【名作文学】ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』あらすじと解説

『灯台へ』(原題:To the Lighthouse)は、イギリスの女性作家ヴァージニア・ウルフによる1927年の長編小説です。この小説は、ラムジー一家と、彼らが1910年から1920年までの間にスコットランドのスカイ島で過ごした出来事を中心に展開されます。

あらすじ

この小説は、第一章「窓」、第二章「時は過ぎる」、第三章「灯台へ」という三つの部分から構成されます。

  • 第一章では、ラムジー夫人が息子のジェイムズに明日こそは灯台に行けると約束するところから始まりますが、夫のラムジー氏が明日は天気が悪くなると言って反対します。これがラムジー夫妻やジェイムズの感情に影響を与えます。ラムジー一家は、賓客を招いて夏を過ごしており、若い女性画家リリー・ブリスコウはラムジー夫人とジェイムズの肖像画を描こうとします。この章は盛大な晩餐会で締めくくられます。

  • 第二章では、第一章から10年が経過したことが示されます。この間に第一次世界大戦が起きて兄弟の一人が戦死したほか、ラムジー夫人も急逝します。また姉妹の一人も命を落とします。ラムジー氏は妻を失ったことであてどなく取り残されてしまいます。

  • 第三章では、第一章の10年後にラムジー氏たちが久しぶりに別荘へ行き、客も招きます。ラムジー氏はついに娘のキャムと息子のジェイムズを灯台に連れて行くことになります。ジェイムズは専制的な父親に反抗しますが、次第に父と打ち解けていきます。リリー・ブリスコウはラムジー氏らを乗せた帆船が灯台に向かうのを見ながら、ラムジー夫人の面影を思い出し、絵を描きます。

特徴

この小説は、現代小説の伝統を継承し発展させた作品であり、意識の流れという文学的技法を代表する例として引用されます。物語の筋は、その哲学的内観に比べあまり重要ではなく、登場人物の感情や思考を流れるように描写しています。この小説は、消失、主観性、感性といったテーマを多く含み、子ども時代の感情を呼び起こし、大人の人間関係を露わにする小説です。

評価

この小説は、多くの批評家や読者から高い評価を得ています。この小説は、「絶対に映像化できない」と言われるほど小説にしかできない技法によって書かれた作品であり、小説についての固定観念を崩すような面白さがあります。この小説は、20世紀最高の小説ベスト100のリストの15番目に登録されたほか、英語小説ベスト100にも選出されています。

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