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083 あったかおうどん

年中無休でうどんがすきです。
すこし透き通るような色の出汁はじんわりと体をあたためてくれます。
麺はつるりと口の中をすべって、あっという間に胃におさまります。
うどんは遠慮しません。初対面でも、いつも親しくしてくれます。

暑い季節でも、あたたかいうどんを好んで食べる私にとって、秋冬の空気が冷たくなる季節はうれしいものです。これで心おきなくあたたかいうどんを食べられる!

きつねうどんやたまごうどんは定番で。
天ぷらやお肉はお腹がすいたときに。
とろろやおもちを入れたらやさしい気持ちに。
食欲があってもなくても食べられるうどんは大らかで、家にあると安心する存在です。

私は、おばあちゃんが作ってくれるうどんが大好きでした。
おつゆは、かつおぶしと昆布で出汁をひいて、お醤油で仕上げていました。
おもちも天ぷらも入っていないけれど、わかめとかまぼことねぎをどっさり入れたシンプルなうどんは、身に染みる美味しさでした。

おばあちゃんは、おつゆを作るときに出汁をたくさんひいていたので、うどんが入っているどんぶりにはいつもこぼれそうなくらいギリギリまで汁が入っていました。
「でも、足りないよりはいいでしょう?」
そう言いながら、ゆっくりと出してくれていました。

おばあちゃんが亡くなって、家の整理をしていたら、押し入れからだしをひくための乾物とお砂糖、お塩など日持ちする食品が大量に出てきました。戦争を経験しているおばあちゃんは、日持ちするものをたくさん蓄えていたのです。

「足りないよりはいいでしょう?」
そんな声が聞こえた気がしました。
足りないときを知っているおばあちゃん。平和はとてももろくて、決して当たり前ではないということを知っているおばあちゃん。そんなおばあちゃんは、もしものことがあっても、食べるものがなくならないよう備えてくれていました。

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さてさて、今日もお昼にうどんを食べます。
時間があるときは出汁をひきますが、ないときは楽ちんなレトルトを使うこともあります。おばあちゃんのうどんの味には到底およばないけれど、自分なりに工夫をしたうどんです。きょうもしみじみおいしいうどんを食べて、しっかりと体があたたまれば、午後からもきっとがんばれます。

今回も、最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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きょうのイラスト通信

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