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ふむもくエッセイ

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ふむふむと思ったことと、もくもくと感じたうれしいことを集めました。
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#日記

048 ほっこりくつした

みなさんは秋のしたくをしましたか。 お昼はまだ暑いのですが、朝と夜は暑さがやわらいできました。 会社へ出勤するときに空を高く感じたり、洗濯物を干すときにからっとした空気が頬をなでたり。街もじわじわと秋色になりつつあるので、秋に履きたいくつしたを買いに行きました。 くつしたはやるべくしっかりとした作りで、やわらかい手触りのものを選びます。 私はモノを選ぶのがとても遅いです。これいいなと思っても、あれと合うかしら、色はこれで良いかしら、などぐるぐると考えてしまいます。 くつした

040 あこがれの姿勢

またまた暑くなりました。 秋と夏が変わりばんこにその日を支配しているようです。 太陽の光が容赦なく降りそそぐお昼の駅。 電車を待っていると、汗が勝手にあふれ出てハンカチが出ばなせません。 しばらくぼんやりと暑さを感じていると、電車がやってきました。 しかし、私の目的地には行かない電車だったので、またぼんやりしました。 電車が駅を通るとき、ぴかぴかの窓ガラスが私を映します。 それを見るともなく見ていると、すこし離れた隣に女性が立っている姿も見えました。 五〜六十代の方でしょ

037 ビニール傘から見える世界

みなさんはどんな傘を使っていますか。 私は傘を三本持っています。 ひとつはグレーの生地にピンク色の花が描いてある、楽しい雨天専用の傘です。 もうひとつは白地にベージュのしましま模様が描いてある日傘です。 さらにもうひとつは、水色に白い小花がさりげなく描いてある折りたたみ傘です。 どれも三年以上使っていて、とてもお気に入りの傘です。 -------------------- 出社のときに晴れていたので傘を持って行かなかったら、退社の時に雨が降っていました。困っていると、会

032 ある休日のはなし

理由を説明したら長くなってしまうのだけど、私は木曜日が好きです。 幼いころから好きで、毎週木曜日はたいていごきげんでした。 たとえ仕事の日でも木曜日はなんだかうれしくて、たまたまお休みをいただいたりしたら、それはそれはうきうきになります。そんなある木曜日がお休みだった日のお話。 -------------------- 朝起きたら、水を飲んで伸びをします。 透明にきらめく水を体にめぐらせたら、なんだかすっきり。いい日になりそうです。 いただきもののクッキーを食べて元気い

026 もけもけのこと

昨年の五月、実家にくるみがやってきました。 母が近所のクリーニング屋さんからもらってきたようです。 くるみは、白い毛に黒や茶の模様が入っていて、鼻と肉球はピンク色の雌猫です。 なんてことない日に母から写真付きのメールが届き、 「猫を飼うことになったの。名前はなにがいいかしら」 と尋ねられました。 私はその時くるみを食べていて、その猫の額に入っている茶色い模様がくるみのようにしか見えなかったので、「くるみ」と返信しました。 その猫は、晴れて「くるみ」になりました。 場合に

016 アイロンすいすい*ふむもくエッセイ*

目が覚めたら、6時8分でした。 昨日はくたびれすぎて予期せずねむってしまったようです。 目覚まし時計がなくても、早い時間に起きられるものなんですね。 ベランダに出たらすでに明るくて、台風はやわらかな風を残して去っていました。 そして、街はきちんと夏に包まれているようでした。 午前中はわりとゆったり過ごせるので、こういうご機嫌な日はアイロンがけをします。 朝からエアコンをつけるのはあまり好きではないのですが、アイロンがけの日は別。 部屋が涼しくなるのと、アイロンが温まるのを待

013 ゆるりとよりみち*ふむもくエッセイ*

仕事が終わったとき、外が明るいとつい微笑んでしまいます。 暑いとか、日焼けしちゃうとか、そんなことは忘れて、ただうれしい気持ちになります。 私の仕事はいつも早く終わるわけではなく、むしろお店が閉まった後の時間に終業することが多いのです。 そのため、17時や17時半にその日の仕事が終わったときは、とてもうれしく思います。 まだ外が明るいと、うきうきします。 体力に余裕がある時は寄り道をします。 たとえば、本屋さんに。 新刊や文庫本のコーナーをチェックして、おもしろそうな本

011 丸いせっけん*ふむもくエッセイ*

もくもく夏の雲が浮かんでいます。 今日はいつもほど暑くないみたい。 床にぺたんと座ってベランダから空を見てると、夏のぱきっとした青と雲のやさしい白で視界がいっぱいになって、夏も悪くないね、と思います。 きっと、過ごしやすさは気温だけじゃないよね。 ふわふわの雲を見ていたら、なんだかせっけんを思い出しました。 ボディソープは便利で良い香りだけれど、私はせっけん派。 毎日の清潔はせっけんにおまかせしています。 初めてせっけんを開けるときは、わくわくするけれど少しよそよそしい感

009 手紙のあたたかさ*ふむもくエッセイ*

私の家の洋服をしまっているところに、ひっそりと箱を置いています。 箱は二つあって、ひとつはワイングラスが入っていた薄黄色の箱、もうひとつは何が入っていたのかわからないのですが、昔母にもらったダークグリーンの箱。 この箱の中には、ひみつの宝物を入れているのです。 これまでもらった手紙たち。友人や先生からの大切な言葉たちです。 私がよく開けるのは、薄黄色の箱の方です。 薄黄色の箱は、大学のころから現在までにもらった手紙が入っています。 例えばこんな手紙。 高校生のころ特に仲

006 記憶からの質問*ふむもくエッセイ*

ふいに。 楽しかったことを思い出してじんわりとうれしくなることがあります。 かなしいことを思い出してさみしくなることがあります。 それは、「思い出そう」と思っていないのにひょっこりと現れるものです。 たとえば、きのこやにんじんを切っているとき。 たとえば、家で調べものをしているとき。 たとえば、いつもの道を歩いていて新しいマンションが建設されるのを見つけたとき。 記憶は突然、目の前に現れます。 そして、それはただ語るだけのこともあれば、語ったあとに質問を投げかけてくること