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真夜中のオノマトペ

仕事の面接から帰宅してアパートのポストを開けると一枚のチラシが目に入った。

水道工事を知らせるもので、場所はアパート前の道路、本日深夜から未明。

部屋に入りテーブルに散乱したゴミを片づけると、コンビニで買った100円のパンをコーラで流し込んだ。

時代はコロナ禍だ。私は職場をクビになり、貯金も底をつこうとしていた。新しい仕事が決まらずに自暴自棄になり、鬱屈した生活を送っていた。

気がつけば知り合いを避けるようになっていた。仲間とゲームをしたり飲み歩いたりと騒がしかった毎日は消え、最近はLINEの通知音さえ耳にしていない。

私はベッドの上で目を閉じた。音のない部屋の中に、惨めさと、悔しさと、やり場のない怒りが渦巻いていた。


ぶーーーん。どーん。どーん。ぴーぴー。かちゃん。どーん。どーーーん。

激しい音で目が覚めた。私は何事かと起き上がったが、アパートの前で水道工事が始まったのだとわかった。

ベランダに出るとアスファルトの臭いが鼻をついた。激しい音は耳もとまで迫ってきた。地面を掘るドリル音。工具の金属音。重機のエンジン音。

アスファルトは掘り返されており、地面の下に埋まっていたらしい石ころが道路上に山積みになっていた。

異常な騒音に私は思わず怒鳴り声をあげそうになったが、この人たちだって仕事でやっているのだからとぐっと言葉を飲み込んだ。

苛立ちを抑えながら布団に潜り込むと、自己憐憫か、悔しさか、閉じたまぶたの奥から涙が溢れた。


浅い眠りの中で夢を見た。断片の一つひとつによって織りなされたこの混沌とした映像は私の文章力では伝え切れず、オノマトペで描写するのが相応しいように思えた。

どーん。どーん。ぴーぴー。どかーん。どかーん。かちゃん。かちゃん。かちゃん。ぴーぴー。ぴーぴー。ぴこん。

ぴこん。ぴこん。ぴこん。ぴこん。ぴこん。ぴこん。ぴこん。ぴこん。ぴこん。

ふわふわ。ふんわり。ふうわふわ。ふうあふあ。ふわふわ。ふわふわ。ふわふわ。ふわふわっ。ふうわふわ。

じゅーじゅー。もぐもぐ。じゅーじゅー。じゅー。もぐもぐ。ぐつぐつ。ぱくぱく。もぐもぐ。ぱくぱく。じゅーじゅー。じゅーしー。

ぴちぴち。ちゃぷちゃぷ。ぴちぴち。ちゃぷちゃぷ。あわあわ。ぴちぴち。ちゃぷちゃぷ。あわあわ。ふわふわ。ふわっふわっ。ふんわり。ふうあっふうあ。

ざあざあ。ざあざあ。ぶんぶんぶん。

きらきら。きらきら。ぴかぴか。きらりきらり。ぴかり。さらさら。さらりさらり。きらきらさらり。

ぷるぷる。もちもち。ぷるんぷるん。ぷるるん。ぷるりんこ。ぷるぷるぷるぷるぷるぷる。

ぶんぶんぶん。ざあざあ。ごろごろ。ぴかっ。ごろごろ。ぶんぶんぶん。ざあざあ。ひゅーひゅー。ごろごろ。ぴかっ。どーん。どーん。どーん。ぶんぶんぶん。

ほかほか。もちもち。とろとろ。ふわとろ。もぐもぐ。もぐもぐ。ざあざあ。ごろごろ。ぴかっ。もぐもぐ。もぐもぐ。

きらきら。きらきら。ぶんぶんぶん。


カーテンから差し込む朝日で目を覚ました。寝ぼけ眼をこすり、急いでシャワーを浴びると予約していた面接にいく支度をした。

外に出てみると、昨晩見た瓦礫の山は消えており、一夜にして道路は真っ黒なアスファルトで舗装し直されていた。

私は昨日の夢を思い出した。真夜中の騒がしさによって奏でられた甘美な映像を噛みしめるうち、心の翳りがほんの少し消えていくのを感じた。

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