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窓辺で本を

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これまで読んだ素敵な本たちをふむもく視点でご紹介します。
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#読書日記

076 窓辺で本を-『ことり』

私は今、とあるホテルの一室でこの文章を書いています。 普段、人工的な高いところはあまり得意ではなくて、タワーマンションも高層ビルもタワー類にも興味が持てなかったのですが、あることから視点を変える必要性を感じて高層階の部屋を予約しました。 なるべく窓の大きい(でも壁全てがガラスになっているものではなくて、ちゃんと窓らしい窓がついている)部屋で変わりゆく景色を感じながら、高層階の静けさは特別だと思いました。 これまで実家でも今暮らしているマンションでも音が全くない、という状態

020 窓辺で本を-ルピナスさん-

足元をみて歩いていると、何かに躓くことは少なくなるかもしれませんが、方向がこれで良いのかどうかわからなくなることがあります。 私はときどき、お店のガラスに映る自分を見て、姿勢がしゃんとしているかチェックします。思っていたよりも猫背になってしまっていることもあり、そういう時はたいてい何かにもやもやしている場合が多いです。 姿勢の良いおばあちゃんになりたいものです。 -------------------- バーバラ・クーニーさんの絵本『ルピナスさん-小さなおばあさんのお

017 窓辺で本を-なくなりそうな世界のことば-

あなたは、好きな言葉を持っていますか? 私はたくさん持っています。 本を読んでいる時や人と話をしている時、テレビを見ている時、歌を聴いている時、道を歩いていても。そこかしこに言葉はあふれているので、さまざまな場面で琴線に触れる言葉と出会います。 私の場合、好きな言葉と出会った時はいつもびっくりしてしまいます。 「えっ」 と。そしてもう一度その言葉をかみしめて、しっかりと頭の中にメモします。 そういった大切な言葉たちが、ふとした瞬間に助けてくれることも多くて、言葉のちからを感

012 窓辺で本を-西瓜糖の日々-

何年か前、図書館で仕事をしていたことがあって、そこでさまざまな人に出会いました。 本を読むのが好きで定期的に来る人、子どものために絵本を借りに来る人、なにか知りたいことがあって来る人。そのほかいろいろ。 私に話しかけてくれる人は、たいてい何かを知りたい人でした。 あの映画の原作はありますか?ええと、作者はわかりません。とか。 血液型の歴史を知りたいのだけど、どうやって調べたら良いですか。とか。 どうしてこんな道徳的に良くない本を置いているのですか。とか。 二歳の子にどんな本

008 窓辺で本を  -マザリング・サンデー

明るい時間が長く続く季節だけど、陽が暮れはじめたらあっという間に夜になります。 目の前に広がる景色が赤くてまぶしい。暑くて、でもきれい。 束の間の夕方。 今日はどんな一日でしたか。 暮らしているといろいろなことがあって、同じような日でも気温や風の香りは違っていて、同じ人間でも考えることは変わります。だから毎日が大切なのですが、中でもうんと大切で特別な日があります。 今回の記事の主役『マザリング・サンデー』は、とある女性の特別な一日を描いた小説です。2016年に発表された

005 窓辺で本を-金曜日の砂糖ちゃん-

なんだか早起きしてしまった朝。 ベランダに出たらすでに少し暑くて、でも日中ほど暑くはないので、しばらく空や建物を見ていました。音はなくて、空はきれいな青色。雲は昨日よりもやや多い。 同じ朝はないみたい。 なんとなく、酒井駒子さんの絵本を思い出したので、本棚から出してきました。 『金曜日の砂糖ちゃん』 三つの短編からなる、薄くて小さな絵本。 絵が美しいだけでなく、言葉やストーリーが詩的で印象的な絵本。 今日はこちらの絵本に収録されている一つめのお話「金曜日の砂糖ちゃん」につ