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"誰が、いつ、そうしない"と断言できる?"不気味な怪作『Chime』感想


怖いしヤバいと今話題の黒沢清監督の映画『Chime』を観た。

story


恐怖とはつまり、前触れのなさ、理屈のなさ、予測のつかなさ、全容も説明もないまま想像を強いる無神経さではないか。

不気味な音響、没入する上映時間わずか45分のカメラワーク。

"誰が、いつ、そうしない"と断定できる?

得体の知れない何かに信頼や希望を見出し命を預かり合って奇跡的に成立してたに過ぎない日常、それがいかに過信で脆いのかを思い知る。

今ある世界は、人類は、"たまたま"こんなふうに発達して成長して、わきまえて法やモラルを守ってるに過ぎず、ほんのわずかにネジを狂わされるだけで簡単に本作のような世界線に至っていても実はおかしくなかったのではないか。
そんなパラレルワールド的ホラーにも映った。

個人的には面白いとか傑作とかって安易に言い切れる類いじゃなかった。"怖いもの見たさ"という心理を逆に裏切ってくる恐さだと思う。見えたほうが、真相を知ったほうが、まだ安心できる。

ただ大いに誰かと語り、考察を読みたくなる映画なのは間違いない。

チャイムとは何なのか?
伝播する狂気?操作される衝動?

チャイム以外の音が怖い。

薄気味悪い余韻をぶっかけて45分で問答無用に観客を強制退場させる怪作。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います