『被害者になれない男、クロちゃん』 テレビかじりつきVol.4
水曜日のダウンタウンで2週にわたって放送された『クロちゃんダイエット企画』に笑った。
クロちゃんがプロデュースするアイドルユニット・豆柴の大群の新曲PRのため、クロちゃんがダイエットに成功したその減量に応じ、新曲に参加するfeaturingゲストが変わるという内容だった。
最大-10キロまでいけば、元乃木坂46でセンターを務めた生駒里奈、さらに-9キロでも長年推し続ける松井珠理奈が参加することになるなど、クロちゃんのモチベーションを焚きつけるには文句なしのラインナップ。
豆柴の大群を我が子のように想い、プロデューサーとしても作詞を手掛けて応援するクロちゃん。
我が子のようなアイドルと、自分のお気に入りアイドルのコラボとなれば夢物語。やる気が目に見えて高まっていく姿はおかしかった。
しかし、クロちゃんがダイエットに取り組む様子だけで番組を成立させるわけがないのが水曜日。
当初ダイエットに気乗りしなかったクロちゃんはゲスト候補のラインナップを聞いて気持ち悪いぐらいにテンションが上がっていたが、いつものようにカメラの回ってないところでは過食を続けてダイエットをサボっていた。
そんな嘘つきだるまにダイエットのパーソナルトレーナーとして付いたのが「サヤカちゃん」という美女だった。スタイル抜群の美人トレーナーに案の定クロちゃんはガチ恋した。
いつの間にか番組の見どころは豆柴の大群のPRでもダイエットでもなく、クロちゃんの恋愛観察になっていた。
途中でフジモンが「これなんの企画やったっけ?」とつぶやいていたのが印象的である。
クロちゃんが水曜日のダウンタウンで見せたガチ恋相手への蛮行といえば、飲みの席で相手女性が席を外したタイミングでグラスを勝手に舐め回すという行為だった。
またしてもサヤカちゃんとの飲みの席を隠し撮りされていたクロちゃん。視聴者の誰もがまたあの蛮行を繰り返すことを予想していたし、どこか期待すらしていたと思う。
だが、モンスターはいつだって凡人の予想を超えてくるのだった。
サヤカちゃんにバカラのシャンパングラスをプレゼントしたクロちゃん。好きになった子へのプレゼント攻勢もバカラのグラスも、見慣れたクロちゃんの得意技である。
早速そのグラスを使って乾杯し、飲ませることに成功したクロちゃん。途中でお手洗いに立つサヤカちゃん。
事件は起きた。
サヤカの飲みかけのグラスを手に取ったクロちゃんは、舐めるのかと思いきやそうはせず、なんと中身を自分のグラスへと移し、空になったグラスを自分のカバンの中に回収したのだ。
そしてまさかまさか、もう1本同じ新しいグラスを箱から取り出し、またシャンパンを注いでサヤカの席の前へと戻したのだった。
そう、彼はその場で舐めるに飽き足らず、ついに相手の使ってるグラスそのものを完全犯罪さながらにすり替えて回収して見せたのだ。
とんでもないモンスターである。放送倫理もクソもあったもんじゃない。
手慣れた感じでやってのけるクロちゃんもヤバいが、当たり前のようにオンエアする番組サイドも相当イカれてる。さすが、モンスターを飼いならす猛獣使いのスタッフたち。
当然スタジオはドン引き、Twitterでも「世界中の汚い言葉をここに集めてるの?」ってぐらいクロちゃんのアカウントに罵詈雑言とクソリプが集まっていた。
優しくしてくれるサヤカちゃんにメロメロで舞い上がっていたクロちゃんだが、最後はお約束通りにフラれてしまった。これも見慣れたピエロである。
サヤカちゃんは番組スタッフからクロちゃんのモチベーションを保つために、思わせぶりな態度をしてくれと頼まれていたという。
申し訳ないが、クロちゃんのフラれっぷりは鉄板で笑える。その後すぐにスタッフへ八つ当たりするところまで含めて最高だ。
美女にうつつを抜かして結局痛い目を見る。こんなに綺麗な「笑うせぇるすまん」の世界も無い。
以前に書いた『自己愛の化け物、クロちゃん』という記事でも言及したが、彼はいつも彼自身の行動によって被害者として着地できない。
番組のオモチャにされ、相当ひどい仕打ちを受けているにも関わらず、被害者になれたはずの分を加害者としての顔で自ら帳消しにする。情状酌量の余地を残さない。
ほかの芸人さんがふつうにやられたら同情の声のが大多数になるだろうし、むしろバラエティとして成立しない。番組への批判も相次ぐだろう。
その点、クロちゃんは「自業自得だよ」と視聴者に思わせるに十分な"やらかし"を期待に応えてやってくれるので、番組側も容赦なく強いドッキリをかけられる。
ある意味、持ちつ持たれつの絶妙なバランスで成立している。番組がクロちゃんにしていることも、クロちゃんが女性にしていることも、両方相当ひどいはずなのに、批判や炎上を最小限に抑えそれ以上に笑わせバラエティとして着地させるのは見事すぎる(燃えてることは燃えてるが、やってることのわりには全然。ほかの番組なら無理だと思う)
賛否両方あれど、ここまで一個人がキラーコンテンツとして機能し、言動が注目されるなんて今の時代そうそうない。芸人として超一流だと思う。
突き抜ければ勝ち。
敵をつくる怖さより、おのれへの愛の深さが勝ち続けるかぎり、人は幸せなのかもしれない。
サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います