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312.日記(1月24日〜1月26日)

1月24日

会社の向かいのビル周辺に警察や消防署の人が集まっている。最初は火事かと思ったが消防車は来ておらず。どうやら向かいのビルの屋上から飛び降りようとしている人がいて、それを警察の人が説得して救助を試みているらしい。うちの会社がある階からその人が見える、と社員の何人かが窓辺からチラチラ見物している。僕は粛々とデスクワークをしながら、「最近読んだパク・ミンギュの小説みたいだな」と思ったりしていて、でも、それ以上の感情が湧かないことに不思議さがある。どうやら屋上の人は飛び降りずに済んだらしい。

ものすごく頭が重くてしんどいので、定時で退勤して早めに眠る。

1月25日

ゆっくりめに起床。しんどいのはちょっとマシになった。気になっていた日記に関するブックフェアを見に行くために、蔵前のH.A.Bookstoreへ。ビルの4階にあるというのに気づかず、ちょっとうろうろする。ビルの一階はラーメン屋で、魚介系の匂いがビルの階段まで香っていた。
本屋はこじんまりとしたスペースにいい感じの品揃えが並んでいて、じっくりと見て回る。日記フェアではスズキロクさんの『よりぬきのん記2019』を購入。スズキさんは山本さんに誘ってもらった飲み会で一度お会いしていて、共通の知人がいたこともありちょっと話が盛り上がったのだった。夫婦の日々を描いた、のんきでかわいらしくゴキゲンな四コマ漫画で、楽しく読む。『プルーストを読む生活』で紹介されていた『『百年の孤独』を代わりに読む』も購入する。

大学時代の友達2人からのLINEが来て、飲みに行くことに。なぜか合コンに挑むための心構えの指南の話になり、ゲラゲラ笑いながら焼き豚をぱくぱく食う。なんか酔っ払っていくうちに、大学時代に実はお前のことをこう思っていたという嬉しい話を聞いて、いやぁ生きるもんだなぁ、と機嫌よく帰宅する。

1月26日

前日、久々にしっかりお酒を飲んだせいか、昼過ぎまではぼんやりしてたら終わってしまった。

昼から池袋にいってBOOK・OFFやジュンク堂を回遊して、しかし結局なにも買わず、そのまま歩いて高田馬場へ。
時間をちょっと潰してから早稲田松竹で『アス』を観る。うっすらネタバレ的なものは小耳に挟んでいたので展開自体にはそれほど驚かなかったものの、シーンごとの見せ方のナイスさ、主演ルピタ・ニョンゴの素晴らしい演技によってぐいぐい引き込まれる。スリリングでまがまがしいのにユーモラスという絶妙なバランス。特に襲撃者たちの身体性の異様さが、彼らの正体が明らかになることで少し不憫にも見えてくる、というか、あれらの振る舞いに恐怖を覚えてしまうこと自体が実はうっすら差別心に繋がってるのではないかと思わされる作り。ジョーダン・ピール、めちゃくちゃスゴいなぁと感心した。『ゲット・アウト』より好きです。

岸本佐知子・編『変愛小説集 日本作家編』も読了。海外作家のアンソロジーだった企画を日本作家でやってみようという一冊で、個人的には人物と文字が入り交じる性愛シーンが多言語に翻訳不能な多和田葉子『韋駄天どこまでも』が好みだった。他にも今回はじめて読んだ作家で気になる人が何人かできたので、それぞれ単行本も読みたいな。


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