例えば、PMBOKの知識エリアの1つに「ステークホルダーマネジメント」があります。ステークホルダーとは「利害関係者」のことで、プロジェクトの意思決定や成果に大きな影響を受ける対象のことです。多くは決裁者(やその決裁者に影響を与える人)と捉えて差し支えはないです。プロジェクトを円滑に進めるにはこのステークホルダーと良好な関係を築くことが1つのポイントになりますが、ではどのようにステークホルダーを巻き込みながら、うまくプロジェクトを進めていくかを考えることが「ステークホルダーマネジメント」になります。

もちろん今までの経験則でステークホルダーに対してうまく立ち回ってるディレクターもいると思いますが、知識として覚えておく、管理の対象として考えておけることは重要ですし、何よりPMBOKの中にも多くの知見があるため、知っておくに越したことはありません。以下にPMBOKが提唱する知識エリアと簡易的な説明をまとめます。

PMBOKの知識エリア
1. スコープマネジメント(プロジェクトの範囲に関するマネジメント。スコープを明確にし、タスクを定義する)
2. スケジュールマネジメント(時間あたりの生産性を高めるためのマネジメント)
3. コストマネジメント(見積もりと予算の設定を行い、それを超過しないように制御するマネジメント)
4. 品質マネジメント(プロジェクトのクオリティを担保するためのマネジメント)
5. リソースマネジメント(人材や資源の調達・管理を行い、組織のマネジメントを行う)
6. コミュニケーションマネジメント(プロジェクトに関わる全ての人とどのような形でコミュニケーションを取り、設計するマネジメント)
7. リスクマネジメント(プロジェクトにとってマイナスなリスクを予測・排除し、円滑にプロジェクトを進めるためのマネジメント)
8. 調達マネジメント(パートナー・外部の業者や必要な資源を調達・管理する)
9. ステークホルダーマネジメント(ステークホルダー(利害関係者)をうまく巻き込み、必要な情報を提供しながら、円滑にプロジェクトを進めていくためのマネジメント)
10.統合マネジメント(9つの知識エリアを統合し、マネジメントする位置づけ)

情報源
PMI日本支部のサイト
PMBOKとは?プロジェクト達成のための世界標準知識を学ぼう(インターネット・アカデミー)
『失敗しないweb制作 プロジェクト監理のタテマエと実践』(みどりかわえみこ 著)
『webプロジェクトマネジメント標準』(ロフトワーク)
※上記の本は情報が古いですが、webサイト制作のプロジェクトをPMBOKで管理している点で列挙してあります。

2. マネジメント

マネジメントについては、1のPMBOKに通ずるところがあります。ビジネスにおけるマネジメントは部下やチームの「目標管理」や「業務の進捗管理」のことを指すことが多いです。つまり経営や組織のマネジメントです。一方ディレクションにおけるマネジメントはプロジェクトにおける管理(=マネジメント)を指します。ここの定義はしっかりと分けておいた方が良いでしょう。

内容は、PMBOKと重複しますのでここでは割愛します。ちなみにディレクションの分野のマネジメントとは違いますが、ドラッガーのマネジメントは名著なので一読することをオススメします。

情報源
マネジメント[エッセンシャル版](ピーター・F・ドラッカー)

3.コミュニケーション

ディレクターの必須スキルです。全ての仕事の基礎となるスキルと言っても過言ではないスキルであり、ディレクターであれば、よりコミュニケーションのレベルが高くなくては務まらないとも思っています。
ディレクターはクライアントと制作者をつなげるハブ的な立ち位置になり、必然的にコミュニケーションは多くなる職業です。コミュニケーションにおいては3つの分野と対象からスキルを整理すると考えやすいです。

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基本姿勢・心得
クライアントの要望や要求を制作チームにそのまま伝えるディレクターを「伝書鳩」や「御用聞き」というように揶揄されることもあります。本来ディレクターが目指すべき目標はwebサイトを活用して、クライアントのビジネスの課題解決を行うことです。これを念頭に双方へコミュニケーションをするとすれば、クライアントに対しては、要望や要求をそのまま受け取るのではなく、「顧客の要望をそのまま叶えることが成果につながるか?」という視点で話さなければなりません。

また制作チームに対しては、なぜこのワイヤーなのか、なぜこのデザインなのか、なぜこの修正をしなければならないのか?という背景も一緒に指示を伝えると良いでしょう。なぜならば、背景を伝えることで制作チームのアウトプットの質が良いものになるからです。例えばデザイナーさんに対して「ナチュラルなイメージで作ってください」と言うより「このカフェは内装に木をたくさん使っていて落ち着きますし、オーナーの人柄も柔和で柔らかい雰囲気の方なので、ナチュラルなイメージで作ってください」と具体的に背景を伝えた方がデザイナーとしては、成果物のイメージが湧いて作りやすいでしょう。

対面(オンライン)コミュニケーション
ここでの対面(オンライン)コミュニケーションはクライアントのミーティング、制作チームへの作業指示など口頭でのコミュニケーションのことを指します。(オンライン)としたのは、ここ最近コロナの影響によってテレワークを余儀なくされ、Zoomなどによるウェブ会議が増えてきているためです。いずれにせよ、口頭でのやりとりのコミュニケーションスキルはディレクターにとって必須です。

クライアントに対しては、例えば営業フェーズであればわかりやすく提案内容を伝える力であったり、制作フェーズでクライアントの疑問や不明点を聞かれたときに明瞭な回答ができるような言語化能力が必要です。もちろんそれだけではなく、ミーティングの場でアイスブレイク的な話をできる雑談力だったり、クライアントの本質的な課題を引き出すヒアリング能力(営業 / 提案領域でも後述します)も必要になるでしょう。

制作チームに対する対面コミュニケーションで大事なのは「話しかけやすい雰囲気を作る」ことと「小まめに話しかけて気にかけること」です。チームの結束力や成果をあげる力はコミュニケーションの数や質と相関関係があり、より密にコミュニケーションをしているチームの方が良い成果物を作れるのは間違いないと考えています。もちろんデザイナーやエンジニアは集中して作業に打ち込む時間は必要であるため、話しかけるタイミングを見計らう必要はありますが、ちょっと席を立ったり、集中力が落ちてきたなーと言うタイミングで話しかけると良いと思います。

テキストコミュニケーション
2000年代にメールでのコミュニケーションが当たり前にビジネスに用いられるようになり、2010年代にはチャットツールやプロジェクト管理ツールが普及したことでテキストでのコミュニケーションはより一般的になったと言えるでしょう。そしてこのコロナの影響によりテレワークが進み、テキストコミュニケーションの量が増えたのは間違いありません。テキスト上で相手にわかりやすく伝える、伝わるようにするにはそれなりに訓練を積まなければいけません。例えば文節を短く区切る、箇条書きにする、構造化するなどの文章に対する知識や言語化能力はもちろん、マークダウンなどの記述法を覚えることも必要です。

クライアントに対してはまだまだメールでのやりとりが主流な制作会社も多いのではないでしょうか?メールにはメールのマナーや書き方があるため、ここは気をつけなければいけません。クライアントによってはこちらのメールの書き方で怒ってしまったりクレームにつながったりすることもあります。細心の注意を払ってメールの文章を書く必要がありますし、経験が浅いディレクターの方や社会人経験が短い人は先輩や上司にメールの添削をしてもらうことをオススメします。

社内ではチャットツールを用いることが主流になってきたと思いますが、ここでのテキストコミュニケーションは身内のものなので、ビジネス的な堅いやりとりより、絵文字や感嘆符を使ったコミュニケーションの方が良いと考えます。(最低限の言葉づかいやマナーは弁えましょう)というのもテキストコミュニケーションは送った相手の感情が見えづらいため、淡々と句読点だけで述べるとどうしても冷たい印象になってしまいます。さらに相手が怒っているのか、機嫌が悪いのかがわからないと、チャットを送って良いのか躊躇してしまうことが多いです。話しかけやすい雰囲気、呼びかけやすい空気感を醸成することはディレクターとして非常に重要な役割だと考えます。

情報源
『人を動かす』(D・カーネギー 著)
『伝え方が9割』(佐々木圭一 著)

4.プランニング

webサイトの戦略や企画を考える力です。ビジネス編でもお伝えした通り、webサイトはクライアントのビジネス課題を解決するための手段の1つです。そしてプランニングとはビジネス課題をサイト上でどのように解決に導いていくのかを考える企画力・戦略を立てる力のことです。「プランニングするためには非凡なアイデアや特殊な能力が必要なんでしょ?」と考える人は多いですが、僕はそうは思いません。というのはアイデアは既存のアイデアをちょっと変えたり、組み合わせを変えてみたり、視点を変えてみたりすることだからです。僕はその考えを本(下記の情報源参照)から学びましたが、webサイトのプランニングも同様だと思っています。そのために、webサイトのゴールまで導くまでのセオリーは知るべきですし、他のサイトがどのように作られているのか、どのように設計されているのか、どんなコンテンツがあるのかを学ぶべきです。インプットの数が多ければ多いほど、自分のアイデアの引き出しが増え、その組み合わせの数が増えますし、いろんな視点からの戦略が考えることができます。

情報源
『アイデアのつくり方』(ジェームス W.ヤング)
『考具』(加藤 昌治 著)

5.情報設計(Information Architecture

webサイトは訪れてくれるユーザーに伝えるための情報があります。情報には大きく言語による情報とビジュアルによる情報の2種類あり、情報設計は主に言語による情報の優先度を考える作業になります。

例えば、私がよくお手伝いさせていただく業種にクリニックサイトがあります。クリニックのサイトの情報の優先度で言うと、まずは診療時間・交通アクセスです。病気になる時は急を要することが多いので、まずクリニックのサイトを見る人は「今やっているのか?場所はどこなのか?」を知りたいユーザーが多いです。次に知りたいのは「どんなお医者さんが診てくれるのか、信頼がおける人なのか、院長はどんな人なのか?」です。そして、医院の特長やどんな設備があって、内観はどうなのかなどが次の優先度が高い情報になります。(あくまで一般的なクリニックの例です)

以上の通り情報には優先度があって、その優先度にしたがってサイト設計をするべきです。TOPページのメインビジュアルに院長の写真をデカデカと載せているサイトもありますが、ユーザーは院長の顔が見たいわけではありません。ユーザーはどんなデバイスからの流入が多いのか、どのページの滞在時間が長いのか、ヒートマップではどのボタンリンクが押されているのかでユーザーが知りたい情報はおおよそわかってきます。そのようなデータを見ながら情報の優先度を設計して、webサイトを構築することをオススメします。

情報源
『情報アーキテクチャ 第4版 ―見つけやすく理解しやすい情報設計』(Louis Rosenfeld, Peter Morville,Jorge Arango 著 オライリージャパン)
『今日からはじめる情報設計 -センスメイキングするための7ステップ』(アビー・コバート 著)
・webサイトのワイヤーフレームの作り方 ― XDを開く前の3ステップ(重松佑 / Shhh inc.)

6.ライティング

ライティングはwebサイトの成果に大きく影響を与えるスキルです。なぜならウェブサイトの成果はコンテンツが全てだからです。コンテンツがよくなければどんなにカッコイイデザインでも、どんなに優れたアニメーションでも成果は出ません。またwebにおけるライティングはマーケティング領域における「SEO / SEM」にも関係してきます。

ライティングはwebサイトの成果を決める重要な1つのスキルで、コンテンツの良し悪しを決めるのはこのライティングの技術にかかっています。webディレクター自身がライティングの技術を身に付けるべきかどうかは賛否が別れるところですが、私個人としては、多少は書けた方が良いと思っています。(多少のレベルの定義が難しいですが...)
またユーザーにとって良い文章か、webサイトの成果や目標達成につながるモノになっているかという視点で判断できる目は持っていないといけないと考えています。

一方でwebサイト制作におけるライティングの難しいところは、誰がその役割を担うかということです。受託制作を生業にしている僕らは、あくまでwebサイト制作のプロであって、クライアントの商材やサービスのプロではありません。そのため原稿については

1. クライアントに提出してもらう
2. ライターをアサインしてインタビューをして原稿を書き起こしてもらう

どちらかになることがほとんどです。
2の場合はプロにお願いすることになるので問題がないのですが、問題は予算がなく自分たちで原稿を書いてもらうという場合です。クライアントに原稿を提出してもらう場合のいくつか問題が生じます。

1つ目は文章のクオリティが低く、そのままwebサイトに掲載できないパターン。そのため多少の手直しは必要で、その推敲作業はディレクターが担う場合がほとんどです。その意味で、ディレクターがライティングが多少はできた方が良いと考えています。

2つ目はクライアントに依頼した文章がいつまでも上がってこず、納品できないというパターン。スケジュールもあるので、先にデザインだけ作って走るということもあると思います(個人的にはこのパターンは嫌いです。なぜならばwebサイトはコンテンツファーストであるべきで、そのコンテンツをいかにユーザーにわかりやすく伝えるかがwebサイトの役割だと思っているため、先にデザインだけ走るのは本末転倒だと考えるからです。)

原稿が上がってこない場合のリスクに備えて、あらかじめ段取りをしっかりとしておくべきです。例えばクライアントが原稿が書きやすいように、どんなコンテンツが必要かリストを作ったり、どんな視点で書けば書きやすいかなどのサポートなどです。その意味でやはりディレクターはライティングに関する知識を持っていることは必要だと考えます。

情報源
『沈黙のWebライティング —Webマーケッター ボーンの激闘—』(松尾 茂起 著)
『沈黙のWebマーケティング −Webマーケッター ボーンの逆襲− ディレクターズ・エディション』(松尾 茂起 著)
『書かなきゃいけない人のためのWebコピーライティング教室』(森田哲生 著)
Webライターは覚えておきたい!Webライティングに必要な基本の文章力(ferret)
なぜweb制作ではコピーが手薄になるのか?(knowlegde/baigie)

7.権利関連の知識

権利関連と言っても幅広い分野になります。ここでは大きく分けて「契約書周りの知識」と「webサイトを構成する著作物周りの知識」をお伝えします。

制作費用の未払いトラブルはよくある話です。それを防ぐため、webサイトの制作に入る前にクライアントと制作業務の契約書や保守管理業務の契約書を結ぶ会社がほとんどだと思いますが、その作成はディレクターの仕事になります。制作会社では契約書のフォーマットを持っていることがほとんどだと思います。ただクライアントによっては、細かい条件を指定してきたり、こちらの利益や権利が蔑ろにされる主張をしてくる場合もあるので、契約を結ぶ際はきちんと交渉ができるスキルも持ち合わせておかなければなりません。仮にフォーマットなどがない場合は、情報源の咲くやこの花法律事務所とWeb幹事さんのサイトにまとまっていたのでそちらを参照してみてください。

著作物周りの知識についてですが、web業界では著作権に関するリテラシーがない言動が散見されることがあります。例えば、インターネット上に公開されている写真やイラストなどを無断でwebサイトやブログに掲載したり、webサイトのコードをそのままパクって写真や色だけを変えて公開する制作会社などいることは事実です。写真やイラストを使う場合は、素材サイトから利用すべきですし、素材サイトでも利用規約に則った利用をしましょう。

情報源
Webサイト制作(ホームページ制作)の請負契約書の重要ポイント【制作費未払いトラブル対策】(弁護士法人 咲くやこの花法律事務所)
ホームページ制作の業務委託契約書チェックの6つのポイント(Web幹事)
『著作権トラブル解決のバイブル! クリエイターのための権利の本』(大串肇、北村崇、染谷昌利、古賀海人、齋木弘樹、他 著)

8.リーダーシップ

webサイト制作というプロジェクトは多くの人たちが関わり合いながら進んでいきます。そしてプロジェクトに関わる人数はwebサイトの規模感や予算に比例して増えていくことがほとんどです。そんな中プロジェクトを円滑にスケジュール通りに進めていくために、ディレクターにはリーダーシップが求められます。リーダーシップとひとえに言っても、多くの解釈があり、定義もさまざまです。リーダーシップは「指導力」や「統率力」と訳されることが多いですが、私が考えるディレクターが持つべきリーダーシップは「webサイトの成果を出すために、個人やチームを動かす力、または行動」と定義してます。

では、どのようにしてそのリーダーシップを身に付けるかという話になりがちですが、「これをやれば完璧」という教科書のようなものはないと思っています。そしてこのリーダーシップについては現場で培われるスキルであることは否定できず、勉強をすれば身に付くというスキルでないこともわかっている方も多いのではないでしょうか?

一方で例えば新人のディレクターに「現場で学ぶことが大事だから」と言ってリーダーシップを身につけさせることを蔑ろにする先輩ではありたくありません。もし新人ディレクターに伝えるとすれば、まずはリーダーシップとは何か?という定義を自分の中で考えて欲しいと伝えます。考える材料もないということであれば、本を読んだり研修に参加してもらったりするでしょう。

もっと具体論を伝えるのであれば、例えばキックオフミーティングでプロジェクトのチームメンバーに、ビジョンや熱い思いを語るのもリーダーシップです。また制作チームに対して、小まめに進捗を確認したり、体調を慮ったり、傾聴や共感をしながらプロジェクトを進めていくのもリーダーシップです。ただ個人的には手法はなんでも良いと思っていて、結局ははじめにお伝えした「webサイトの成果を出すため」に、個人やチームを動かす力、または行動であればなんでもOKだと思っています。どうすれば制作チームが力やパフォーマンスを発揮しやすいのか、クライアントがプロジェクトを進めやすいのか、それを考えた上で行う全ての行動がリーダーシップに繋がるはずです。

情報源
『ワーク・ルールズ! ―君の生き方とリーダーシップを変える』(ラズロ・ボック 著)
リーダーシップの種類や理論を解説。リーダーに求められるスキルとは(HR大学)
ディレクターに求められる「真のリーダーシップ」とは(ベイジの日報)
サーバントリーダーとは?組織を強くする「支援型リーダー」10の特徴(リクナビNEXTジャーナル)

まとめ

ディレクションは本当に多岐にわたったスキルが必要になります。ディレクターが学ぶべき業務の範囲は広いですし、幅広くカバーしなければならないので非常に大変です。
その一方で全てのスキルを持ち合わせたスーパーなディレクターは業界内でもほんの一握りですし、「全てを完璧に学ばなきゃ」という思考になることは危険だと考えています。私としては

・プランニングな得意なディレクター
・炎上案件を立て直せるリーダーシップをもったディレクター
・マーケティングの知識が豊富なディレクター
・コーディングやデザインの知識が豊富なディレクター

などディレクターの中でも特色が出ても全然構わないと思っています。とはいえ、今回上げた8つの分野において、最低限必要な基礎的なレベルは知っておくべきでしょう。その中で自分の得意な分野を伸ばすことがより良いディレクターになるための条件だと思っています。

最後に、自分自身がディレクションを学ぶ良い機会を与えてくれたのは『日本ディレクション協会』の存在です。本部が行うディレクションの研修には何度も足を運びましたし、自身でも所属している長野支部のコミュニティでも講師の方を招いてセミナーなども行ってきました。「ディレクション」について語れる"仲間"がいるというのは非常に大切なことだと思います。本や座学・研修だけでなく、ディレクターの仲間を作ることが自身のディレクション力の向上につながっています。ぜひみなさんもディレクターについて語れる仲間を作ることを強くオススメします。

では、次回は「vol.3 営業 / 提案編」です。お楽しみに!

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