RIZIN、大晦日の華々しさと囁かれる不安

2000年代初め、日本には総合格闘技ブームが訪れていた。プロレスやキックボクシング、レスリング、柔道といった様々なバックボーンを持つ選手たちが同じリング上でぶつかり合い、異様な熱気を生むほどの戦いを繰り広げた。

我々ファンは、その高い技術に魅せられ、選手達への愛着は膨らむ一方であり、会場に足を運び、テレビにくぎ付けとなった。そのブームの象徴となったのが、地上波3局がいわゆるゴールデンタイムで格闘技イベントを生中継するという事態にまでなった2003年の大晦日だろう。紅白歌合戦の「裏」で3つのチャンネルに殴り合い、関節技の応酬が映し出される、異例であり過激な納めの日となった。

ブームとは程遠いとはいえ、現在も総合格闘技「RIZIN」が日本国内のトッププロモーションとして、戦いを提供している様々な演出は当時の中心イベントだった「PRIDE」から引き継がれており、地上波放送も定期的に行われ、格闘技ファンにとっては欲求を満たしてくれるイベントの一つと言って良いだろう。2015年から大晦日の興行も行われており、リング上のクオリティや生まれる熱は当時には及ばないものの、新たなスターも生まれ、年末の風物詩としての役割が定着した感が強い。

今回のメインイベントとなるであろう一戦が朝倉海vs堀口恭司のバンタム級タイトルマッチだ。昨年、初対戦時には朝倉がノックアウト勝ちをおさめ、大番狂わせを起こしている。そこから、一気にメインイベンターとなった朝倉に対し、挑戦者として挑む堀口。負傷からの復帰戦でもある今回は堀口のリベンジマッチとしての意味合いが強い。そして今や海外からも注目を集める程、圧倒的な強さを誇るまでになったチャンピオン朝倉も貫禄は充分、大晦日を彩るにふさわしい存在であることは確かだ。

久しぶりに高い緊張感に包まれる、日本人実力者同士の楽しみな一戦だ。激しい戦いの末、勝敗という残酷な色分けが行われ、どちらかが全てを手にし、どちらかが全てを失う、試合終了までの一連のストーリーを楽しめるのが総合格闘技、トップファイターによる試合なのだ。

他にも、近い将来でのボクシング転向が囁かれている那須川天心や、先日、総合への参戦を表明したリオ五輪金メダリスト・太田忍など、注目選手が集結する。RIZINとして6度目の大晦日はこれまで以上に華やかなビッグイベントの予感に覆われている。

ただ、ファンの関心は高まる一方で、一部報道ではプロ格闘技のリングには相応しくない名前も伝えられている。また、来月行われるプロ野球トライアウトの結果も気にしてし続けているファンも少なくないだろう。かつて「世界最高峰」と呼ばれるほどのクオリティを生み出した者たちであれば尚更、自らの価値を下げるようなことはあってはならない。本物は本物によって創り出されるのだから。(佐藤文孝)

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