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「1on1やってみたけど効果ない…」 それ、失敗パターンかも!? 導入前に知っておくべき成功の秘訣

近年、人的資本経営への注目が高まり、多くの企業が従業員エンゲージメント向上や人材育成強化のために「1on1ミーティング」を導入しているからか、最近、この「1on1ミーティング」について相談を受けることが増えてきました。

この1on1、体験したことがある方のお話を伺うと、上司・部下双方ともに人事から渡されたマニュアルを基になんどか試みるも、その効果を実感できず、結局、業務の進捗確認で終わっているという企業は少なくありません。

「我が社でも突如導入されたが、コスパの悪いプログラム」「人事や経営層が、やってる感だけの演出。くだらない。仕事の邪魔でしかない・・・」「そもそも何を話していいか分からない」「1on1をやって、業績が上がる実感が無い」など、1on1について辛辣なお声を頂戴します。

巷では非常に効果があると言われている1on1です。なのに、なぜ1on1について残念な声があがるのでしょうか? そして、1on1を機能させる・成功させるためには何が必要なのでしょうか?

今回のnoteでは、1on1導入に成功している企業と失敗している企業の特徴から、効果的な導入方法と、そもそも1on1を導入する必要がない組織の特徴について解説します。


1on1コミュニケーションが苦手な日本人、その原因は学校教育にあり?

繰り返しになりますが、企業で1on1ミーティングの効果を実感できている企業はあまり多くありません。部下が上司に本音を打ち明けられなかったり、上司が部下の状況を深く理解できなかったり・・・。

様々な現場をサポートしている中で、私が考える日本企業が抱えている1on1が機能しにくい原因の一つは、日本の教育システムが「1対1のコミュニケーションスキル」を十分に教えてこなかったことだと思っています。

日本の教育現場は、長年、評価が測定しやすい「ハードスキル」の習得に重きを置いてきました。数学や科学といった知識や技術は試験で評価しやすく、社会で活躍するために必要な「ハードスキル」の習得に比重がおかれてきたのです。しかし、変化の激しい現代社会においては、実践的なコミュニケーション能力や問題解決能力、クリティカルシンキング(批判的思考法)といった「ソフトスキル」の重要性がますます高まっています。

特にビジネスの世界では、1対1のコミュニケーションは日常茶飯事です。しかし、過去の教育ではこれらのコミュニケーションの根幹をなすソフトスキルが軽視されがちで、結果として多くのビジネスパーソンが1on1で苦労しているのではないか、と思っています。

このソフトスキル不足は、1on1の効果を最大限に引き出せないだけでなく、様々な悪影響を及ぼします。具体的に、現代ビジネスパーソンに与えているソフトスキル不足が招く悪影響としては、

  • 1on1での効果的なコミュニケーションができない:部下の本音を引き出せない、的確なフィードバックができない、モチベーション向上につながらないなど、1on1の目的を達成できない。

  • 上司と部下の間で信頼関係が築けない:コミュニケーションが円滑に進まないことで、上司・部下間で不信感や不満が募り、特に部下のエンゲージメント低下に繋がる。

  • 自己成長の機会を逃す:自分の考えや気持ちをうまく伝えられないことで、上司からの適切な指導やアドバイスを受けられず、成長の機会を逃してしまう。

  • チーム全体の生産性低下:コミュニケーション不足は、チーム内の連携を阻害し、ミスやトラブルの発生、生産性低下に繋がる可能性がある。

どうでしょうか? このソフトスキル不足は、人的資本経営で重視されている「エンゲージメント」「モチベーション」「人材育成」「持続的成長」などに悪影響を与えることが想像できるのではないでしょうか?

なので本気で持続的成長を考えている企業は、規模の大小にかかわらず、役員や従業員のソフトスキルアップを重視し、ヒト・時間・お金をかけて取り組んでいます。

ですが、このように従業員のコミュニケーションスキル向上のための研修やトレーニングを提供し、1on1ミーティングを導入している企業の中でも、1on1が上手く「機能している/していない」という声が出てくるのはなぜなのでしょうか?

1on1がうまくいかない組織でありがちな問題

1on1は、本来、部下の成長支援や信頼関係構築を目的とした貴重な対話の場であるべきですが、多くの組織ではその効果を十分に発揮できていないのが現状です。特に、1on1の会話が弾まず、結局は業務の進捗確認になってしまうケースが多く見られます。

このような状況に陥ってしまう原因として、私が組織開発、エンゲージメント向上などのサポートさせていただいた企業で取り組まれていた1on1には以下のような問題が見られました。

導入目的が不明確

  • 「他社がやっているから」という安易な理由で導入:具体的な目的や目標設定がされていないため、効果測定が難しく、形骸化してしまい事務局が悩んでいる。

  • 「何となくコミュニケーションを増やしたい」という漠然とした目的:コミュニケーションの質が向上せず、時間や労力の無駄になってしまうという感想を現場に持たせてしまう。結果、導入した人事などに対する不平不満につながる。

1on1とMBO面談の混同

  • 上司と部下で1on1に対する認識がずれている: 上司は「評価の場」と捉えているのに対し、部下は「相談の場」と捉えているなど、双方の認識が一致していないと部下は委縮し(心理的安全性が低下)、効果的なコミュニケーションが難しくなってしまった。

  • 1on1で何を話すべきか分からない: 具体的なテーマや目標設定がないまま1on1を行うと話題が見つからず、重苦しい空気に耐えかねて業務の進捗確認に終始してしまう。次第に1on1の時間が苦痛になる、もしくは、1on1自体自然消滅してしまう。

上司のコミュニケーションスキル不足

  • 一方的な会話や指導になりがち: 上司が自分の意見や考えを一方的に押し付けたり、部下を評価・指導することに終始すると、部下は萎縮してしまい、本音で話せなくなってしまった。

  • 傾聴スキルが不足している: 部下の話を最後まで聞かずに、途中で遮ったり、結論を急いだりすると、1~2回の1on1で部下は「話を聞いてもらえていない」と感じ、信頼関係を築くことが難しくなってしまった。

  • 質問スキルが不足している: 部下の考えを引き出すための適切な質問ができず、会話が深まらない。

組織文化や環境の問題

  • トップダウン型の組織文化が根強い:部下が上司に本音を言いづらい雰囲気があり、部下にとっては1on1の時間が苦痛となってしまう。

  • 成果主義が強く、個人間の競争意識が高い:部下が弱みや悩みを打ち明けづらく、1on1が機能しない。

  • 時間的余裕がなく実施頻度が低い: 上司も部下も業務に追われており、月回の1on1(30分/1回)すら時間を確保できないという組織がも多い。

  • 心理的安全性が確保されていない: 失敗や弱みを打ち明けにくい雰囲気があると、部下は本音で話せず、表面的な会話に終始しする。

  • 評価と紐づいている: 1on1が評価と直接結びついていると、部下は上司に良い印象を与えようとするあまり、本音を隠してしまう。

1on1の運用を上司(現場)に一任

  • 適切なフィードバックやサポート方法を上司が知らない: 1on1で話された内容に対して、上司から具体的なフィードバックやサポート方法がないと、部下は成長を実感できず、モチベーションが低下する。

  • 1on1の記録や振り返りが行われていない: 1on1の内容を記録し、定期的に振り返ることで、上司・部下が互いに成長のゴールや支援の方法などのプロセスを把握が可能。結果として相互に納得性が高い状況での長期的サポートをすることができます。

ここまで、私が見てきた「1on1がうまく機能しない」と悩んでいる企業・組織の特徴をざっとあげさせていただきました。このnoteをご覧になってくださっている方の中にも『あぁ、うちの組織だ』と思い当たる節があるのではないでしょうか?

このように1on1は魔法の杖ではありません。導入すれば必ずしも効果が出るわけではなく、悩みばかりが増えてしまった・・・という企業・組織は少なくありません。でも、1on1を導入した以上、悩んでばかりではいられません。どのようなアプローチをすれば、このような悩みに対する解決方法が得られるのでしょうか。

このnoteではソリューションまで触れるには限界がありますので、1on1に悩みを抱えている皆様におススメの書籍や動画をご紹介します。

■おススメの書籍
定番ですが、やはり現場でのトライアンドエラーの事例も多くイメージしやすくて読みやすいYahoo!の事例本がおススメです。

■おススメの動画
本を読む時間が無いよ!という方には、動画がおススメです。

1on1のデモンストレーションを見たい方は、次の動画が参考になると思います。シリコンバレーの1on1というタイトルですが、1on1も回数を重ねてくると、この動画ようなアプローチが部下の背中を押し、結果的にエンゲージメント向上につながると個人的には思っています。また、1on1のデモンストレーション終了後、上司役の感想も非常にリアルで参考になると思います。


と、ここまでは、1on1を導入したがうまく機能しない企業・組織について述べてきました。ですが、私の意見としては、「1on1は魔法の杖ではない」こと。そして、1on1を導入する目的が「エンゲージメント向上」などである場合、1on1が効果を発揮する企業・組織とそうでない組織があると思っています。

そこで次のチャプターでは、1on1が効果を発揮する企業・組織と1on1以外のコミュニケーション施策でエンゲージメントを高められる可能性のある組織の特徴について述べてみたいと思います。

1on1の書籍や動画は数多くありますが、「1on1の導入が効果的に機能する」or「1on1以外の施策でも良い企業や組織」などについて触れているものが少なく、少し大胆ですがこの点について考察してみたいと思います。

1on1は誰のため?効果的な導入と見極めが鍵!

繰り返しになりますが、日本の多くの企業では、従業員のエンゲージメントやモチベーション向上、そして人材育成強化のために、1on1ミーティングを導入しています。しかし、これまでに述べたように、1on1は魔法の杖ではありません。導入すれば必ずしも効果が出るわけではありません。

このチャプターでは、1on1が特に効果を発揮する企業・組織の特徴、そして1on1以外のコミュニケーション施策でエンゲージメントを高められる可能性のある組織の特徴について、私の個人的な経験値と各種論文から言えることを述べてみたいと思います。

1on1導入で効果的なのはこんな企業・組織!

従業員のエンゲージメントを高めるためには、コミュニケーションが鍵となります。その中でも、1on1のミーティングは、上司と部下が直接対話を行い、信頼関係を築きながら、個々の成長を支援するための重要な手段です。このような1on1の導入は、特に以下のような企業や組織において、その効果を最大限に発揮することができます。

  • 組織規模が中規模以上:大人数の組織では、一人ひとりの状況を把握し、きめ細やかなケアをすることが難しくなります。1on1を通じて、上司と部下のコミュニケーションの機会を定期的に確保することで、個々の状況を把握し、適切なサポートやフィードバックを行うことができます。

  • 自律的な働き方を推進している:指示待ちではなく、自ら考え行動する自律的な働き方を推進している組織では、1on1を通じて部下の主体性をさらに引き出し、成長を促すことができます。

  • 多様な価値観や働き方を受け入れている:ダイバーシティ&インクルージョンを重視する組織では、1on1を通じて、多様な価値観を持つメンバー一人ひとりの状況を理解し、個々に合わせたサポートを行うことができます。

  • リモートワークを導入している:リモートワークでは、コミュニケーション不足や孤独感を感じやすいといわれています。したがって、1on1を通じて定期的にコミュニケーションを取ることで、チームの一体感を維持し、エンゲージメントを高めることができます。

  • 人材育成に力を入れている:1on1は、部下の成長を支援するための貴重な機会の1つです。人材育成に力を入れている組織では、1on1だけでなく、その他の各種研修や施策を通じて、部下のキャリアプランや目標達成をサポートし成長を加速させることができるため、1on1を各種施策と連動させた成長支援の手法の一つとして導入できる。

1on1以外のコミュニケーション施策が有効なケース

一方で、1on1以外のコミュニケーション施策を通じてエンゲージメントやモチベーションを高められる可能性のある企業・組織もあります。

  • 組織規模が小さく、日常的にコミュニケーションが活発な組織:上司と部下を合わせて5名以下などの少人数の組織で、かつ上司に対する部下からのリーダーシップに対する評価が高い組織の場合、改まって1on1を設けなくても、日常業務だけでなくランチやコーヒーブレイクなどのインフォーマルな場などで自然なコミュニケーションが行われ、関係性が構築できている事があります。限られたリソースを使って社内に1on1を導入する場合、このような組織への1on1導入の優先順位を下げてもよいと思います。

  • トップダウン型の組織文化で、上司と部下の間に明確な権限と責任の分担がある組織:創業期や短期間で業績回復などの急成長目指している組織では、指示命令系統が明確となっています。このような組織では、1on1よりも、業務指示や報告の場を明確にすることで、効率的なコミュニケーションを図り「指示・管理」の徹底を進める必要があります。ただし、この上意下達のトップダウン形式が続くと、部下のエンゲージメントが下がる可能性があるため、タイミングを見極めてニーズに合ったエンゲージメント向上施策を取り入れることが肝要となります。

  • 個人の裁量が小さく、ルーティンワークが中心の組織:ルーティンワークが中心の組織では、1on1で話す内容が限定されやすく、効果を感じにくい場合があります。このような場合、まずは、改善活動やベストプラクティスの共有などの小規模なグループ活動を通じて、チームメンバー間のアイデアの共有や問題解決を促進させる手法を導入する方が、自己成長実感につながり、エンゲージメント向上につながります。

まとめ:自社の状況に合わせて最適なコミュニケーションを!

1on1は、適切に導入・運用されれば、従業員エンゲージメント向上や人材育成に大きく貢献する効果的なツールです。しかし、それはあくまで一つの選択肢であり、万能薬ではありません。大事なのは、自社の組織構造や文化に合った課題解決の方法を取り入れることです。上司と部下との1on1が難しい組織には斜め1on1も選択肢のひとつとして提示したり、メンター制度を取り入れるなど、様々なコミュニケーション施策を検討し、最適な方法を選択することが重要です。

大切なのは、「コミュニケーションを通じて、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、組織全体の成長に繋げる」などの自社の課題解決につながる導入目的を立てることです。そして、その目的を達成するために現場のリアルに合わせたコミュニケーション施策の設計&プロモーションを丁寧に行いましょう!

そうすることで、必ず「やってよかった」という現場の声が、あなたに届くようになります。諦めずに取り組んでいきましょう!

余談:「従業員エンゲージメント向上や働きがい施策に取り組んでも一銭の”カネ”にならない」という相手を説得するときに役立つ資料

1on1などのソフトスキル系の施策を取り入れる時、『そんなものやってみ意味がない』『利益につながらない』などのブレーキ意見が各所から飛んできます。その際、役に立つかもしれない資料が以下になります。

550万人のユーザー数を誇る日本最大の社員クチコミ情報サービス「OpenWork」の調査から見えてきたデータです。エンゲージメントは「働きがい」と正の相関性が強く、このnoteは非常に有益だと思います。

・「働きがい」or「働きやすさ」は財務指標に2-3年遅れて影響する。

・「働きがい」&「働きやすさ」は株価にも1年遅れて影響する。

・「財務指標」は「働きがい」に1-2年遅れて影響する。

・「働きやすさ」だけを改善しても株式に影響しない。

note:企業価値向上に寄与するのは業績が先?働きがいが先?1100万件超の社員クチコミサイトをAIで分析すると

上記内容の詳細は、下記noteでご確認ください。とても参考になるデータが満載です。


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