漫才「ベテラン刑事」

A「ドラマとかでよくある、経験豊富なベテラン刑事が犯人を取り調べるシーン、あれ格好いいよね」

B「あー、あの百戦錬磨の感じね、格好いいね」

A「ちょっと俺がベテラン刑事やるから、ここでやってみよう」

B「はいはい」

A「…(机を叩く)おい、お前がやったんだろ?」

B「やってねえよ」

A「言い逃れしようとしたって無駄だぞ」

B「俺はやってねえって」

A「嘘をつくな」

B「は?じゃあ早く証拠出してみろよ」

A「はいはい、『証拠出せ』ね、犯人はみんなそう言うんだよ」

B「どうせ何も無いんだろ?」

A「(取り出す)これを見てみろ」

B「え?」

A「この上着のボタン、見覚えないか?」

B「し…知らねえよ、見たこともないね…」

A「これは、私が昼休みにドッジボールをしていて取れたボタンだ」

B「いやじゃあ本当に知らねえよ」

A「交通課の高部くんのボールを避けきれなくてね」

B「どうでもいいわ、そもそも刑事が昼休みにドッジボールすんな」

A「はいはい、『ドッジボールすんな』ね、犯人はみんなそう言うんだよ」

B「無実でも言うだろ、落とし物届けに来た奴でも言うだろ」

A「ただ今回は他にも証拠があるんだ」

B「今のは証拠じゃねえから」

A「実はな、犯行現場でお前の姿を目撃した人物がいるんだよ」

B「え?」

A「お前が被害者の家から出てくる所を、近くで新聞配達をしていた男性が…」

B「新聞配達?犯行時刻は夜の11時だろ?そんな時間に新聞なんて…」

A「いや、あの、その男性の友人が向かいのマンションの最上階から…」

B「暗がりの中でそんな場所から顔なんて…」

A「いや、えっと、その男性が頼んだ出前を持ってきたバイトの高校生が…」

B「そんな時間に高校生がバイト?」

A「だからあの、要は高校生になった鈴木福くんが…」

B「いやもう絶対でたらめだろ」

A「何だと?」

B「福くん出てきたらもう終わりなんだよ」

A「はいはい、『福くん出たらもう終わり』ね、犯人はみんなそう言うんだよ」

B「いや普段どんな取り調べしてるんだ」

A「とにかく、お前は早く罪を認めて歌箱に入れ」

B「豚箱な、歌箱はただのカラオケボックスだから」

A「一人で湘南乃風歌え」

B「どんな指示だよ、独房で睡蓮花とか歌わないから」

A「はいはい、『独房で睡蓮花』ね、犯人はみんなそう言うんだよ」

B「いやもういいよそれ、ちょっとやめてくれ」

A「ほら早く歌うんだ」

B「だからいいって、やめよう」

A「さあマイクを持って、タオルを振り回して」

B「もう取り調べでも何でもな…」

A「睡蓮~の花~のように~」

B「いや勝手に歌い始めるな、もういいよ、ありがとうございましたー」

A「はいはい、『もういいよありがとうございました』ね、犯人はみんなそう言うんだよ」



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