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『水曜日のダウンタウン×天才的なコメント』 テレビかじりつきVol.14

芸人さんが芸人さんを褒めるシーンが好きだ。

先日放送された水曜日のダウンタウンで『芸人が今までで一番スゴいと思ったコメント調査 』なる企画があった。百戦錬磨の芸人が同じ現場あるいはテレビを見ていて「おお、すげえ」と思った瞬間を語った。同業者だからこそ「よくあの場面であれが出るな」そんな凄みの奥行きに気付けるのだろう。

何人かの売れっ子芸人が固有名詞を挙げながら、自身がすごいと思ったコメントを紹介していた。僕が印象に残ったのはバカリズムが紹介したダウンタウン・浜ちゃんのコメントである。

今年の2月、水曜日のダウンタウン内で男女それぞれチームに分かれて対決する企画があり、その放送内でのコメントだった。女子チームにいたタレントのYOUが男子チームの振る舞いに納得がいかず、クレームを言うくだりがあったのだが、それに対して浜ちゃんはこう言い放った。

「お前殺すからな」

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続けて、「いつでも入ってええんやからな」

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ドスの効いた声と鬼のような表情でわかりやすい怒気を備えながらも、浜ちゃんのキャラクターが乗ってることでバラエティのノリであることは瞬時に伝わる。とはいえ浜ちゃんの濁りのないシンプルなアウトレイジフレーズは迫力満点。「笑えないけど笑っちゃう」絶妙なラインでその場に適度な緊張感をもたらしていた。

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相手がごっつ時代から勝手知ったるYOUだったのも、関係性や構図として上手く作用していたし、素直にビビり倒すYOUのリアクションも受け手として完璧。進行役を務めていた麒麟・川島が「『収容』と書いて『入る』」とボソッと味付けしていたのもお見事だった。

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個人的には予定調和を意図的に壊すエッジの効いたコメントは大好物なので、ノーモーションから一気にギアを入れる浜ちゃんの怒声は大好きだ。

ただ、今回僕がそれ以上に魅了されたのはコメントを紹介したバカリズムの"コメント"だった。

明瞭な解説、コンパクトにまとめてるのに凄みを笑いをまじえて伝える構成、聞き取りやすいトーンとテンポ…どれもがうっとりするぐらい無駄がなかった。

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立て板に水のように流々と語るバカリズム。実はこのときワイプで浜ちゃんらは笑ってるが、千原ジュニアと松ちゃんはむしろ真剣な表情で聞き入っていた。バカリズムの着眼点と紹介の巧みさのほうに感心してるように見えた。

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浜田さんて一度入ってたんでしたっけ?と飄々とした表情でボケていたのも笑った。このチクッとしつつ、痛快なツッコミを誘引するボケをさらっと挟み込むセンスよ。

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着地では「浜田さんのそういうところが好きなんだよなあ」と締めた。おべんちゃらには全く聞こえず、ほんとうにバカリズムが浜ちゃんを好きなところなんだろう。それは僕らが浜ちゃんを好きな理由の代弁であり、言語化であり、いわば浜ちゃんの魅力の再掲出だった。浜田雅功の容赦のない手厳しいツッコミやキレ芸を、僕らはいつだって期待しているから。

ワイプに映る松ちゃんは爆笑するというよりも真顔で少しうなずくようにしていて、バカリズムに共感している様子。ここもまた同業者だからこそ納得する凄みだったのかもしれない。浜ちゃんはイジられた形となったが、どこか嬉しそうに満足そうにもしていた。

どんなにすごいことを言っていても、それに気付いて的確に伝播できる人がいなければ、価値は正当に評価も拡散もされない。スポーツ実況で解説者がいるのは、プロだからこそ気付ける視点が確実にあるのと、実践経験に裏打ちされた説得力を持って伝えられるからだろう。

芸人さんたちの雛壇におけるトークやパネラーとしての立ち振る舞いは、まさに大喜利の連続である。瞬発力、表現力、発想力、破壊力、あらゆる要素が求められる。コンパクトにまとめる、わかりやすく伝える、最適な間を選ぶなど、それらのバランスも考えないといけない。

当たり前だけれど、テレビでいつも見ている芸人さんたちはとんでもなく難しいことを難しく見えないようにやってのけている。それは素人が決して真似できないプロフェッショナルとの絶対的な差分である。

最後に、僕が「すごいな」と思ったテレビ番組内でのコメントをひとつ紹介する。あえて芸人さんではないところから。少し古いけど。

それは当時SMAPだった草彅剛が公園で泥酔して全裸になる奇行をやらかしてしまった時のユースケ・サンタマリアのコメントだ。

テレ朝の『ぷっすま』で長らく共演し、なぎスケと呼ばれる盟友の仲だったユースケが、事件後おそらく1発目にオンエアされた回の冒頭で放ったこの一言。

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「ツヨシがやらかしましてね」

これをやたら軽い感じで、なんなら半笑いぐらいで、普段のテキトーなユースケのノリと変わらずに言ったのだ。ジャニーズ案件というのもあり、多くのマスコミやコメンテーターが腫れ物に触れるようにしかタッチできなかったなか、ユースケは拍子抜けするぐらいポップに片付けた。

たしかに草彅とは同じグループでもなければ正式なコンビでもない。だとしてもこれを言ってのけられるのは彼ぐらい。先の浜ちゃんもそうだけど、誰が何を言ってもいいわけではなく、その人が言うからこそ面白くなること、また許されることであるのもコメントにはとても大切だと思う。

ユースケは神妙な面持ちで深刻にコメントするのではなく、『ぷっすま』の雰囲気や自身のキャラクターを崩すことなく、さらには草彅に迷惑をかけられてる印象をまるで与えない配慮のある素敵なコメントだった。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います