見出し画像

不意の別れは、堪えますーーーインコとの生活あれこれ その7

「うそ、うそでしょ?! スケッ!!!!」

そう叫んで、絶句したのが、ちょうど一週間前でした。スケは、かごの中で、静かに冷たくなっていたのでした。

スケは、今年8歳のオカメインコの女の子。女の子に”スケ”という名前も、変わっているように思われる方もいるでしょうね。お店の水槽の中で、存在感を発揮していた彼女を一目見たとき、私は直感で、「この子は、亮(すけ)の生まれ変わりだ!」と思ったのです。

初代・亮は、本来は相方の愛鳥でした。私がオカメインコと暮らし始めてから、彼女もオカメインコに魅かれて、一緒にお店に行って、出会った子でした。

私も一目ぼれしたので、彼女がお迎えしなければ、たぶん、私が迎えていたでしょう。けれど、相方は、私以上に初代・亮に惚れ込んでいて、その場で彼を迎えました。そう、初代は、男の子だったのです。

これは、大体26年位前のことで、当時私たちは同居していませんでしたから、亮と暮らすのは、同居が始まった24年くらい前のことになります。

気のいい甘えん坊でしたが、15年ほど前、私が買い物から帰ってくると、かごを血の海にして息絶えていました。

今回もそうでしたが、その時も、前日までどちらのスケも、元気だったし、食欲も旺盛だったのです。初代の亮は、いくらか体調が悪かったのか、甘えることが多かったのですが、それでも私の眼には、まだまだ元気に見えたものです。

もちろん、慣れから来る、私の不注意はあったのでしょう。”スケは、元気”というバイアスのかかった眼で、彼を観ていて、小さな異変に気付かないまま、彼を旅立たせたのかもしれません。かごの中の出血量から観れば、おなかに腫瘍のようなものができていて、それが、何かの原因で破裂したようです。彼とは、私の相棒でもあったルンというやはり男の子のオカメさんが、同居していました。ルンの落ち込みようは激しくて、私は彼が後を追うのではないかと、気が気でなかったものです。

冒頭にあげた言葉は、一週間前の2代目のスケの亡骸に向けた言葉でしたが、15年前も、やはり、私は似たような言葉を口走ったように思います。「なんで、なんで、なんで❓???❓」そう頭の中で繰り返しながら、思考回路は停止しています。

長患いの子なら、もちろんショックなのは当然でも、心のどこかに準備しているものがあったりします。自分では認めていないし、見ないようにもしているけれど、間違いなく覚悟ができているんです。

けれど、前日まで、元気に走り回って、ご飯も食べていたはずの子が、或る日、突然、物言わぬ物体に変わり果てている。この現象の衝撃は、覚悟もない分、超がいくらでもつく剛速球で、こちらを打ちのめします(実は、私、スポーツ嫌いですが、プロ野球だけは大好きです。その話もまたいずれ)。15年前も、1週間前も、私は感情も思考も停止した状態で、抜け殻のような有様で、ほかの生きている子たちの世話をしていたのでした。

世話をしていくうちに、だんだん悔しいのも悲しいのもつらいのも混ぜコネになって、泣けてくる。私が愛鳥を喪うと、必ず、慰めてくれる子がいます。15年前、私の悲嘆を必ず歌で慰めてくれていた相棒のルンは、自分が親友を亡くした衝撃で、私を慰める余裕を失っていました。おそらくは、私の留守中に苦しんで息絶えてゆく様子を目の当たりにしたのでしょうし、彼自身が慰めを必要としていたはずです。あの時、慰めてくれた子がいるはずですが、今、思い出せないのは、その子もおそらく天国へ帰っているからなのでしょう。

それから15年たった一週間前。私が泣き出すや、ピポナをはじめとした、大きなインコたちが騒ぎ始めました。ピポナは、コミドリコンゴウインコと言って、世界で一番小さいコンゴウインコです。コミドリコンゴウインコが、我が家には3羽いて、そのうちの2羽は私にべったりですが、その2羽が、騒ぎ始めたわけです。ことにピポナは、私の喜怒哀楽にことのほか敏感で、細やかに反応してきます。

この時も、かごの前面に張り付き、私に向かって叫びました。

「かあさん、泣かないで! わたしがいるでしょう?!」

もちろん、こういったわけではありません。けれど、私が泣き出すと、私を𠮟りつけでもするかのように、毎回大声で私に向かって必死で叫ぶのです。私はオカメさんの世話の途中で泣き出しますし、ピポナは何故か自分のことをオカメインコだと勘違いしているので、ピポナを出して抱きしめるわけにもいきません。オカメさんのほうがパニックになりますからね。

おそらくは、ピポナは、私に向かって叫んで、叱られることで、私に元気を出させようとしているのでしょう。以前、「我が家のインコのヒーリング法」という投稿をしましたが、あの通りの情景が再現されました。

2代目は、ほとんど前日の世話の折のご飯に手を付けてなかったので、夜の間に、ひっそりと息を引き取ったようです。

ワンチャンや猫さんの場合は、私はこういうことがあるのかどうか知りませんが(事件・事故の場合を除きます。昔、一晩で3頭の愛犬を亡くしたことがありますが)、鳥さんは、こういう突然死、少なくないのですね。これは、以前のかかりつけのドクターもそういうことおっしゃっていましたが、不意に天国に帰ってしまう子がいるのです。羽をもつ魂たちですから、急に空に帰りたくなるのかもしれませんね。狭いかごでは、何かと不便だし、不自由でしょうから。

ただ、不意打ちを食らったこちらが、彼らの不在を受け容れるのには、いささか時間がかかります。ましてや、私の場合、先月下旬に1羽長患いだった長老を天国に帰したばかりだったので、本当に落ち込みました。

いまでも、彼女の最期の姿を思い出しては、涙が出てきます。そうして、ピポナに叱られたり、慰められたりしています。ピポナだけではなく、いろんな我が家の子たちが、励ましてくれています。そういう彼らに感謝しながら、私は切実に彼らに頼むのです。

「あんたたち、かあさん置いて天国に帰るのは、もっと後でいいんだからね! もう少し、一緒に暮らそうね・・・・」

そう呟いて、涙ぐむと、ピポナが叱るのですね。或る意味、平和で幸せなことなのかもしれません。年取ってくると、立ち直りに時間がかかるんですが・・・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?