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2020年10月 月報

ぼーっとしていたら10月が終わってしまった印象。
楽しかったのはもりたの家で、ミッドサマーのディレクターズカット版上映会をやったことだ。もりたハウスは引っ越しを手伝いに行ったとき以来だったんだけど、見事にオシャレルームになっていて素晴らしい。雑貨の力を感じる。もりたの彼氏さんが作ったポップコーンを皿に盛り、白い壁に投影されたミッドサマーをまったり見る、なんとも和やかなイベントだった。

その他も大体、色んなものを観たな、という印象。
映画だと『本気のしるし』が面白かった。4時間の上映ということで尻込みしたが、連ドラの再編集版なので間延びせずにどんどん色んな事が起こるので、ぐいぐい引き込まれて観た。「男をダメにする女」的なテンプレートを叩き割り、そのお約束な構図に隠された生々しい心の傷に目を向けさせ、男側よお前らはどうなんだ!と突き付けてくる作劇に「おぉ!」っと唸る。それでいて、人間関係のパワーゲームと関係なく主体的に獲得された「好き」という気持ちが、人生を根本から立て直す原動力になる展開にぼろぼろと落涙した。その他にも『鵞鳥湖の夜』『オン・ザ・ロック』『スパイの妻』などなど、新作映画の充実っぷりたるや。
U-NEXTも、気になる映画でソフトがなかなかないものが結構あって試しに加入したけど、結局映画よりもヨーロッパ企画の演劇とかを観てしまっていた。

それからPodcastで言うと、「ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN」がマジで最高。Podcastオリジナルコンテンツだからか、会話の力が抜けきっていて本当にくだらない一方で、リスナーからの投稿には真摯に寄り添うバランスがステキ。リスナーさんからの投稿も人生の機微が炸裂していて、たまに泣いちゃう。「負けへんで~!」というスタンスの良さ。

友達から進められて「テクテクライフ」を始めた。歩いた距離だけ地図を塗れる、みたいなアプリゲーム。これが歩くのが全く苦ではない僕とめちゃくちゃ相性が良くて、どんどん歩いてしまう。実際に行ったところ以外に、ポイントを貯めることで遠く離れた場所も塗れたりするんだけど、そうやって、全く知りもしない場所がマーキングされていく感じも不思議。山口県のその町とか、いつか俺は訪れることがあるのかしら?


・読んだ本

大前粟生『回転草』
田島列島『水は海に向かって流れる』1巻〜3巻
沼田真佑『影裏』
戸谷洋志・百木漠『漂泊のアーレント 戦場のヨナス ふたりの二〇世紀 ふたつの旅路』
スズキナオ『酒ともやしと横になる私』
三品輝起『雑貨の終わり』
町田康『令和の雑駁なマルスの歌』
木下古栗『サピエンス前戯 長編小説集』
木下龍也、岡野大嗣『玄関の覗き穴 から差してくる光のように生まれたはずだ』
ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』
全卓樹『銀河の片隅で科学夜話』
和山やま『カラオケ行こ!』
中井治郎『観光は滅びない 99.9%減からの復活が京都からはじまる』
滝口悠生『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』

『金剛寺さんは面倒臭い』から引き続き、漫画いいよな~みたいなモードなので、『水は海に向かって流れる』『カラオケ行こ!』などを読んだ。どちらもゲラゲラ笑いつつ、ちゃんとキャラクターのことが好きになってしまって、とってもいい時間を過ごしました。

小説でいうと『サピエンス前戯』は収録作が延々と真顔で下ネタを言い続けるような作品で、この分量をこのトーンを保って書ききってしまうのは、なかなかのクレイジーさだなぁと妙な関心をしてしまう。この小説のせいか、下ネタまみれの悪夢を観てしまったりした。あと、この感じは何かで知っているなと思って後で思い出したんだけど、「談志百席」のおまけに入っているエロ講談と一緒だな。登場人物の名前が下ネタになっていて、それでいてテンポは講談のまじめなトーンを保つという案配(個人的に好きなダジャレは「朝までするがの女房」)。その他、『回転草』のような奇妙で奔放な想像力に満ちたものやら、『影裏』のような文章がきっちり上手くリアリティが高めなものやら両極端な感じだった。
それからエッセイではあるが、『雑貨の終わり』も、とにかく文章が上手くて驚いたし、エッセイでありながら話の目線がかつての祖父から見たものに移るような、移人称的な書き口の部分もあって、「あ~、全然こういう書き方してもいいんだな、エッセイって」と思ったりした。未読の前作も読みたい。

珍しく歌集もある。『玄関の覗き穴 から差してくる光のように生まれたはずだ』。というか、僕は短歌をダラダラと長いことやっている割に、歌集を全然読んだことがなくて、短歌も独学というか独(学んでない)という感じだから、ちょこちょこと歌集・短歌関連の本はこれから読んでいきたいなと思っている。その手始め。

『観光は滅びない』は、著者の前作も読んでいて、そちらは観光客が来すぎてパンク寸前の京都を描写したものだったのが、たった一年でインバウンド99.9%減で観光業界がピンチ!という状況に様変わりしてしまっている、そのダイナミックな時代の変わり方に驚いてしまう。来年のことなんて、ほんとに、誰にもわかんない。それでいて、観光業界の人たちが、割とポジティブというか、せっかくやるなら元の状態に戻るんじゃなくて、ちゃんとアフターコロナに向けてより良い形にしたいよね、という認識で動いていて、清々しかった。

『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』は日記の最後の日付が10月31日だったので、それに合わせて10月に読了。日記と言いつつ、かなり後になって加筆したような部分が混在していて、日記と言いつつ、その中に含まれている時間のスパンが長いのが不思議なバランス。しかしよくよく考えたら日記というのは基本的に後になって書くものなので、別に今から数年前の今日の日記を書いたっていいのだ。

・今月のBGM


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